映画誕生のきっかけは「ラジオ」だった…時川英之監督×広島の“天才”横山雄二

実在したストリップ劇場を舞台に、ムード溢れる劇場と幻想的なダンサーを描いた広島発の映画『彼女は夢で踊る』が昨年公開された。広島を拠点に活動する時川英之が監督を、RCC中国放送で活躍するラジオパーソナリティーの横山雄二がプロデュースを務める本作は全国各地で公開され、高い評価を得ている。
実は本作の制作のきっかけとなったのは、「ラジオ」。主演・加藤雅也と時川、横山を結んだラジオの偶然が、1つの映像作品として結実したのだった。
今回は、時川監督と“天才”横山の対談を通して、本作がいかにして、どのような思いのもとに誕生したかをうかがった。
(本記事は9/15に本作のBlu-ray&DVDが発売されることを記念して、公開当時にTV Bros.note版で配信した記事の再編集版となります)

取材・文/やきそばかおる 撮影/ツダヒロキ

『彼女は夢で踊る』

 

監督・脚本・編集 /時川英之 企画プロデューサー/横山雄二 出演/加藤雅也 犬飼貴丈 岡村いずみ 矢沢ようこ 横山雄二ほか
●劇場の閉館を前に有名ストリッパーや、謎めいた若い踊り子(岡村)がやってくる。社長の木下(加藤)は胸の奥に隠していたダンサーとの秘密を思い出す。ステージの上に幻は眩しく輝き、木下は遠い日の美しい夢を見る。美しく、幻想的な映像で綴られる過去と、今――。マドリード国際映画祭2020審査員賞受賞作。
(2019年/日本/95分)
©2019 映画「彼女は夢で踊る」製作委員会
配給/アークエンタテインメント株式会社

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加藤雅也さんからアイデアや“金言”をたくさんいただきました(時川)

――『彼女は夢で踊る』は、ストーリーも映像も非常に美しいですね!

横山 撮影に入る前は、ここまで綺麗で幻想的な映像の作品になるとは思っていなかったです。クランクインにあたってまず驚いたのは、カメラマンが2人とも日本語を話せない外国人だったこと。時川監督と加藤さんは英語がペラペラなので意思の疎通ができるけど、僕らはポカンとしながら「今、何を話してるんだろう?」という感じで進んでいきました(笑)。

時川 確かに、皆さんからそんな空気は感じていました。

横山 でも、カメラマンが独特の映像感覚をもっていて『彼女は夢で踊る』の世界観とピッタリと合ってたんです。今まで僕が観てきた映像のセンスとは違っていたけど、そこが良い方に作用していました。カメラの動きが激しい中でフットワークが軽かったし、撮影が進むうちに「どんな映像になるんだろう」と思ってワクワクしてたんです。完成した作品を観た時は、きらびやかさが醸し出されていて嬉しかったですね!

時川 実は外国人のカメラマンを紹介してきたのは加藤さんで、正直にいうと僕は不安を感じていました。

横山 そうなんですか。

時川 ところが、撮影が始まったら良い映像を撮ってくれました。加藤さんの存在は非常に大きくて、作品が完成したのちに『仮面ライダービルド』(テレビ朝日)で脚光を浴びた犬飼貴丈くんを勧めてきたのも加藤さん。始めは加藤さんの事務所の後輩だから勧めてるのかと思ってたけど、直接お会いしたらすごく良い人でした。加藤さんはアイデアもたくさん出してくれたし、“金言”もたくさんいただきました。初めてお会いした段階から話しやすい雰囲気を作ってくれたことも、ありがたかったです。

横山 そうそう。大変な撮影の時も加藤さんが率先して動いてくれるし、広島の人たちともフレンドリー。加藤さんのような金看板が入ると現場が引き締まるし、周りの人たちもワクワクしますよね。撮影期間中は素敵な時間が流れていきました。

加藤雅也がこの映画に参画するきっかけはラジオだった。加藤は自身のラジオ番組『加藤雅也のBANG BANG BANG!』(FMヨコハマ)のパーソナリティーを2013年から務めている。そんな中で2015年に全国公開した『ラジオの恋』のリーフレットを偶然見たのがきっかけで、加藤と時川、横山との繋がりが生まれた。

時川 加藤さんご自身がラジオで喋っていることもあり、すごく興味があったらしく、加藤さんの番組のディレクターさんから僕に連絡がありました。僕もちょうど『シネマの天使』(監督/時川英之 2015年公開)のPRをしていた頃だったから番組に出演することになったんです。収録が終わって加藤さんと1時間半ぐらいお茶をしながら「何か一緒にできたらいいですね」という話をしました。その後、加藤さんが広島に来られた時に横山さんとご飯を食べに行って、3人の繋がりができました。

横山 それを考えると『彼女は夢で踊る』はラジオのおかげでできた作品。加藤さんも、自分がラジオをやっていなかったら『ラジオの恋』に興味が湧かなかったかもしれないと仰ってましたね。

次に撮影するときは僕をもっと出さないと協力しないぞ!(横山)

