ミキ亜生「感度ゼロからのスタート」

ミキ・亜生によるカメラ連載「感度ゼロからのスタート」第1回後編

一緒に暮らす愛猫5匹をきれいに撮りたいという思いから、昨秋、ミラーレスデジタルカメラを購入した亜生。カメラテクニックのレベルアップを目指して、このたび連載を始めることになりました。

第1回後編は、今までに亜生が撮影した中からお気に入りをセレクト。雑誌『OWARAI Bros.』の撮影も担当しているカメラマン・大槻志穂さんに、その写真をチェックしてもらいました。果たして、亜生の腕前はいかに?

撮影=大槻志穂
編集=竹村真奈
取材・文=高本亜紀

細かな数値や設定を感覚として身につけたい!


大槻
 今まで撮影した写真は残していますか?

亜生 残ってるかな? うまく撮れへんショックで消してるかも……(と言いながらメモリを確認する)。あと、多く撮ったらSDカードがいっぱいになるんじゃないかと思って、あかんヤツは全部消してたんですよね。

大槻 亜生さんが使ってるSDカードであれば、2000枚くらい撮れるので恐れずにばんばん撮って大丈夫ですよ。RAW(注:圧縮しないデータのこと)で撮ってますか?

亜生 ろ、ろう……? わからへん。けど、F値とかはなんとなく把握してます。(数値を)絞ると光の量は少なくなるけど遠くまでピントを合わせることができる。けど、反対に開くとたくさんの光は入るけど、一点にしかピントとが合わなくなる……っていうことですよね。あ、ISOってなんですか?

大槻 感度ですね。例えば感度が100だと、すごく明るいところじゃないと撮れない代わりにものすごく粒子の細かいスムーズな写真が撮れます。一方、暗いところで撮りたいときは感度1600とかにすると多くの光を取り込むことができるんですけど、グレインっていう粒子がたくさん出てしまう。少し粗い写真になりますけど、それが好きだという人もいますね。

亜生 僕、F値とISO、シャッタースピードを完璧で捉えたいんです。感覚的にでもいいんですけど、この感じやったらこういう設定でいけるなっていうところまでいきたい。そのためには、経験が必要だということですよね。

大槻 それももちろん大事なんですけど、まずはカメラで撮るというより、亜生さんが何をどう撮りたいかを優先して感覚を磨いていってもらえたらなと思います。今日は、亜生さんが今まで撮影した中から自信のある写真を選んで持ってきてくれたんですよね? ちょっと見ていきましょう。

 

亜生、一番のお気に入り写真

亜生 こういうふうに撮りたいなと思った感じが出せた1枚です。後ろはちょっとだけぼかしました。

大槻 これ、実は猫にピントが合ってない……ブレてるかもしれないですね。

亜生 えっ、完璧やと思ってたのに!(と言いながら、まじまじと写真を見て)確かに……1匹が動いちゃったんかな。半押しでピントを合わせたんですけど。

大槻 この2匹ってカメラからの距離が同じではないですよね? その場合、1匹にピントを合わせてからもう1匹に合わせようとするとブレたり、せっかく合わせたピントがズレてしまうんです。もし両方にピントを合わせたいのであれば、さっき話したF値を上げればいい。例えばF2.8から8にすると、2匹にピントが合いますよ。

▼2匹共にピントを合わせたバージョン

 亜生 ちょっと上げるだけでいいんや! こういうシチュエーションで撮るとき、後ろがボケてるかどうかばかり気にして、どんどんF値を下げてました。

 

大槻 距離間の違う被写体の場合、8くらいにしたほうがきれいに撮れると思います。逆に、こちら(下)の写真は、もう少しボケをいかしても良いかもしれません。もっと手前のドア部分をぼかして分量を多くしたらどうでしょう。そうすると、猫がいるところを覗き見しているような奥行きがでます。


▼手前の扉をよりぼかしたバージョン

亜生 あぁ、なるほど! このほうが雰囲気出るかなぁと思ったんですけど……確かに直してもらったほうが、猫たちがくつろいでいるところを覗き見してるようなニュアンスが出ますね。ほんまや!

続く、亜生渾身の一枚

大槻 前後しますが、2位の写真は鼻先にピントが……これは敢えてですか? 鼻にピントを合わせたのはとても面白いと思います。ただ、もっと鼻に寄ってみると、亜生さんの視点が分かりやすくなるかもしれません。被写体をどう見せたいかを考えて画角を決めるといいですよ。F値は好みなので、ボケ感が出たほうが好きだったら2.8でもいいんですけど、ピントが合わないリスクが高くなります。ピントを気にするのであれば、F値を45.6に設定すると安定すると思います。ボケは減るので、スナップショット風になりますが、それもまた味があると思います。例えばグッと寄ってみると、迫力が出ませんか?

亜生 ほんまや! わかりやすい!

 

 ▼鼻に寄ったバージョン

難しいと言われる黒猫の撮影

亜生 このフィルムで撮った写真(下)はどうですか? 耳に太陽の光が当たってる感じ。助六っていう猫なんですけど、目がきついんで普段は柔らかい写真が全然撮れないんですけど、このときは撮れるかなと思って撮りました。

大槻 逆光を使ったのがすごくいい。アウトラインがボケる逆光は、柔らかく撮りたいときはすごく効果的なんです。あと、黒に対しての白い背景と黒い背景が半々なのもすごくかっこいいと思います。

亜生 おっ、そこも意識したんです! 以前、黒猫は明るい背景を選んだほうが撮りやすいと聞いたので、なるべく明るい背景で撮るようにしてます。

▼水色にあった椅子をトリミングして白と黒を強調したバージョン


亜生
 このトニーフランクの写真はどうですか? この写真に関しては、色味がすごくいいなと思って撮ったものなんですけど。

大槻 色味に注目したのは全然アリです! ただ、この紫色を強調したいのなら、もう少しだけ寄って足元を切っても良かったのかも。今の画角だと顔と足元の床2カ所にスポットライトが当たっているので、亜生さんが見せたいポイントに視点を集中させることができないんです。足元を切ることで、スポットライトが当たるのが人物だけになり、より紫色の世界が強調されると思います。

▼スポットライトが当たった床をトリミングしたバージョン

亜生 うわぁ、ほんまや! 足元切っただけでかっこいい! ……え、こんなに変わるん? 画角ってめっちゃ大事なんですね。

写真の画角について学んだ連載第1回後編。次回は「画角をグッと寄る」に挑戦します!

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亜生(ミキ)
1988年7月22日生まれ、京都府出身。2012年、兄の昴生とコンビ結成。2020年『第5回上方漫才協会大賞』大賞受賞。毎週日曜『ミキの兄弟でんぱ!』(KBS京都ラジオ)、毎週月曜『ミキBASE』(MBS)、毎週金曜『ミキの深夜でんぱ!』(文化放送)など出演中。公式Instagramでは愛猫との生活が垣間見られる。

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