オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、Yohji Igarashi、宮崎敬太 presents連載「レイジ、ヨージ、ケイタのチング会(仮)」05

オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、トラックメイカー・Yohji Igarashi、音楽ライター・宮崎敬太のチング(友達)同士による、K-POPをサウンド面から深掘りしていく連載。Kカルチャーに造詣の深い2人がサウンドの面からK-POPを分析しつつ、トラックメイカーYohji Igarashiと共に元ネタを探りながら理解を深めていこうという企画。

今回はOKAMOTO’Sでアメリカへ行ってきたばかりのレイジに現地での空気感を聞いたり、知ってるようで意外と知らないDTMのメソッドについてレイジとヨージにガイダンスしてもらったりと、いつものように自由にやってます。

取材&文/宮崎敬太

 

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ケイタ:レイジくんOKAMOTO’Sでアメリカ行ってたけど、どうだった?

レイジ:一番大きなトピックはaespaと同じ空気を吸ったことかな。

ケイタ:そうか、aespaがLAでライヴした時にレイジくんもLAにいたんだ。

レイジ:そうなんすよ。同じ時期に同じ外国にいるってだけでめっちゃテンション上がりました。しかもリード曲の「Life’s Too Short(English Version)」もLAで聴いたんですね。俺もOKAMOTO’Sのライヴ前だったから、同じアジア人として「LAでこれから戦うんだ」みたいな状態だったから、もうチョーーーーーーー良くて。

ヨージ:世界で一番良い状態で聴いたんじゃない?

レイジ:間違いない。aespaの「Life’s Too Short(English Version)」はK-POPの中でも五本の指に入るくらい好きな曲になりましたね。でもあのシングルってマスタングが謎で。1曲目の歌入りと2曲目のインストで音量が全然違うの。

ヨージ:えっ、それってありえるの?

ケイタ:素人の俺にわかりやすくマスタングを教えて。

レイジ:例えば1枚のアルバムに俺が作った曲、ヨージが作った曲、ケイタさんが作った曲などなどが入るとします。俺もヨージもケイタさんも作ってる環境が違うし、自分たちの感覚で音量を決めてるから、そのままコンパイルするとめっちゃ聴きづらい。そこを均等に調整する作業がマスタングなんです。

ヨージ:「Life’s Too Short(English Version)」はどっちの方が小さいの?

レイジ:それが歌入りのほうが小さいんだよね。インストのほうがデカい(笑)。おそらく歌入りはアメリカでマスタリングしてて、インストは韓国でやってると思うんだよ。てか1枚の作品でマスタングを別々やるってのが意味わかんないんだけど。ちょっと聴いてみて。

ヨージ:(試聴中)……インストのほうが全体的にインパクトがある。この規模のグループでなぜこんなことが起こるんだろう?

レイジ:それはわからん。ただこれはアメリカのマスタリングが小さいんじゃなくて、K-POPが異常にデカいんだよ。DJしててもミキサーのメーターでは全然赤いとこまでいってないのに、信じられないほどデカい音出るもん。K-POPが世界制覇した要因のひとつには音のデカさもあると思う。

ケイタ:2人に聞きたいんだけど、俺は今年出たMondo Grossoの『BIG WORLD』の音がすごく良いと思ったのね。キックのインパクトもあるのに、楽器の質感もしっかり聴こえてきて、なおかつ全体的に音がデカいっていう。そういうふうに仕上げるのはやっぱすごいことなの?

レイジ:はい。トラックメイキング、ミックス、マスタリング、すべての技術を必要としますね。

ヨージ:僕は自分がDTMをやるのでよくわかるのですが、K-POPみたいな音圧を出すのもめちゃくちゃ難しいです。ケイタさんがMondo Grossoのアルバムを「良い音」と感じたのと別の評価軸だとは思うんですけど。

レイジ:潰れないように出すってことでしょ?

ケイタ:説明プリーズ。

レイジ:お弁当箱と一緒です。お米とオカズを無理に詰め込むと潰れちゃうじゃないですか。同じことがトラックメイキングやミックス、マスタリングの作業の中でも起こるんです。

ヨージ:そうなんです。さっきアメリカの音圧の話が出ましたけど、あれって昨今の空間オーディオの影響とかもあると思うんですよ。音に奥行きを出したり、広がりを作ったり、音圧を稼ぐことよりも音を綺麗に聴かせることを重視したマスタリングがトレンドになってきている気もします。それもめちゃ難しいんですけどね。だけどプラスアルファで音圧も出すのはもっと難しい。K-POPは技術的にも相当難しいことしてると思う。

レイジ:ヨージがこだわってる作り方とかあるの?

ヨージ:マスタリングしながら作るってことかな。さっきも話に出たけど、DTMにはトラックメイキング、ミックス、マスタリングの大きく3行程があって。マスタリングが最後の仕上げ作業なんですけど、そこで自分のイメージする音を出すためには、前段階のミックスをしっかりやっておく必要があるんです。マスタリングしてみたらイメージと違うってことも結構あるんで。それでミックスし直すのが、繰り返していくとなかなかに面倒で…。だから僕は仮のマスタリングセットを自分で作ってあって、常に仕上がりと同等の音圧を感じながら作ってます。出来上がりをイメージしながら作るとテンションも上がるので。

レイジ:こういうのってDTMならではで。バンドだとマスタリング後の音をイメージしながら演奏することなんてできない。バンドのレコーディングを料理で例えると、俺らは具材なんです。米、肉、野菜、卵みたいな。ミックスが調理。マスタリングは盛り付け。DTMはそれを全部同時にできる。バンドは農家だよ(笑)。「出来上がりをイメージしながら作るとテンションが上がる」って感覚がないもん。これはミュージシャンとしてそれぞれ音の向き合い方の違いだと思うけど、俺は間違ったフィルの空気感も「今しか録れねえよな」って思ってるから。聴き直すとモタってて超気になる。けど10年後に聴いた時、これが味になるかもしれないっていう。

ヨージ:それは全然ないわ(笑)。

レイジ:あとキャリアも関係してるかも。2010年にリリースした曲を2012〜13年には聴き返せないし、聴き返したくもない。でも2022年に聴くと「うわー、これ19歳でやってたのすごいな」ってなるんだよね。

ヨージ:別の目線が出てくるんだ。

レイジ:そうそう。ヨージの昔の音源を今聴くとディプロっぽいとかあるかもしんないよ。

ヨージ:初期のデモはかなりキツいですね……。未発表の激レア音源ですよ(苦笑)。あれはキツい。まだ聴き返せない。

レイジ:初めて会った時に渡されたデモCDに入ってて。俺もキヴン(Giorgio Givvn)も本気でカッコいいと思ってるのに、本人はずっと「いやあ、あれはない」みたいな感じで(笑)。

ヨージ:一番ダサい髪型の写真を見せつけられてる感じ(笑)。

レイジ:今じゃん。

ヨージ:おいっ!

 

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ケイタ:ヨージさんの最新仕事は?

ヨージ:とあるガールズグループの曲を作りました。

レイジ:メロディーラインまで作ったの?

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