押井守のサブぃカルチャー70年「海外ドラマの巻 その2」【2021年2月号 押井守 連載第13回】

円谷プロダクションを語る前に触れねばならないこととして、引き続き海外ドラマのお話を。SF作品が日本に根付かない理由とは何か。その中で押井さんは何を考えながらSF作品を手掛けるのか。「SFと日本人」というテーマに発展しました。
取材・構成/渡辺麻紀

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日本人は日常以外に興味がないから、
日本でファンタジーが根付くのは難しい

――前回は『ミステリー・ゾーン』(1960~1964年)と『アウター・リミッツ』(1963~1964年)の関係性は『コンバット!』(1962~1967年)と『ギャラント・メン』(1962~1963年)のそれに似ているというお話でした。……本当は円谷プロダクションのはずだったのですが、そこになかなか行き着けないんですけどね(笑)。

仕方ないじゃない。海外ドラマの話をしないと円谷は語れないんです、少なくとも私は。

――はい! で、私は『ギャラント・メン』という海外ドラマは知らないです。

『ミステリー・ゾーン』のヒットによって『アウター・リミッツ』が生まれたように、『ギャラント・メン』も『コンバット!』のヒットによって作られたんです。
『ギャラント・メン』も『コンバット!』と同じヨーロッパ戦線が舞台で、どちらも特定の舞台の話。じゃあどこが違うのかというと『コンバット!』はアクション、『ギャラント・メン』はドラマ、それも色っぽい話が多く、そのせいか兵士のほうもイケメンが多かったと思う。『コンバット!』はサンダース軍曹を演じるビック・モローを始めルックスより個性で勝負するタイプの役者が揃っていた。サンダース軍曹がドイツ軍の戦車と一騎打ちするエピソードもあって、やっぱり骨太なんです。今になって観ると、その戦車はM41で、どう見てもドイツ戦車じゃないんだけどさ(笑)。

――大人になって観直したんですか?

はい、DVDのBOXセットを持っていますから。
『コンバット!』のほうには戦車や装甲車、ジープにメッサーシュミットも出てくるからね。そりゃあ、こっちに燃えるでしょう。でも、小学生の間でも『ミステリー・ゾーン』派と『アウター・リミッツ』派に分かれるように、この2本の戦争映画もそれぞれファンがいて、論争をしていた。小学生間でも論争はあるんです。『コンバット!』はロバート・アルトマンが監督していたりして、それって、『ウルトラセブン』(1967~1968年)における実相寺(昭雄)回みたいなもので、スペシャルなんです。当時は情報誌なんてないし、新聞の番組表には監督まで書いてないから、オープニングの最後のクレジットを観て「やったぁー! 今日は実相寺だ」となる。『コンバット!』にも同じようなことが起きていたわけです……といっても、こちらはあとで観直してだけどね。
『ミステリー・ゾーン』以来のコーフンと言えば『プリズナー№6』(1967~1968年)。風船ひとつであれだけ面白いドラマが作れるのに驚くよね。ナベさん(渡辺繁/元バンダイビジュアル取締役社長)も大ファンでBOXセットを出したから、私が解説を書いたんだけど、都築道夫に何を書いているのか分からないと言われた。凝った文章を書いたつもりなんだけどさ。

――『プリズナー№6』はNHKだったから私も家族全員で観ていましたよ。最後にオレンジ色の風船が浮かぶ「オレンジ警報」ですよね。シュールなドラマで、渡辺家も夢中でしたね。

あの当時は本当に浴びるように海外ドラマを観ていた。日本のドラマにも『七人の刑事』(1961~1969年)のような傑作もあるけど、あとは「うーん」という感じ。ほとんどが日常を扱ったものでしょ? それも山田太一ならまだいいけど、橋田壽賀子になると日常中の日常ですよ。

――『七人の刑事』は私も観ていました。あまり憶えてないけど、今も似たようなタイトルのドラマがありますよね。

『七人の侍』(1954年)から『七人の刑事』が生まれて、いまだにそれが受け継がれているんだろうね。でもさ、昔のドラマには唐十郎とか佐々木守が脚本を書いていて、その回はハチャメチャだったりしてたんだよ。実相寺が演出をするエピソードもそう。でも、今のドラマにはそういう自由さはないんじゃないの? 誰がディレクターで、誰が脚本であっても、さして変わらない。
今のTVは役者の世界ですよ。観客は役者を面白がっているだけで、演出は二の次。

――確かにそうかもしれませんね。

子供の頃に海外ドラマを浴びるように観た経験は、いまだに大きな影響を及ぼしている。麻紀さんだってそうでしょ? 麻紀さんが洋画しか観ないのも、子供の頃のお気に入りが海外ドラマだったからです。そういう経験はどうしても消えない。克服できない。こういう仕事に就いてしまうとなおさらだよ。
私は『ガルム』(『ガルム・ウォーズ』<2015年>)のとき、どうやってファンタジーを作ればいいか考えまくった。『ASSAULT GIRLS』(2009年)はいわば、そのテストのようなもの。日本の女優さんにバトルスーツを着せてどこまで世界観が成立するのか? そうやっていろいろ試行錯誤したあとに『ガルム』があるんです。結局、カナダで撮影したのも、日本ではファンタジーのような非日常が成立しないことが分かったからですよ。

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