山下美月の芝居への意識を変えた二人の存在とは?女優としての目標とターニングポイントを語る【『舞いあがれ!』インタビュー】

主人公とその周囲の人々の人生を半年間かけて辿る”朝ドラ”において「主人公の幼なじみ」という役が非常に重要なポジションであることは、もはや周知の事実である。

                

現在放送中の『連続テレビ小説「舞いあがれ!」』に出演中の山下美月が今作で演じるのは、空に憧れる主人公・舞(演:福原遥)の小学校時代のクラスメイトで、舞が大学生になってからも変わらず交流を続ける親友・望月久留美。幼少期に両親が離婚し、ラグビー選手だったもののケガをして以来、定職につけずにいる父・佳晴(演:松尾諭)を支えるべくカフェでアルバイトをしながら、通っている看護学校では学費免除の特待生として勉学に励むしっかり者というキャラクターだ。

        

そんな大役をヒロインオーディションを経て獲得した山下はトップアイドルグループ・乃木坂46の中心メンバー。普段のアイドル活動だけでも多忙な日々の中、大阪制作である今作の撮影のために、東京と大阪を新幹線で往復する生活を送っているという。「アイドルだから演技が下手だと思われても仕方ないけど私はこの作品を少しでも良くしたい」と語る彼女が芝居への意識を大きく変えたプロデューサーと演出家の存在やターニングポイント、そして俳優としての今後の目標を語ってくれた。(インタビューの最後には直筆サイン入りポラの抽選プレゼント企画も実施中。詳しくは【プレゼント情報】欄をご覧ください。)

撮影/玉井美世子
取材・文/編集部
ヘアメイク/吉田真佐美
スタイリスト/鬼束香奈子

山下 美月 (やました・みづき)
●1999年7月26日生まれ、東京都出身。2016年に乃木坂46の3期生オーディションに合格して、グループに加入。昨年1月発売の26thシングル「僕は僕を好きになる」でセンターに抜てきされるなど、グループの中心メンバーとして活躍する。ファッション誌「CanCam」の専属モデル。近年の出演作に、映画「映像研には手を出すな!」、ドラマ「着飾る恋には理由があって」(TBS系)、「じゃない方の彼女」(テレビ東京系)など。 

                     

二度目のヒロインオーディションで
掴んだ朝ドラ出演


━━今作で演じる主人公の幼馴染・久留美の役は、オーディションでの選考の末に、オファーを受けたとのことですね。

まず今作のヒロインのオーディションを受けていました。以前から「いつか『朝ドラ』に出たい」という気持ちがあって、実は朝ドラのヒロインオーディションを受けるのは今作で2回目なんです。以前にオーディションを受けたときは書類選考で落選したのですが、今作で初めて動画審査や面接をしていただいて。結果的にはヒロイン役には落ちましたが、その落選のお知らせを聞いた数週間後に、この望月久留美という役のお話をいただきました。

━━そのオファーを聞いたときのお気持ちはいかがでしたか?

凄く驚きました。オーディションを受けてはいましたが、ヒロインを演じられる自信は正直全くなかったんです。

オーディションには、朝ドラチームの皆さんに自分の名前と顔だけでも知ってもらえたら、「乃木坂だけど、アイドルをやっているけど、お芝居をやりたいんです」という熱い気持ちを伝えられたら、という気持ちで臨んでいて、この作品に携われるとは全く思っていなかったんです。今の私にとって、あまりに大きすぎる作品なので、嬉しさ半分、怖さ半分という気持ちでした。

━━プレッシャーのようなものもあった。

そうですね。「私なんかがこの役を演じてもいいのだろうか?」ということは思いました。ただ私自身、お芝居が好きで、それは乃木坂46で色んなお仕事を経て気づいたことで、オーディションの時にもそのことをお伝えしていて。そのオーディションでは、ヒロイン役の落選のお知らせと共に、朝ドラチームの方々からお手紙をいただいたんです。

そのお手紙には「このお芝居がよかったです」「関西弁がお上手でした」といった言葉を書いて下さっていたのですが、最も心に残っているのが「本当に楽しそうにお芝居をされているのが印象的でした」という言葉でした。そのオーディションの時も凄く緊張したし、自信もなかったのですが、台本を読んでいると自然に涙が流れて、すごく楽しかったんです。「アイドルだから演技下手だろ?」と思われるのは仕方ないかもしれないけど、私は心からこの作品を良くしたいと思っていて、自分の力で作品を少しでも盛り上げたいと思っています。

現場に入ってからスタッフさんも優しいですし、ベテランの俳優の皆さんとご一緒させていただける貴重な時間なので毎日勉強させてもらっていて。不安もあるけど、毎日楽しく撮影しています。

━━やはり朝ドラの撮影は非常にハードだと思うのですが、特に大変だと感じる瞬間はどんな時ですか?