『彼女は夢で踊る』には加藤、犬飼のほか、岡村いずみ、矢沢ようこといった実力派が揃っている。

横山 サラ(メロディ ※二役)に扮する岡村さんは前向きで性格もよくて、撮影していくうちに一層可愛くなっていきましたよね。まさに“女優”という雰囲気。作品が出来上がった時には、みんなが岡村さんに恋をしていたほどでした。『浮気なストリッパー』(監督/横山雄二 2015年公開)に続き熱演をしてくれた矢沢さんは観終わると愛おしくなります。映画の奇跡が起こるんですよね。

時川 おふたりとも本当にすごい。

――横山さん演じる、いわゆる“ヒモ”の金ちゃんは、まさに横山さんのハマり役でしたね(笑)。

時川 金ちゃんは飄々としていて面白い人物。ユニークなポジションですが、演技でそれを出そうとすると難しいんです。でも横山さんは素が金ちゃんっぽいから、まさに横山さんのキャラクターでお願いしました。金ちゃんはストリップショーの全盛期のような明るさをずっと持っていて、最後においしいところだけ食べてどこかに行ってしまうような人。いると楽しくて、いなくなると寂しくなってしまうという。金ちゃんそのものがストリップ劇場を象徴しているとも言えます。色々な役者の皆さんが「あの役は良いね!」と言ってました。金ちゃんはさまざまな人と絡むんだけど、どんな役柄の人と絡んでもバランスがとれています。

横山 ただ、金ちゃんのシーンはかなりカットされちゃって、僕の見せ場が切られてましたからね。「次に撮影するときは僕をもっと出さないと協力しないぞ!」と思ってますから(笑)。

時川 え?! でも、削りたくてカットしてるわけではないですよ。作品はタイトなほうがいいから、あくまでも泣く泣くカットしてるんです(笑)。他の監督が撮影した作品のメイキングを観ても「よくこのシーンを思い切ってカットしたな…」と思うことが多くて。

横山 でも、結果的に本当に良い作品に仕上がってました。僕は監督を信頼しているし、カットされたらトークのネタになるので(笑)。

時川 僕は横山さんの一番の魅力は笑顔だと思ってるんだけど、『ラジオの恋』が完成したあとでよくよく考えたら、横山さんが演じた役(悩めるラジオパーソナリティーの役)の笑顔のシーンが少なかったんです。それで本作では金ちゃんの役は横山さんに…という思いもありました。横山さんがすごいのは、以前、ある劇場の舞台挨拶で急に30分ほど時間を繋がないといけないことがあって、僕たちが「どうしよう」と焦ってたら、横山さんが「全然大丈夫」と言って、2000人ものお客さんの前で、ドッカンドッカンと笑いをとってたんです。思わず「この人、何者なんだ」って思いました(笑)。

――まさに金ちゃんですね(笑)。

令和の時代になくなりつつあるストリップ劇場が、ここまで綺麗な映像で残ったのはすごいこと(横山)

――横山さんからみて、時川監督の凄いところはどういったところですか?

横山 まずはキャスティング力。『シネマの天使』に出演した本郷奏多さんはのちに『進撃の巨人』(監督/樋口真嗣 2015年前後編公開)でブレイクしたし。

時川 偶然ですよ(笑)。ただ、キャスティングはめちゃくちゃ悩むし、横山さんにもたくさん相談しましたよね。今回は演者の皆さんが一丸となったのが作品の強みに繋がりました。

横山 監督とは『ラジオの恋』(2015年公開)から関わってきてますが、ストーリーの中にありえない要素を入れてきますよね。

時川 確かにそうかも(笑)。

横山 例えば『ラジオの恋』には“ラジオの女神”という存在の小学生”ミミ“という女の子が登場したり、『シネマの天使』では僕が演じる仙人も登場します。はじめに聞いた時は完成した作品が想像できないから「大丈夫かな?」と思うんですけど、仕上がってみると血が通った話で泣ける世界観になってるんです。テレビを作っている人間としては慎重になるけど、監督はスキーのジャンプのようにポンと飛び越えていく感覚があるから、そういう感性がすごい!

――ファンタジーな世界は一歩間違えたら笑われる可能性がありますよね。

時川 決して意図的ではないけど、確かに毎回おかしな要素は出してます(笑)。

横山 『ラジオの恋』は当初は広島にUFOが飛んできて、光線を浴びた人間が全員踊り始めるという話でしたよね(笑)。

時川 全く違うストーリーになりましたが、UFOが登場する話はやろうと思えば多分できました。

横山 でも、さすがにそれはよくないという話になって、頻繁に打ち合わせをしたんですよね。『彼女は夢で踊る』にも監督の突飛なアイデアが含まれているけど、最後にちゃんと泣かせるんです。泣かせるテクニックを持ってるから尊敬しています。

――『彼女は夢で踊る』は「㐧一劇場」の記録映画の意味合いもありますね。完成した作品を社長が鑑賞した時はどんな様子でしたか?

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