オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、Yohji Igarashi、宮崎敬太 presents連載「レイジ、ヨージ、ケイタのチング会(仮)」04

オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、トラックメイカー・Yohji Igarashi、音楽ライター・宮崎敬太のチング(友達)同士による、K-POPをサウンド面から深掘りしていく連載。Kカルチャーに造詣の深い2人がサウンドの面からK-POPを分析しつつ、トラックメイカーYohji Igarashiと共に元ネタを探りながら理解を深めていこうという企画。新作が公開される『HiGH&LOW』シリーズについてや、DJをコンスタントに続けている2人だからわかるコロナ禍によって変化したというクラブ現場の雰囲気、Red Velvetからロンバケまで。盛りだくさんでお届けします!

取材&文/宮崎敬太

 

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3人の共通点はヤンキーマインド

 

レイジ:ヨージはやっぱりまだアイドルに全然興味ないの?

ヨージ:きっかけが……。

ケイタ:(こんな連載やってるのに)ないとは言わせねえぞ。

ヨージ:仮に興味持ったとしても追えないですよ。今からアイドルをディグするのしんどそうだし。

レイジ:プライドを捨てきれないってことでしょ?

ヨージ:いやいや体力の問題(笑)。

レイジ:むしろ逆だから。アイドルを好きになると体力のゲージがどんどん増えていくんだよ(笑)。まあ“アイドルに興味ないヨージ・イガラシ”ってのもこの連載の重要なピースだからね。最近ヨージは何にハマってるの?

ヨージ:芦澤竜誠。

ケイタ:……?

ヨージ:格闘家です。K-1ファイター。

レイジ:「おい、ガキ!」みたいな感じの人なんですよ。

ヨージ:YA-MANとの記者会見のときのね(笑)。Abema TVで『芦澤竜誠と行くぶらり喧嘩旅』という番組をマッコイ斎藤とやってて。2人が口喧嘩しながら街ブラするっていう。

ケイタ:マッコイ斎藤といえば、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』、『とんねるずのみなさんのおかげでした』とか、テレビが元気だった時のバラエティに関わってた人だね。その組み合わせは面白そうな雰囲気ある。

ヨージ:めっちゃ面白いんですよ。特に好きなのがAbema TVの瀧山あかねアナウンサーが出てる回(笑)。

ケイタ:ヤンキーが好きなの? 前も心の中に「卍」とか「大和魂」みたいなものがあると言ってたけど、いわゆる暴走族的な要素とヨージさんのアウトプットが一切結びつかないんだよね。

ヨージ:暴走族的なことというよりも、もっとマインド的なことですね。舐められたくないとか、仲間がやられたらやりかえすとか。そういう発想が根底にあって。

レイジ:それはケイタさんにもあるでしょ。俺ら3人の共通点はヤンキーマインドだ。みんな日本語ラップ大好きだし。

編集部:じゃあ『HiGH&LOW』の新作(9月9日公開『HiGH&LOW THE WORST X』)が公開されたらみんなで観に行きましょう。次はイリチルのYUTAくんも出ますし。

レイジ:いいすね。『HiGH&LOW』はめっちゃ面白いす。クリエイティヴのターゲットが明確なんです。大衆受けを狙う作品って中途半端になりがちじゃないですか。あらゆるところに目配せしまくった結果、「これは一体、誰が喜ぶんだろう?」みたいな。『HiGH&LOW』シリーズはその真逆で。「LDHがLDHファンを喜ばせるために作った映画」。だから出演者全員が一番カッコよく、おいしく見える設定で出てくる。それがあまりにも潔すぎて、逆にLDHに興味ない人にまで届いちゃった感じ。

ケイタ:へー。そう言われると興味出てくるな。ANARCHYさん出てたよね。

レイジ:そうなんですよ! ANARCHYさんは映画の中ではMIGHTY WARRIORSってチームに所属してるんですけど、そのチームの音楽にはMighty Crownが参加してたり。そもそもLDHはアンダーグラウンドなダンスシーンから出てきた人たちだから、カルチャー的な外壁を知ってるとさらに楽しめるんですよ。

ケイタ:俺は勝手に『特攻の拓』みたいな、いわゆるヤンキーマンガをLDHの人たちがやってるイメージだった。

編集部:ヤンキーマンガというより、喧嘩のシーンは壮大な騎馬戦みたいな感じですね。

レイジ:そうですね。超ド派手な運動会。あとマンガだと近いのは『TOKYO TRIBE』かな。いろんなチームが抗争してるけど、さらに強い敵が出てきて、敵同士だったチームが団結していく、みたいな。あそこにYUTAが加わるのはむっちゃ楽しいと思います。ヨージもきっと好きだと思うよ。この人、ここ何年か映画をほとんど見てないんですよ。

ヨージ:うまく集中できないんですよね(笑)。携帯見たくなっちゃったり。でもすごい昔ですけど、『岸和田少年愚連隊』は大好きで100回は見ました。

ケイタ:ナインティナインが主演の不良映画ですね。僕も大好きです。同じ井筒監督の『ヒーローショー』もおすすめですよ。

ヨージ:ジャルジャルが主役に大抜擢されたやつですよね。

ケイタ:うん。大阪で実際に起きた若者同士の生き埋め事件がモチーフになってて。井筒監督特有のリアリティある生々しい演出が最高だよ。「こういう人いそう……」みたいな。あと去年公開された『無頼』というヤクザ映画が最近Netflixに入ったんですよ。まだ観てないけど戦後からバブルまでのヤクザを描いた内容らしい。ちなみに元EXILEの松本利夫さんが出てる。

コロナで居場所のなくなった若い子たちが夜遊びするようになった

ケイタ:日本語ラップのヘッズだったヨージさんがクラブミュージックにハマるきっかけはなんだったの?

