オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、Yohji Igarashi、宮崎敬太 presents「レイジ、ヨージ、ケイタのチング会」14

オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、Yohji Igarashi、音楽ライター・宮崎敬太のチング(友達)同士による、K-POPをサウンド面から深掘りしていく連載。Kカルチャーに造詣の深い2人がサウンドの面からK-POPを分析しつつ、トラックメイカーYohji Igarashiと共に元ネタを探りながら理解を深めていこうという企画。

今回取り上げたのはaespaのライブ感想、New Jeans「Zero」、IVEのカムバ、改めて感じるM.I.Aのかっこよさ、注目の若手韓国アーティストLil Moshpitなど!

取材&文/宮崎敬太

 

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代々木で観るK-POPのコンサートっぽくて楽しかった

 

レイジ:ケイタさん、4月頭のaespaに行ったんですよね?

 

ケイタ:うん、4月1日。もともと代々木第一体育館ではEXOもSHINeeも観てるからいろいろ感慨深いものがあった。

 

レイジ:それって何年前ですか?

 

ケイタ:2012年か2013年だから、たぶん10年前。

 

ヨージ:ヤバい(笑)。

 

ケイタ:「いにしえー」って感じだよねー。当時はまだ日本オリジナル曲の存在感が今よりもすっごい強くて。あんま詳しいことはわかんないけど、日本で活動するなら日本オリジナル曲を出すみたいな感じだったの。でも当時のEXOやSHINeeの日本オリジナル曲は韓国の活動曲と全然違う世界観だったりして。

 

ヨージ:どういうことですか?

 

ケイタ:日本向けの曲は子供向けっぽかったんだよね。でも韓国の活動曲はそれこそNewJeansでおなじみミン・ヒジンさんがアート・ディレクターとして活躍し始めた時期でもあったのよ。俺はその頃アイドルのことなんて全然知らなかったから、シンプルに「何これ? 何が起こってんの?」みたいな感じで。あの頃ハマってた人たちは、結構そういう感じだったと思う。

 

レイジ:観客と日本の作り手の間に乖離があった的な?

 

ケイタ:うん。少なくとも俺はそう思った。「アイドルオタクはこういうのが好きなんでしょ」みたいな。バカにされてるのかと思ったもん。でも同じ時期に仲宗根梨乃さんは韓国でバリバリかっこいい振り付け作ってるんだよね。アイドル本人もわざわざ日本に来てくれて、一生懸命日本語も覚えてくれてて。そういうのが俺らにめちゃ伝わってきたからこそ、アイドルを軽く見てるように感じられて、当時の日本の作り手が許せなかった。

 

レイジ:で、aespaはどうだったんですか(笑)?

 

ケイタ:そうだった……(苦笑)。とにかくやばかった。3階席だったけど肉眼で認識できてさ。カリナは頭超小さくてまじで10頭身くらいありそうな感じだったし。あれ、もっと近い席でファンサもらったりしたら速攻で好きになっちゃうと思ったわ。

 

レイジ:ウィンターはどうでした?

 

ケイタ:ウィンターはめっちゃ日本語喋ってくれてた。ニンニンもやばかった。あとジゼルね。俺はあのコンサート以来、ジゼルペンになりました。

 

レイジ:じゃあ全体的にいい感じだったんすね。

 

ケイタ:いや……。コンサートとしてはちょっとちぐはぐな印象もあった。これは完全に俺の邪推だけど、aespaのあのコンサートはイ・スマン離脱の影響もモロに食らってる気がした。というのも、これまでめっちゃ打ち出してたメタヴァースとかアバターがあんま出てこないのよ。

 

レイジ:マジすか(笑)。

 

ケイタ:うん。aespaといえばハイパーポップ×メタヴァースみたいな感じだったじゃない? そういうパートもあったはあったの。でもアメリカのアイドルポップスみたいな曲も多くて。それぞれが全然リンクしてないの。だから過渡期なのかなって思った。ただ、そこも含めて代々木で観るK-POPのコンサートっぽくて楽しかったんだよね。何よりコンサートに行ってaespaのことをさらに好きになれたし。ドームがどんな感じになるのかすごい楽しみ。

 

ほんとNewJeansはナシをアリにしてくるよね

 

ケイタ:あと今回は「Zero」の話をしないわけにいかないでしょ。もうさ、こっちもわかってるんですよ。馬鹿のひとつ覚えみたく毎回NewJeansの話をするのはどうなんだっていう。でもこれは無視できない。

 

ヨージ:さすがに「Zero」は僕のところにも速攻で届いてきました(笑)。

 

レイジ:あれはマジで最高すぎました。

 

NewJeans (뉴진스) ‘Zero’ Official MV

 

ケイタ:まさかのドラムンベース。でも全然古くなかった。トラップ、グライム、ドリルを踏まえてのドラムンベースというか。2020年代の質感って感じたな。

 

ヨージ:今回もブートリミックスがめっちゃ出てますよね。

 

レイジ:それで言うとh4rdyのリミックスが完璧だった。しかも「Zero」が出て、ほとんどタイムラグなく上がったのも最高なんですよね。

 

レイジ:オリジナルが超最高なのは大前提として、やっぱこっちも欲が出てきちゃうんですよ。「フロアだともうちょいダーティなのが聴きたいなあ」みたいな。そこに来てこのジャングルリミックス。NewJeansではやれないストリート感をぶち込んでくれてもう完璧。

 

ヨージ:これはブートを作りたくなっちゃうよね。トラックメイカーとしてすごく気持ちがわかる。

 

ケイタ:それはどういうこと?

 

レイジ:これは俺がよく使う例えなんですけど、曲をお弁当箱だとして、いろんな音の要素を中身だとすると、NewJeansの曲っていい具合に隙があるんですよ。ギチギチに詰まってない。どこまで意図してるのかはわかんないけど、こっちが手を加えたくなる。

 

ケイタ:確かにリミックスってオリジナルとはまったく違う曲になるパターンと、良さを残しつつリミキサーの個性とうまく混じり合うパターンがあって、h4rdyさんのリミックス然りだけど、NewJeansのブートリミックスはどれも結構オリジナルの良さが残ってる気がする。

 

レイジ:俺はアートワークにも食らいましたね。

 

ヨージ:うさぎがコカコーラゼロを持ってる。

 

レイジ:これがオフィシャルってのもキモだよね。めっちゃブートっぽいのに(笑)。

 

ヨージ:サビで「コカコーラ」って言ってるもんね。

 

レイジ:あれは韓国のかぞえうたなんだって。

 

ヨージ:「どれにしようかな」的な?

 

レイジ:そうそう。しかも「コカコーラ、マシッタ」は「コカコーラ、おいしいな」でしょ? ちょっと韓国語がわかる人はそっちをイメージするじゃん。まったく韓国語わからない人はただのコカコーラの歌だと思うっていう。

 

ヨージ:ほんとNewJeansはナシをアリにしてくるよね。

 

ケイタ:過去のモチーフをサンプリングしてるんだけど、毎回単なる懐古主義じゃなくて今の感覚でアップデートしてる。超難しいことなのに、そこを一切感じさせない軽やかさ。しかもこれからメンバーは全員成長していくわけで。その過程を観客として見ていられる俺たちは超幸せ者だよ。

 

IVEからCL、M.I.A.へと遡っていくミュージックジャーニー

 

ケイタ:4月前半のトピックといえばIVEのカムバですね。俺はこの曲すごい好き。

 

IVE 아이브 ‘Kitsch’ MV

 

ヨージ:かっこいいですね。キャレドのめっちゃ流行った「I’m The One」とか、BLACKPINKっぽくもないですか?

 


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