押井守のサブぃカルチャー70年「YouTubeの巻 その21」 【2022年12月号 押井守 連載第56回】

今回はようやく、「YouTubeにおけるテロップとナレーションの力」についてです。言葉が字幕やナレーションになるとヘンな説得力が生まれると語る押井さん。聞き手の渡辺さんも、韓国ドラマにハマっている理由の一つに、字幕というのがあるかもしれない、と話しはじめ……。もしかしたら私たちは字幕に説得されているのかもしれない、というお話の前半です。

取材・構成/渡辺麻紀
撮影/ツダヒロキ

連載バックナンバーはこちら

<新刊情報>
加筆&楽しい挿絵をプラスして待望の書籍化!
『押井守のサブぃカルチャー70年』が発売中!

当連載の書籍も発売中。昭和の白黒テレビから令和のYouTubeまで、押井守がエンタメ人生70年を語りつくす1冊。カバーイラスト・挿絵は『A KITE』(1998年)などを手掛けた梅津泰臣さんが担当し、巻末では押井×梅津対談も収録。ぜひお手に取ってみてください。

詳しい書籍の内容はこちら!

押井守/著
『押井守のサブぃカルチャー70年』
発売中
発行:東京ニュース通信社
発売:講談社
カバーイラスト・挿絵:梅津泰臣
文・構成:渡辺麻紀

洋画ファンというのは、字幕にある程度、説得されている。

――ずっとテロップとナレーションの力についてお話頂こうとしているのですが、なぜかなかなか前に進みません(笑)。

いつものことじゃない。

――まあ、そうなんですが。でも、今回は本当にテロップとナレーションの話でお願いします。

「ナレーションを疑うヤツはいない」というセリフは知っている?

――いや、知らないです。

何の映画の誰のセリフだったか、私も憶えてないんだけど、『トーキング・ヘッド』(1992年)のときに使ったんだよ。このセリフを聞いたとき、凄く説得力があると思って。

――言われてみればそうかもしれないですね。第三者の声、神の声という感覚なんでしょうか?

ニュース映像とかドキュメンタリー、はたまたNHKの特集とかでナレーションはよく使われているということもあるのかもしれないけど、観ているほうは真実を聞かされているような気分になる。

それと同じで言葉が字幕になるとヘンな説得力が生まれる。

――押井さん、そういうのって、洋画ファンという要素もありません? 字幕に慣れてるし、それを信じてますよね?

それは確かにある。洋画ファンというのは、字幕にある程度、説得されているから。

――押井さん、最近の渡辺は韓国ドラマにハマっていると言ったじゃないですか? 日本と同じアジア人で文化もアジアなのに、なぜ韓国ドラマにはハマって、日本のドラマや映画にはハマらないのかを考えたとき、字幕の影響があるのかなと思ったんですよ。字幕が出ることで、海外の文化に触れている感覚がある。

それはもう、字幕に説得されちゃっているんですよ、麻紀さん。

ドラマは基本、言葉で成立しているから、明らかにセリフ量が多い。それをテンポよく字幕で見せているので、ついつい説得されてしまう。韓国ドラマのなかには驚くほど安っぽいものもあるけど、それでも何となく観てしまうのは字幕がもつ説得力です。

――いいセリフになると、声を聴くよりも字幕のほうが頭に入りますからね。

この記事の続きは有料会員限定です。有料会員登録いただけますと続きをお読みいただけます。今なら、初回登録1ヶ月無料もしくは、初回登録30日間は無料キャンペーン実施中!会員登録はコチラ