ワレワレのモロモロ外伝 岩井秀人

精神的好景気のゆくえ【岩井秀人 連載 9月号】

さて、前回「電動アシスト、サイコー!」状態になった男岩井、都心部は全て、5万円で購入したその電チャリで走り回り、雨の日も敢えて薄着で(パンツ履かないで)どしゃ降りの中を走ることで「体感、素っ裸!」で気持ち良くなっていた訳だが、相変わらずこの「精神的好景気」は続いている。

ハイバイの東京公演を終え地方公演となり、高知へと向かったのだが、滞在したホテルで自転車を借りた。こちらには電動アシストは付いていなかったので、ペダルが重く、「俺はこれほどまでに電動アシストに頼っていたのか!!」と思いはしたが、不思議なもので10分もすると慣れてくる。すんごいちょうど良い負荷を感じながら漕ぎ続けるとジワジワとテンションが上がってきた。雨も降ってたし。車がガンガン追い越してくる狭いトンネルを延々走ると山道に入り、外灯もほぼなくなる。アドベンチャーである。

頭の中に自分の呼吸音と心拍の音しか聞こえない状態が続き、時折無駄に叫んだりしながら必死に坂道を登り、40分ほどすると海についた。闇である。本当に海があるのだろうかというくらいの真っ暗闇の中、見えるのは海沿いで光を放つモーテル「ピンクの子豚」だけであったが、とんでもない幸福感である。ものの40分、自転車を漕ぎ続けただけでここまでの幸福感が得られた男岩井は、ある結論に達した。

「電動アシスト、ない方が良い」である。

高知公演を無事に終え、帰京した次の日から自転車探しが始まった。もう頭の中はロードバイク一択である。街中でもよく見かける、ヘルメットを被り、ピッチピチの服を着て「つ」みたいな格好になって猛スピードで走っている彼らの仲間入りである。

ネットで調べ、街のスポーツサイクル屋を巡り、自転車の先輩「ごっちん」こと後藤剛範に教えを乞い、一気に知識をつけた。

ロードバイクの市場はやばい。15万円なんて「入門編」だ。上を見たら3ケタの車体もゴロゴロ存在する。店の天井にぶら下がってるタイヤだけで10万したりする。そんなものを見続けていれば、金銭感覚もバグってくるものだ。

最初は「3万円くらいでなんとかしたい」と思っていた男岩井も、2日後には「15万か……まあ、そんなものかな」である。実際、15万円のロードバイクを買いかけたが、「もうちょっとだけ調べよう」と奇跡的に購入には至らなかった。

そんな中、丸一日、自転車屋を巡りながら歩き続けた日があった。

多分、合計15キロほど歩いたのではないだろうか。自転車屋から自転車屋までタクシーを使おうと思っていたのだが、その日は全く、男岩井の周りにタクシーが現れなかった。電車、歩き、電車、歩き、歩き、歩き、電車、みたいにしながら5~6件の自転車屋を巡り、やはり平均すると15万円くらいの相場なのだなあと思いながら事務所に戻った時に、再び結論に至る。

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