正直、何もかもが大変です(笑)。一つ具体例を挙げるとすれば関西弁での演技は初めての挑戦なので、クランクインの数ヶ月前からレッスンしていただいて、「おはよう」「こんばんは」の挨拶のようなことから教えていただいていて。

普段家にいてもテレビで関西弁のタレントの方の口調を真似てみたり、方言指導の先生が「お笑いコンビの見取り図さんの動画チャンネルを観ると綺麗な関西弁が覚えられるよ!」と教えてくださったので、ずっと家で流したり。日常的に関西弁を使うようにしています。

━━関西弁には慣れましたか?

正直に言えば、自信は全くありません。関西弁は本当に難しくて、もしかしたら関西の方が聞いたら「それはちゃうやろ!」と思われるかもしれませんが、関西弁は勢いがあって話していると元気が出るので、お芝居をしているとき、関西弁に助けられている感じがします。

━━今作で演じる久留美の印象について教えてください。

久留美ちゃんは、小さい頃にお父ちゃんがラグビーに挫折してしまい、厳しい家庭環境で育って、家計を支えようと奮起する母性の強い女の子。だけど小さい頃からお母さんがいない環境で育って、寂しさや心の傷もきっとあったんだと思います。そんな環境で育ってもお父ちゃんへの愛情が深く優しい女の子に育ったのは、きっと舞と貴司(演:赤楚衛二)という二人の幼馴染みと一緒に過ごす時間があったから真っ直ぐな子に育ったんだ、と台本を読んで思いました。

━━久留美との共通点はありますか?

私自身の性格とは正反対だと思います。久留美ちゃんは明るくてチャキチャキした働き者ですが、私自身の性格は明るくないというか(笑)。普段、乃木坂にいるときも自分から誰かに話しかけにいくタイプでもないんです。

ただ久留美ちゃんはお母さんが看護師だったことから自分も同じ道を歩もうと勉強していて、私も将来どんな道を進むかは分からないけど今後のためにも乃木坂の活動も、女優業も、モデルの活動も頑張っています。だから自分で言うのも気恥ずかしいのですが、久留美ちゃんが持つ「真っ直ぐさ」は似ている部分があるのかな、と思います。

━━『舞いあがれ!』の今後の見どころを教えてください。

舞と貴司と久留美、幼馴染の三人がどんどん大人になっていくのですが、大人になるにつれて直面する試練に葛藤する姿が描かれます。また朝ドラと言えば、誰と誰が結婚するか、など恋愛の行方も注目ポイントなので、そこも注目してくださったら嬉しいです(笑)。 

    

芝居への意識を変えた二人の存在


━━ここからは乃木坂46のフロントメンバーとしての活動だけでも多忙なスケジュールの中で「名前と顔を知ってもらうだけでもいい」という想いで大阪制作の朝ドラオーディションに臨むほどになった、山下さんのお芝居への意識を変えたターニングポイントを聞きたくて。キャリアを遡れば、’18〜’19年ごろにドラマの出演が集中していましたが…。

そうですね…。正直、乃木坂に加入してドラマや映画に出演させていただいていたばかりの頃は、今みたいに「お芝居が楽しい」とか「女優さんになりたい」という気持ちは全くなくて。ただ、お芝居の現場が凄く楽しかったんです。

━━撮影現場が楽しかった。

はい。普段の乃木坂46としてアイドルでいる時は、作曲家の方々から楽曲を頂いて、ダンスの振りを振付師の先生が考えて、それを私たちメンバーが自分たちの中に落とし込んで曲として披露しますが、その一方でドラマや映画のお芝居は誰でもない自分自身が役と向き合わないといけない。自分の頭で考えて悩んだ末に生まれたものをカメラの前で一人で表現するのが俳優の仕事で、それはすごく素敵なことだなと気づいたんです。とはいえ、私はお芝居の才能もなく、お芝居が上手いわけでもなくて。正直、朝ドラに出演できる未来があるなんて思ってもいませんでした。

乃木坂は人数も多いグループだから、自分からチャンスを掴みにいかないといけないところでもあるので、何か自分の中で前に進まないといけないという気持ちがあって、朝ドラのオーディションを受けていたんです。

──その「お芝居の現場が楽しい」から「本格的にお芝居をしていきたい」という考えに至ったきっかけのようなものがあったのでしょうか?

