yonawo、Kroi、んoon、ego apartment。ソウルフルかつグルービィーな熱量を感じる新世代バンド【2021年9月 音楽コラム】

職業柄、普段から多くの音楽を聴いていますが、ここ最近、“新世代バンド”と形容されるバンドの活躍に注目していて。音楽に対しての造詣が深い若い世代が生み出すサウンドっていまかなりアツいと思うんです。今回はそんな新世代バンドの楽曲をご紹介します。

文/笹谷淳介

幼少期から、父親の影響もありR&Bやブラックミュージックを聴いてきた。特に好きだったのは、ザ・スピーナーズ。デトロイト出身のボーカル・グループの彼らはフィリーソウルの代表的な存在で、代表曲である「イッツ・ア・シェイム」は筆者の幼少時代の思い出と共に流れるベストナンバーのひとつだ。そのほかにも、アイズレー・ブラザーズの名盤「3+3」やウェルドン・アーヴィンの「シンバッド」などおそらくレコードが擦り切れるくらい聴いてきたと思う。とまあ、自分語りをしても仕方がないので、要するにソウルフルな声やグルービィーなサウンドが幼少時代から大好きな人間なのですが、これから紹介する”新世代バンド“の楽曲からもそういったソウルフルかつグルービィーな熱量を感じるんです。R&Bやソウル、ジャズ、ヒップホップなど多くの音楽ジャンルをうまくクロスオーバーさせ、自分たちのカラーをしっかりと持った楽曲は聴いていて本当に心地いい。

yonawo 「闇燦々」

まず、ご紹介するのは先日、TVブロスで筆者がインタビューをした福岡を拠点に活動を続ける、yonawo。2枚目のアルバム『遙かいま』をリリースしたばかりの彼らですが、本当に音楽に対しての造詣が深い。制作中にはあらゆるアーティストの名前が挙がり、リファレンスとして楽曲に落とし込んでいくスタイルの彼ら。yonawo色に昇華されたサウンドは音楽好き、特に私のようなR&B好きにはたまらない仕上がりになっています。特に、『遙かいま』に収録される「闇燦々」は冒頭から「おっ!」と思うサウンドが鳴り響きます。この楽曲は、東京事変のベーシストとしても活躍する亀田誠治氏をプロデューサーに迎え制作された楽曲ですが、ファンクかつアップテンポなサウンドはダンサブルでいままでのyonawoにはなかったテイスト。特に冒頭のサウンドはマイケル・ジャクソンの「Rock With You」をリファレンスにして作られており、原曲を知っている方はきっと冒頭からテンションが上がるはずです。また、ボーカルの荒谷翔大が書く歌詞にも注目していただきたい。もともと本好きであらゆるジャンルの本を読んでいる彼から生まれる言葉は、人に寄り添う優しさもあれば、語感から感じるユニークさ、そして今回のアルバムは特に大衆を意識したことでより一層、リスナーに寄り添う言葉が綴られています。このタイミングでポップを追求した普遍的なアルバムを出せたことは、本当に素晴らしいと思いますし、今後の活躍からも目の離せない存在だと思います。

Kroi 「Balmy Life」

次にご紹介するのは、Kroi。やはり“新世代バンド”を紹介するのなら彼らは外せない存在でしょう。R&Bやソウル、ファンク、ヒップホップ。さまざまな音楽ジャンルをクロスオーバーさせ唯一無二のサウンドを生み出し続ける彼らは、2018年2月の結成以降、瞬く間にメジャーシーンへ駆け上りました。ただ、楽曲からはメジャーへの気負いは感じられません。メジャー1stアルバムの『LENS』からは無邪気に音楽を楽しむ5人の姿と純粋に求める音像を追求する想いだけが伝わってきます。Kroiもまた音楽的な造詣が深く、特に『LENS』に収録される「Balmy Life」は全体を通してスペーシブなメロディで彼ら特有の身体を揺らしたくなるビート、そして80年代ごろのファンクバンドの雰囲気を匂わすトークボックス使いが秀逸。音数を減らし、生感を大事にしている分、個々のフレージングも生きている素晴らしいサウンドだと思います。しっかりと作り込まれたサウンドに求心力のあるボーカル・内田怜央の声が乗っかることでさらに強度の強いものに仕上がっていると感じます。また、「Balmy Life」はMVにも注目していただきたい。映像作家・新保拓人氏が手がけるMVはポップながらどこか恐ろしさを感じるカルト的な映像美が印象的で、とても中毒性があります。実は、「Balmy Life」はこのMVの企画をベースに作られた楽曲という裏話もあるので、そういうところもひっくるめて聴いていただけると、より楽しめるかもしれません。

んoon「Lobby feat. Valknee」

3組目にご紹介するのは、最近筆者が聴いていちばん驚いたバンドである、んoon(ふーん)。2014年に結成された、このバンドはハープ、ベース、キーボードのインスト編成でスタートした少し特殊なバンドです。2016年にボーカル、パーカッションが加入して現体制となるのですが、とにかく生み出す楽曲が素晴らしい。このバンドもまた、R&Bやソウル、ジャズを咀嚼し、ソウルフルな楽曲が多いのですが、どこかナチュラルでソウルなんだけど優しい感じというか。時代に寄り添っているようでそうじゃないニュートラルな感じが魅力的なバンドだと思います。バンドのコアコンセプトである「ジャンルを無駄にクロスオーバーさせるより、その境界面に揺蕩うことを重視する」ということをまさに体現しています。先日リリースされた3rd EP『Jargon(ジャゴーン)』は5分でできた曲から、5年間発酵熟成した曲までバラエティに富んだ6曲が収録されていますが、中でもバンド初のフューチャリング曲である「Lobby feat. Valknee」はオススメの1曲。幅広い層から注目されるラッパー・Valkneeとの楽曲はラップや語り、そしてボーカルがトラックの上に乱雑(いい意味で)に置かれているという印象。常に言葉が流れている状態なので普通なら聴きづらさを感じてしまうこともあるかと思いますが、この楽曲には不思議なことに聴きづらさはなく逆に聴き入ってしまいます。この絶妙なバランス感覚がこの楽曲の魅力であり、んoonの魅力と言えるのではないでしょうか。

ego apartment 「NEXT 2 U」

最後にご紹介するのは、1998年生まれの3人で結成されたego apartment。2021年結成でキャリアはまだまだ浅いですが、“新世代バンド”としてすでに頭角を表している存在だと思います。2ボーカルスタイルのバンドなのですが、ふたりの声のバランスが絶妙で哀愁感漂うボーカルは一度聴いただけで虜になること間違いなしだと思います。バンドの肝となるトラックも秀逸で、アナログ感の残るローファイなサウンドはどこか懐かしく、美しさと儚さの両方を感じることができます。まだ3曲しかリリースはされていないですが、8月4日にリリースされた「NEXT 2 U」はオススメの1曲。ボサノバを感じさせる、リズミカルなパーカッションとメロウな雰囲気を纏ったボーカル、小気味のいいギターリフは非常に心地良く、2020年代を彩るオルタナティブなサウンドに仕上がっています。まだまだ発展途上のバンドだと思いますし、もっともっと上へ登ってくるバンドだと思うので、ぜひこれを機会に聴いていただきたい。個人的にかなり推しているバンドのひとつです。

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TV Bros.編集部
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