推し問答!【10人目:オタクになれなかった人 社会学者 橋迫瑞穂後編】推し活宗教論?

様々な人に「推し」や「推し活」について語ってもらう「推し問答!~あなたにとって推し活ってなんですか?」、第10回のゲストは、スピリチュアリティを研究する社会学者の橋迫瑞穂さんです。なお、この記事は後編になります。

 

前編はこちらから

 

取材&文/藤谷千明  題字イラスト/えるたま

 

宗教社会学やジェンダーを専門に研究し、スピリチュアリティについての著書もある橋迫さん。「推しは神! 課金はお布施! オタクの狂いは布教!」なんて気軽に口にしますけれど(しますよね?)、そういった言葉によって消費が加速しちゃうなんてこともあるかもしれません(あるよね?)。実際のところ、宗教の信仰とスピリチュアリティと推す行為はどのような違いと共通点があるのかしら。

 

さて、この連載を始めた1年前は世間やメディアの「推し活」観は「賛」ばかりだったように記憶しています。ところが最近はさまざまな報道もあり、疑問や反省、あるいは批判の声もあがっています。ものすごい急降下。世間こえ〜。メディアこえ〜。まあ、この連載も「メディア」なんですけどね! 悩めるオタクの声がSNSであふれる昨今、君たちはどう推すのか。私はどう推すのか。

 

【1人目:ジャニーズオタク松本美香さん】「あの頃の未来にオタクは立っているのかな」

【2人目:仮面推し活経験者 野田春香さん】「時にオタクは推しを隠してた Because I love you」

【3人目:メンズ地下アイドルオタク Kさん】「推しとオタクとドラマと部活」

【4人目:芸人オタク 手条萌さん】「Chu! ワーキャーでごめん」

【5人目:Vtuberオタク Wさん】「健康的なオタ活ですわ皆様方〜!」

【6人目:ホスト好き 佐々木チワワさん】「消費社会とぴえんの報道」

【7回目:推し活今昔物語〜「推し活!展」に行ってみた〜】

【8人目:2.5次元好きの臨床心理士 笹倉尚子さん】「オタクなカウンセラーに推し活をまじめに語ってもらってみた」

【9人目:新規ハイ経験者 藤原麻里菜さん】「推して、推されて、脳の汁」

 

「楽しいことに夢中になる」という意味で「宗教的」というのであれば、それは勘違いといえるのでは

 

藤谷千明 最近思うんですよね、「推し活」と「宗教」を気軽に結びつけて語りがちだな……と。昔から熱心なファンのことを「信者」と呼んだり、「好き」の最大級の表現として「神」があったり。あるいは、人に自分の推しを勧めることを「布教」と言いますし。自分もこの十数年の間ずっとカジュアルに使ってきたわけなんですけど……。

 

橋迫瑞穂 そこは明確に別物であると最初に言っておきたいですね。宗教、たとえばキリスト教でもイスラム教でも仏教でも教祖がいて教義がある。その教義も一言ではとても語れるものではありません。聖書の解釈ひとつとっても、途方もない時間をかけて現在でも行われ続けています。そこには「神秘性」「超越性」が存在していて、だからこそ考える場を作り続けている。では、推し活はどうでしょう? 「楽しいことに夢中になる」という意味で「宗教的」というのであれば、それは勘違いといえるのでは。

 

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