お芝居への意識が変わったのは『着飾る恋には理由があって』(TBS系)に出演させていただいた時期だったと思います。実は『着飾る恋には理由があって』も事前にオーディションのようなものがあり、それを経ての出演だったんですけど、演出の塚原あゆ子さんとプロデューサーの新井順子さん、TBSでたくさんの名作を世に送り出してきたお二人が、結果的に役を私にくださったことが嬉しかったんです。

──『アンナチュラル』や『MIU404』、『最愛』、『石子と羽男』(すべてTBS)などギャラクシー賞受賞作品を手がけた二人ですね。

はい。私も視聴者として『アンナチュラル』や『MIU404』など、お二人が作られていたドラマがすごく好きだったので、そのお二人に選んでいただけたことが本当に嬉しくて、より一層「頑張ろう」と思って撮影に臨んだのですが、現場に入ると、お二人の作品へのこだわりや「良い作品をつくる」という意識の強さを肌で感じて。その姿勢に私も感化されて「自分も役についてもっと考えないといけない」と思うようになって、台本と向き合う時間がすごく増えました。

そうやってお芝居について考える時間が一日の中で増えていくのがすごく楽しくて、「ああ、演じるってこういうことなんだ」と気付いたんです。

──『着飾る恋には理由があって』は2021年4月クールに放送された作品なので…。

ちょうど一年半前ぐらいですね。そこから「お芝居頑張ろう」と思って、色々と勉強もしたし、定期的に演技のワークショップに通うようになりました。その半年後に朝ドラのヒロインオーディションを再び受けて、『舞いあがれ!』で役をいただいたので、やっぱり『着飾る恋には理由があって』は私にとってのターニングポイントになった作品だと思います。

また、Instagramで「週に1回は映画館に足を運ばなければ」と投稿されていましたが、それは作品を観る意識にも変化があってのことでしょうか?

そうですね。ドラマや映画を観ることは、自分の趣味でもあるんですけど、やっぱり自分が出演する立場であるから、勉強として作品を観ている部分は半分あります。意識的にそうしているわけではないけど結果的には観る作品も日本の作品しか見ないようになっていて。

そうやって作品を観ていると「この方のこういうお芝居よかったな」とか「この人の作品好きだな」とか、そうやって毎日毎日インプットするようにしていて。本当に毎日がインプットの連続で頭がパンクしそうにもなるけど、私は今できることは全部やりたいって思うタイプなので…。朝ドラの放送期間は半年間ですが、撮影自体は一年弱あるので、放送している間にも成長したお芝居をお見せして視聴者の方々を楽しませられるように頑張らなきゃな、と考えています。

今年8月に開催された乃木坂46のツアーライブの千秋楽では「乃木坂も国立競技場でいつかライブを」と発言されていました。10周年を迎え、2日間で14万人を動員した日産スタジアムでのライブも成功し、アイドルグループとして頂点に辿り着いた中で、新たに次なる目標をファンの前で掲げられた姿が格好良かったです。

ありがとうございます(笑)。

その発言や朝ドラへの出演に向けてオーディションやワークショップを受けていたことのように、山下さんは常に次への目標を持っているのでしょうか?

そうですね。「この雑誌に出たいです!」とか、ちゃんと目標を言葉にすることもあるんですけど、なかなか口には出さない、大きな野心もたくさんあります。

胸に秘めているというか。

そうですね…。一つ挙げるとすれば、ゴールデン帯に放送されるドラマのヒロインは、いつか絶対にやりたいです。元アイドルの方で、そういう作品に出続けている方ってなかなかいらっしゃらないじゃないですか。だから、いつか…もちろん現役のうちにできたらいいけど──いつ卒業するかとかはまだ決めていないけど、今後そういう作品にちゃんと出続けられる人間になれたらいいなということは、すごく思います。

でも、それには認知度や視聴率といった色んな数字の部分も現実的に大事になってくると思うので、そのためにも日々、前に進むだけだなと思っています。


【放送情報】

NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』

NHK総合:午前8:00〜8:15
(再放送)12:45〜13:00

BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
(再放送)11:00 〜11:15

【出演】福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、高杉真宙、長濱ねる、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか

【作】桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
【音楽】富貴晴美
【主題歌】back number 「アイラブユー」
【制作統括】熊野律時、管原浩
【プロデューサー】上杉忠嗣
【演出】田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
【主なロケ予定地】東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか


【プレゼント情報】

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山下美月

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ご希望の方は pipipi@tokyonews.co.jp 宛に、 件名に「山下美月・プレゼント」、
本文に「①郵便番号・住所 ②氏名 ③年齢 ④TV Bros.WEB 有料会員登録時のメールアドレス ⑤取り上げてほしい番組・映画・本などの作品やタレント名」を明記の上、ご応募ください。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。 ご応募締め切りは2022年12月14日17時まで。

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