東京に来て“音楽で生きる”という生々しい現実を考えるようになった yonawoインタビュー

yonawoがデビュー3周年を記念して3月18日に東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブ「YONAWO YAON」を開催する。今回はTV Bros. 2月号に掲載されたyonawoのインタビューの完全版をお届け。ニューアルバム『Yonawo House』の制作秘話、東京での暮らし、最近好きな音楽など、4人の等身大に迫った。

取材&文/宮崎敬太 撮影/佐野円香

 

 

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共同生活するようになったのが大きい

 

ーー『Yonawo House』は前作『遙かいま』と比べて音がかなり変わりましたね。

 

斉藤雄哉(G):やはり東京に出てきて共同生活するようになったのが大きいですね。制作からレコーディングまで全部Yonawo Houseで完結できるようになって。それが自然と音にも反映されました。レコーディングはドラム以外、ほぼすべて俺の部屋だし。

 

荒谷翔大(Vo):エンジニアも雄哉(斉藤)がしてくれるしね。原点回帰というか。九州で音楽を始めた頃、雄哉の家で一緒に宅録してた感覚に立ち返りつつ、音楽のクオリティは上げることを意識しました。ただ締め切り間近は家中大変なことになってた(笑)。

 

ーードラムはどこで録ったんですか?

 

野元喬文(Dr):ワーナーの会議室です(笑)。

 

斉藤:家の機材を全部持っていきました。あと吸音材を何枚か持っていって、反響もいい感じに録れるように工夫して。あとドラムの下に絨毯敷いたり。

 

ーードラムのバツッとした響かない鳴りがかなりかっこよかったです。

 

野元:嬉しいです。今回は山本さんというテック(※機材周りの専門家)さんに入ってもらいました。例えばシンバルの音色を作る時はスティックから選ぶんです。山本さんはスティックで自分の頭を叩いて音色を確かめるような人(笑)。スネアとかもめっちゃいっぱい持ってきてくれて、細かく音を作っていきました。

 

ーーヒップホップのトラックメイカーがドラムの音色にこだわる感覚と同じですね。

 

斉藤:ドラムの録りは俺も阿南(智史)くんも超うるさかったもんね。こだわりありすぎて。

 

野元:阿南くんはドラムのフレーズも一緒に考えてくれて。夜な夜な相談しながら組み上げてました。

 

ーー元never young beachの阿南さんがアレンジと演奏で参加されるんですよね。

 

斉藤:一番最初のシングル「After Party」を制作する前に、ミックスエンジニアを探してたんですよ。阿南くんは近くにいる人なので自然とお願いする流れになって。阿南くんは「ミックスするなら」とドラムの録りにも立ち会ってくれたんですね。その時一緒にアレンジとかも考える感じになって。すごくハマったので「アルバムも一緒にやろうよ」とアルバムの制作に合流してくれた感じですね。

歌とベースとドラムだけでも成立するくらいの感覚で作ってる

 

ーー今作はベースとドラムの音がすごく大きいですね。

 

斉藤:普段聴いてる音楽の影響ですね。

 

野元:最近だとドレイクとかね。歌とベースとドラムだけでも成立するくらいの感覚で作ってるかも。

 

田中慧(B):そういう意味でも今回は雄哉が主導したアルバムだよね。

 

ーー制作はどのように進めたんですか?

 

斉藤:基本は俺がベーシックのトラックを作ってから本チャンのベースとドラムを録音します。その後に荒ちゃんに仮歌を歌ってもらって、ギターとかキーボードとかを足し、最後に本チャンのヴォーカル録る感じですね。

 

ーーデモをバンド演奏に落とし込む時、どんなコミュニケーションを取るんですか?

