笠松将『ガンニバル』インタビュー 「今できることに向けて、全力を注いでいくしかない」

ディズニープラス 「スター」にて独占配信中の『ガンニバル』。昨年4月にアメリカで放送されたドラマ『TOKYO VICE』で国際的な注目を集めた笠松将が、今作では謎の多い村を支配する一族の次期当主・後藤恵介を演じる。

            

2023年は『連続テレビ小説 らんまん』が控えるなど注目を集める中、彼自身は今の状況をどのように捉えているのか。今作の制作裏話とともにその想いを語ってくれた。(インタビューの最後には直筆サイン入りポラの抽選プレゼント企画も実施中。詳しくは【プレゼント情報】欄をご覧ください。)

取材・文/編集部
撮影/玉井美世子

笠松将(かさまつ・しょう)
●1992年11月4日生まれ、愛知県出身。2020年『花と雨』で長編映画初主演。近年の主な出演作品にNHK大河ドラマ「青天を衝け」、主演映画「リング・ワンダリング」、WOWOW×ハリウッド共同制作「TOKYO VICE」などがある。2023年度前期NHK連続テレビ小説「らんまん」への出演を控える。

   

後藤家は裏でも強烈?「本読みの段階から凄い空気でした(笑)」 


━━笠松さんが演じるのは、主人公の警官・大悟(演:柳楽優弥)が赴任した供花村で最高権力を持つ「後藤家」の次期当主・後藤恵介。演じるにあたり、どんな印象を持ちましたか? 

恵介はとても魅力的なキャラクターだと思いました。自分と似ている部分や、共感できる部分が多かったです。だからこそ、演じていて楽しかったし、とても難しかったです。 

━━第1話で、供花村に駐在として赴任したばかりの大(演:柳楽優弥)に、笠松さん演じる後藤恵介が「ヨソ者に村の人間のことを馬鹿にされた」と憤り、銃を突きつけます。登場シーンから恵介の凄みと恐ろしさが伝わるシーンでしたが、恵介の“底知れなさ・得体の知れなさ“といった印象を与えるために、どのようなアプローチがあったのでしょうか。 

キャラクターが見てくださる方に「どんな印象を与えるか」というのは本当に難しいんですよね。例えば撮影された日に風がどれだけ吹いてるかの違いだけでも印象は変わってしまうと思っていて。だから、それよりも演じるにあたり、僕がいつも強く意識するのは、キャラクターの目的、つまりは芯の部分。今作では「後藤恵介の目的」を僕が誰よりも理解してあげたいと思っていました。 

普段の撮影においても、キャラクターの本質を理解することを大切にしていて。そのキャラクターの核となる部分を、役を演じる僕が握っていなければ、キャラクターにも見透かされてしまうし、作品を見ている方も何を見せられているのかよく分からなくなると思うんです。ただ僕がキャラクターのことをしっかり理解しようとすれば、演じていながらキャラクターの気持ちが分かるようになってくる。キャラクターの本質を理解できた時点で僕にとって撮影の準備は終了していると言えるほど、その行程をとても大切にしています。 

━━「後藤家」のキャラクターたちも個性豊かですよね。後藤家を演じる共演者の方々とは、現場ではどんな意思疎通があったのでしょうか。 

後藤家を演じるキャストの皆さんは、様々なジャンルで活躍されている先輩方ばかりで、僕が演じる恵介が後藤家次期当主ということもあり、撮影現場では僕を立ててくださる雰囲気があったんです。そういった中できちんとした自分でいようと常に意識していました。でも正直に言えば、初めて顔合わせをした本読みの段階では、 皆さん怖かったです(笑) 。

──最初の顔合わせの段階で、後藤家さながら、強烈な印象を受けたのですね。

本読みの段階から凄い空気でした。でも撮影現場では皆さん本当に優しかったです。なかでも睦男役の酒向芳さんは「寒くないか?」「大丈夫か?お水飲めてる?」と気にかけてくださったり「コーヒーでも持ってこようか?」とまで仰ってくださったりして。そのあと一緒にコーヒーを飲みに行ったり、地元が近いこともあって名古屋弁で話したりしていました。 龍二役の中村祐太郎さんは撮影が終わったあとも話すことが多くて。中村さんが常に現場の空気を作ってくださったと思っています。 他のキャストの方も含めて、撮影現場では皆さんに本当に助けていただいたと思っています。 

──片山監督は村人を演じるエキストラもひとりひとりを選ぶほどにこだわったとのこと笠松さんは片山監督のファンだったとのことですが、撮影現場ではいかがでしたか? 