ヨージ:一番大きいのはDiploとSkrillexからの影響ですかね。

レイジ:ヒップホップEDMみたいのを作りたいってずっと言ってたもんね。SkrillexがPusha-Tをフィーチャリングした曲みたいな感じでしょ?

ヨージ:そう。本当はそういうのももっとやりたい。でも今のシーンの感じを見つつ、そういう感じのものはまだちょっと派手すぎて、現行のシーンには合わないかなと思って、あんまりやってないというのが本音ですね。

レイジ:日本語ラップがずっと好きだったからこそ、まったく異なるニュアンスのSkrillexがフレッシュだった的な?

ヨージ:まさに。

レイジ:その感覚すごいわかるな。俺も父親の影響で小さい頃からロックとかパンクとか聴いて育ったけど、我が家のライブラリに日本語ラップはなかったんですよ。だから高校の時、友達の家で『さんピンCAMP』のビデオを見せられた時はすごい衝撃を受けましたね。「こんなのあるんだ!?」って。でもさ、最近、またEDMが来そうな雰囲気あるよ。翠月(- MITSUKI-)でもパーティーやってたし。

ケイタ:外から見てると、今の若い子たちは1周回ってチャラいのがむしろイケてると感じてそうな印象ある。

レイジ:それはすごいある。やっぱコロナがデカいんですよ。コロナ以前のクラブって男女問わず出会い目的で来たけど結局お持ち帰りできず、始発まで声かけられ待ち亡霊みたいのが彷徨ってるような感じがあったじゃないですか。でも今はそれがなくて。コロナで抑圧されまくった日常生活の鬱憤を発散させるために来てる。だからみんな朝5時まで爆音で踊り狂ってるんですよ。若い子のエナジー感じますね。

ケイタ:大人ではなく若い子が来るようになったのはなぜ?

レイジ:大人は仕事に穴開けられないから、感染リスクが高いと言われている現場に来なくなったんですよ。逆に子供は仕事もないし、学校もないし、関係ねえみたいな。ここはグレーだけど、コロナ禍でもずっとパーティしてたようなところもあって。そこに若い子たちが流れていって夜遊びする年齢層がガクンと下がった。

ケイタ:なるほど。コロナ禍真っ只中の時はそんなに話題にならなかったけど、当時大学生になった人たちは、まず学校に行けなくて、バイトの求人もなく、知らない街で新しい友達と出会うきっかけもなく、特に一人暮らしの子はどこにも居場所がなかったらしいね。

レイジ:そういう子たちが、パーティーという遊び場を見つけた感じです。そして今、新しいカルチャーを作ってる。音楽オタクだけじゃなくて、とにかく発散したい子たちが集まってるから、盛り上がる音楽ならジャンルは関係ないんですよね。最近ピークタイムにロックかけますし。そこが面白いんですよ。

ヨージ:この前、キャロルかけてたよね(笑)。でもレイジが言ってることわかるな。知らない曲でもカッコよければ盛り上がってくれる。コロナ前はかけづらかったビッグルーム系のEDM TRAPみたいなのも今は先入観なく良い音楽として聴いて受け入れてくれる印象です。

ケイタ:確かに俺とかだとEDMにはネガティヴな先入観あるもんな……。

レイジ:それってさっきのプライドの話にもつながりますよね。「EDMで踊ってる俺ダサい」みたいな(笑)。今の子たちは音楽を知らないからこそ、ラモーンズやストゥージーズとaespaの「SAVAGE」を並列で楽しんでくれるんですよ。

K-POPにハマれるキャパがある今なら『HiGH&LOW』も「ロンバケ」も絶対ハマる

ケイタ:あと今日は改めてRed Velvetの話をしたいと思って。というのも、LE SSERAFIMのSAKURA、IVEのREI、Billlieのツキみたいな新しい世代のK-POPで活躍する日本人メンバーがこぞってレドベルからの影響を公言してるんだよね。もちろん当時から人気はあったけど……。

レイジ:どちらかといえば、BLACKPINK、TWICE、BTSの陰に隠れた存在でしたよね。

ケイタ:そうそう。最近K-POPを好きになった人はRed Velvetをあまり知らないかもと思って、日本を代表するスルギペンのレイジくんに魅力を語ってもらおうかと。レイジくんって気づいたらめっちゃレドベルのペンになってた気がするんだけど……。

レイジ:最初、Red Velvetはまったく顔の区別がつかなかったんですよ。『The Red』の頃とか。でもスルギだけはわかったんです。特徴的だし。それがきっかけかも。「この子はなんとなくわかるなあ」みたいな。そこから名前も覚えて、みたいな。あとレドベルは常に独特なんですよね。最近のK-POPのガールズグループは、デュア・リパからめちゃくちゃ影響受けてるんですよ。あとドージャ・キャットも。これは別にディスじゃなくて、今の世の中を踏まえて、女性がグローバルなポップスをやろうとすると自然とそうなっていくと思うんですよね。でもレドベルからはそれを一切感じない(笑)。K-POPって感じがする。そこが好き。

ケイタ:ヨージさんにRed Velvetを聴いてもらうとしたらどの曲がいいかな?

レイジ:「Feel My Rhythm」はこの前聴いたからやっぱ「Red Flavor」でしょ。

ヨージ:(「Red Flavor」MV視聴中)ああ〜、なるほどね。

レイジ:この曲は「Pon De Floor」をループさせてコード付けて作ってたんじゃないかと予想してる(笑)。

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