推し問答!【6人目:ホスト好き 佐々木チワワさん前編】「消費社会とぴえんの報道」

様々な人に「推し」や「推し活」について語ってもらう「推し問答!~あなたにとって推し活ってなんですか?」、第6回のゲストは現役大学生でライターの佐々木チワワさんです。なお、この記事は前編になります。

 

【編集部注:前編全文は発売中のTV Bros.8月号に掲載しております。後編は全文無料でお読みいただけます】

私はヴィジュアル系のファンをかれこれ四半世紀くらいやっています。その間によく「ホストみたいな格好をしたバンド」「演奏よりもホストまがいの色恋営業」など、「本来あるべき姿ではない、あるいは、本来やるべきことをおろそかにしている」というか、あまり良い意味で使われてはいない言葉が「ホスト」でした。当時から普通に「そこで特定の職業を悪く言うのは、真面目にやってるホストに失礼では?」と思っていましたが。ホストクラブ行ったことなかったけど。

はい、前置きが長くなりました。佐々木さんは社会学を専攻する大学生でありながら、歌舞伎町をフィールドワークし、ルポ『ぴえんという病』(扶桑社)、エッセイ『歌舞伎町モラトリアム』(KADOKAWA)などの本を出版し、多くのメディアに出演している気鋭のライターです。『ぴえんという病』を読むと、ホストのアイドル化、推し化についての言及がありました。えっ?

アイドルやバンドが「ホストみたい」と言われるのではなく、ホストが「アイドルみたい」に推されている……ってコト? それはそれで不思議な現象です。思えば遠くに来たもんだ。ホストと推し、一体何が似てて何が違うのか? そのベン図を確認したい。我々なりに可能な限り、言葉にしてみようと思いました。

 

取材&文/藤谷千明 題字イラスト/えるたま

 

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アイドルとホストは全然違うと思っています

 

 

藤谷千明 あなたにとって「推し」とはなんですか?

 

佐々木チワワ 難しいな……、強いて言うなら「干渉できない存在」かもしれない。私はホスト通い歴5年ですけど、歴代担当の中で「推し」と呼べる人は、1人しかいません。他の人はガチ恋だったり、反対に友達感覚だったり……。

 

藤谷 その人たちと「推し」だった人との違いは、「干渉できない」という点ですか?

 

佐々木 そうですね。彼はすごく売れっ子のホストで、いつも時間がなかったんですけど。基本的にホストクラブって関係性を買う場所。だからといって「こんなにお金を使ったんだから、もっと一緒にいてよ」とは言わなかった。相手との関係をお金で動かしたいと思わなかったんです。本来ならその駆け引きが楽しいはずなのに。ちなみに、彼の話は『歌舞伎町モラトリアム』収録の「8月生まれの君へ」に書いています。

 

藤谷 続きは本で! で、そこに「干渉」できなかったと。それはどうしてですか?

 

佐々木 彼を神聖視していたというか、お金を使って売上に少しでも貢献できている。記録の1%にでもなれたらいいなって。色恋営業的なことをされても「そんなことしなくていいのに」と思ってました。彼の言葉を勝手にこっちで解釈して「エモいな」と消費している感覚がすごく強かったですね。彼のホスト人生を追いかけたい、彼のホストとしての物語を、コンテンツとして生きてる時間を全部この目で見たかった。そう感じたのは歴代担当の中でも彼だけです。

 

藤谷 ちょっと話の腰をヘシ折ってしまい恐縮ですが、ハタチそこそこの若者が「コンテンツとして生きてる時間」って口にすること自体が、おばさんは遠い目になってしまうわけですよ。文字通りの老婆心なんですけど。時代だなって……。まあこの時代を作ったのは、こんな世界にしてしまったのは我々おじさんおばさんなんですけど。おそらく、「コンテンツとして生きる」を自覚されているホストの方も多いのでしょう。

 

 

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