片山監督は、貪欲に、良いシーンを撮れることを信じて、時間をかけて撮影されるんです。今作に自信を持つことができるのは、やはり片山監督が作品のクオリティにこだわってきたからだと思います。そして何より素晴らしいなと思ったのは、残りの撮影時間が限られている中で片山監督のことをスタッフの方々が信じて、一体となっているんです。片山監督を含めて、その片山組の姿勢こそが素晴らしいなと思いました。 

──昨年放送されたドラマ「TOKYO VICE」(HBO)では笠松さんは暴力団組員を演じられました。その演技は海外でも大きなインパクトを与え、海外の老舗映画雑誌「American Cinematographer 」の表紙を飾られました。今作も世界配信作ですが、出演作品が海外からの反響があることについて、俳優としてどのように感じていますか? 

とてもありがたいです。ただ、世界に届いているということは結果論でしかないとも思います。そこで大切なのは「どれだけ注目を集められる人になれるか」ということだと思っています。今作においては、注目を集められる存在であったのは片山監督や柳楽さん、プロデューサー、脚本家だったと思います。そこで僕もその一人にならなきゃいけないなということは強く思いましたし、現状ではそういった存在になれてないことが悔しかったです。もっと良い作品を届けられる可能性に繋がるかもしれないなと思うと、それは僕の努力次第だと思っています。だからこそ、今できることに向けて全力を注いでいくしかないと思います。 

──20代〜30代前半の俳優の方々で凄みのある役を演じられる方々は非常に稀だと思うのですが、今作の後藤恵介のような一見して只者ではない役でも、笠松さんが演じると、役に説得力を感じます。ご自身では役者として「ハマる部分」、つまり「俳優としての強み」について、どのように捉えていますか? 

僕の中での僕の強みは「自分がやるべきことを誰よりもやれる」ことだと思っています。その作品で、どのような役割が求められているのかについて早く気づけると思っていますし、それを最後までやり続けられる。…でも正直に言えば、「強み」ということについては、あまり意識してないです。それよりも「こういう役も演じられるだろうな」と思われるためのアプローチが大事だと思っています。俳優は、作品に声をかけてもらえるかどうかが勝負だと思っているので「オファーがかかったから頑張ろう」ということではなく「昨日までにやってきたことが今日できる」ということが、俳優には大きく当てはまると思います。だからこそ日々、その時にできることを頑張るしかないと思っています。 

──昨年2022年11月に30歳に。心境の変化はありましたか? 

確かにイベントの場では「もう30歳になりましたから〜」と言うことはありますが、正直に言えば、自分の中では全く変わらないですね。30歳になったから焦ることもないし、30歳になったから意気込むこともない。年齢に関係なく、昨日よりも良くなればいいと思っています。 

俳優は20代後半から30代前半になると演じられる役が少なくなると言われていますが、僕は求められる年齢にいる俳優たちの中で選ばれたらそれでいい、というようには考えていません。例えば「100人の定員の中に98番目に入れたらOK」というわけではなく、常に求められる中で一番を狙っています。だからどんな年齢になっても関係なく突き進んでいきたいですね。 

ガンニバル
■原作:『ガンニバル』二宮正明(日本文芸社刊)
■監督:片山慎三、川井隼人
■脚本:大江崇允
■プロデューサー:山本晃久、岩倉達哉
■出演:柳楽優弥、笠松将、吉岡里帆、高杉真宙、北香那、杉田雷麟、山下リオ、田中俊介、志水心音、吉原光夫、六角精児、酒向芳、矢柴俊博、河井⻘葉、赤堀雅秋、二階堂智、小木茂光、利重剛、中村梅雀、倍賞美津子
■配信:ディズニープラス「スター」にて2022年12月28日より独占配信
© 2022 Disney


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