 

田中:あーでもないこーでもないと一緒に考えながら(笑)。自分では思いつかないこともやりましたね。「hanasanai」「tonight」とか。

 

斉藤:あと「ダンス」じゃない? あの感じは絶対せんやろ。

 

田中:5弦ベースを使ってて、チューニングもさらに低い音が出るドロップDにチューニングしてるんです。これはラウド系の人たちが使うようなチューニングで。ズクズク鳴る感じ。

 

ーーえー、面白いですね! あと個人的には「After Party」のアウトロの展開にもグッときました。

 

荒谷:お! あのベースラインは慧が教えてくれたシャーデーの「No Ordinary Love」をオマージュしてるんですよ。それまでメジャーなコード進行だけど、アウトロでマイナーに落としてクールに終わりたかったんです。

まじで荒ちゃん天才だと思いました

 

ーー「tokyo」はシングルとしてもすごく人気でしたね。

 

斉藤:正直、あんなに聴いてもらえるとは思ってなかったんです。

 

荒谷:ね。いい意味で荒削りなんです。雄哉が酔っ払って作った感じ。グルーヴも飾ってない。作ってた時は「大丈夫かな〜?」って感じでした(笑)。

 

斉藤:「tokyo」がすごくいい反応だったのは嬉しい驚きでした。

 

ーー僕は「Lonely」が大好きでした。ちょっとゆらゆら帝国を思い出しました。

 

斉藤:マジですか。実はこの曲でサックスを吹いている西内徹さんは坂本慎太郎さんの作品にも参加されてる方なんです。あのアレンジは制作を見てくれてるワーナーのスタッフさんのアイデア。制作の時はいつもYonawo Houseにいて、ご飯とか、酒のつまみとか作ってれる。その人に聴いてもらったら「なんかホーン欲しくない?」って。僕が「どんな感じですか? じゃあ歌ってください」と言ったら、その場で口ずさんでくれました(笑)。

 

ーーYonawo Houseっぽいエピソードですね(笑)。ちなみにメロディはどのように制作したんですか?

 

荒谷:阿南さんが弾いてくれたイントロのギターが始まりですね。そこにメロディを乗っけたくて僕がコードを足しました。そんな考えずにパッと。もうほぼ1テイクぐらいですね。

 

ーー「涙もがれ」は歌詞もすばらしいですね。

 

田中:“ブラックホールです”らへんの歌詞を読んだ時、まじで荒ちゃん天才だと思いました。

 

荒谷:ここはみんな気に入ってくれてるよね。真っ黒とブラックホール、見透かすと透かす、真っ黒と真昼の夢が掛かってるんですよ。この詰まった感じは個人的にも推しですね。タイトルは造語です。涙すらもがれるくらい悲しいという意味。

 

ーーこの曲は音数のバランスが絶妙で最高でした。

 

荒谷:実はかなりアレンジが難航しました。入れようと思えばいくらでも(音を)入れられるんですよ。でも「重ねてもな……」ってとこもあって。すっごい議論した結果、この音数に落ち着きました。

友達の家感覚でみんなYonawo Houseに遊びに来る

 

ーー「Yesterday」もかっこよかったですね。

 

荒谷:この曲は最初1番のサビ(見返りなんて〜)までしかなかったんですよ。そしたらみんなは僕がサビだと思ってなかったパート(涙を蓄えて〜)をサビだと思って気に入ってくれて(笑)。なのでそのパートを繰り返そうという話になって2番もできたんです。

 

ーーこの曲の歌詞から荒谷さんのピュアさというか、誠実そうな人柄を感じました。

 

荒谷:これまでも愛をテーマにしたことはあったけど、現実味があって生々しかったんです。でも今回はもうちょっと大きい目線で、愛し愛されることを書きました。愛に量があるのかわからないけど、互いに思い合う感覚が同じことって稀だと思うんです。歌詞では「見返りなんて もういらない」と言いつつ、(見返りが)いると思ってる自分もいる。そこを否定しないでそのまま表現することで、聴いてくれた方が愛することをスッと選べるのかなって。

 

ーーちなみに東京の暮らしはどうですか?

 

荒谷:個人的にはすごく良いです。あと実家を離れるという面でも人間的に成長するきっかけにもなるし。福岡にいた時も音楽と向き合ってたけど、こっちに来て、音楽で生きるという、生々しい現実を考えることも増えましたね。

 

ーーあと、Yonawo Houseがみんなの集まれる場所になってるのも素晴らしいと思いましたね。鈴木真海子さんがワイン持って遊びに来たり、Skaaiくんが終電逃したことで新しい音楽が生まれたりっていう。

 

荒谷:みんなスタジオに来る感覚ではないかも。家に遊びに来てる感じ。そっから何か始まる。なんかさ、放課後感すごくない?

 

斉藤:わかる。こっち来て、学生の頃を思い出すことが増えた。青春再来というか(笑)。

YONAWO YAONはお祭りです!

 

ーーさきほど制作時にドレイクを聴いていたという話がでましたが、他に最近面白かった作品はありますか?

 

荒谷:僕は中島みゆきさんの「ファイト!」ですね。

 

ーーサブスク解禁になったんですよね。サビはCMとかドラマで知ってるけど、実は中島みゆきさんを通ってないんです……。

 

荒谷:いや、それまじでちゃんと聴くべきです! 実は僕もちゃんと聴いてなかったんですよ。「あ、サブスクで聴けるようになったんや」と思って何気なく「ファイト!」を聴いてみたんです。そしたら、いきなり「ドンドンッ! パッ! ドッドッ!」ってドラムが30秒くらい続いて。サビのイメージしかなかったからすごい戸惑いました。「これで合ってる?」みたいな(笑)。しかも最初はラップみたいな語りで。聴いてるうちに徐々に楽器が増えてきて、クライマックスでみんな知ってる“あの「ファイト!」”になる。マジで攻めすぎというか。超ヤバいですよ。

 

ーー昔、満島ひかりさんがCMでカバーされてましたよね。

 

荒谷:そうそう。歌詞が半端じゃないんすよ。中島みゆきさんって福岡出身だから途中で福岡の言葉が出てくるんです。俺らも少し残ってるけど、この曲のみゆきさんはもっと訛ってて。そこが生々しくて最高なんです。

 

野元:サビでグッと持ってかれる曲だよね。

 

ーーえー、取材終わったら帰りに絶対聴きます!

 

斉藤:俺も後で聴こう……。

 

田中:僕はTAMIW(タミュー)というバンドを聴いてます。バンドのツイッター(@tamiw_official)の紹介文に「Post Trip hop band」って書いてあるんですけど、まさにそんな感じの音です。何かで偶然バンドを知った時は「めちゃかっけえ」ってなりましたね。ライブにも行ったんですが、さらにヤバいことになってました。ケンドリック・ラマーやジェームス・ブレイク以降のトリップホップというか。うまく言えないですけど、僕は大好きなバンドです。ぶったまげました(笑)。

 

ーーこういう音楽の話で盛り上がる感じは楽しいですね。Yonawo Houseでもこういう感じの話はするんですか?

 

斉藤:かっこいい新譜あったら、制作部屋でみんなで聴いたりしますよ。

 

ーー制作部屋ということは爆音で聴ける感じですか?

 

斉藤:もちろんです。俺らみんなが思ってる以上に金ないんで、いつも家で話したり音楽を聴いたりしてますよ(笑)。

 

ーーミュージシャンとしての厳しい現実は肌に感じつつ、同時に音楽への純粋な愛情や情熱は維持できる環境になってる、と。さらに3月18日には日比谷野外大音楽堂でのワンマンも開催されます。

 

荒谷:去年のツアーは意識的に僕らだけで回ったんですが、野音にはサポートのミュージシャンにも来ていただいて初めて豪華な感じでやろうと思ってます。お祭りです。まだ一回もリハに入ってないし、構成も決めてないので、自分たちにとっても未知の領域なんですけど。みなさんと同じく俺らもワクワクしてる感じです。ぜひ遊びに来てくださいね!

 

yonawo 3rd anniversary live

YONAWO YAON

2023年3月18日(土) 東京 日比谷野外大音楽堂

開場 16:30 開演 17:30

前売 5,500円

Info : 03-5720-9999 (HOT STUFF PROMOTION)

 

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TV Bros.編集部
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