押井守のサブぃカルチャー70年「海外ドラマの巻」【2021年1月号 押井守 連載第12回】

円谷プロダクションをテーマにする前に語らねばならないこととして、前回は短編SF小説を、そして今回は海外ドラマについての話題に。お決まりの脱線トークでは、「映画監督は」、誰しもが恐妻家というお話(実名込み…)もあります。
取材・構成/渡辺麻紀

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シットコムは好きで、日本でもアニメで出来ないかトライしたことがある

――前回は円谷プロダクションのはずだったんですが、その前に『ミステリー・ゾーン』の話をしたいとおっしゃったので、そのつもりだったものの、なぜか短編小説の話で終わっちゃってました。なので今回こそは、円谷プロの前章である『ミステリー・ゾーン』(1960~1964年)の話をお願いします!

麻紀さんも観ていたんだよね? どのエピソードを憶えてる?

――いろいろ憶えていますよ。眼鏡をかけた読書好きのおじさんの話(第1シーズン第8話『廃墟』)とか、巨大な箱に閉じ込められた者たちの話(第3シーズン第79話『奇妙な奈落』)とか、年を取らないお姉さんの話(第4シーズン143話『エジプトの女王』)とか。押井さんはいかがです?

私が強烈に憶えているのは、核戦争後の話。荒廃した世界でひとり放浪生活を送る男が、何年かぶりに人間に出会う。その金髪のお姉さんとは言葉が通じなくて、あれやこれや試すものの上手く行かない。しかも、ちょっとしたことで銃撃戦になってしまう。彼は諦めてそこを離れるんだけど、違う町で彼女と再会する。男はまた戦うのかと身構えると、車の陰から出て来た彼女はドレスを着ていた――という話ですよ。おそらく金髪のお姉さんはロシア兵という設定で、ドレスに着替えているのは、もう普通の女性に戻りましたという意味。

――調べますと……それは『最後の二人』(第3シーズン第66話)というエピソードですね。第3シーズンの最初のエピソードです。監督&脚本はモンゴメリー・ピットマン。何と男のほうはチャールズ・ブロンソン、女は『奥様は魔女』(1964~1972年)のエリザベス・モンゴメリーですよ!

そうなんだ……というか、昔のTVシリーズってそういうことが結構あるよね。ロバート・アルトマンが監督していたり、ロバート・レッドフォードが出演していたり。子供のころは役者とか監督とか、まるで気にせずに観ているから、あとでびっくりみたいなこと。
もうひとつ、めちゃくちゃ強烈だったのは、荒野の家で一人暮らしをしているおばさんの話。台所にいたおばさんの前に小さな宇宙人が現れ、おばさんをレーザー光線で攻撃する。小さな火傷を負い、怒ったおばさんはフライパンか何かでその宇宙人を叩き殺しちゃう。で、その家の上空には「NASA」と書かれた円盤が飛んでいる。殺されたほうが人類だったというオチですよ。

――えーっと……それは第2シーズンの『遠来の客』(51話)ですね。脚本は(リチャード・)マシスン。監督はダグラス・ヘイズです。

じゃあこの話は? 嵐に遭遇した何人かがドライブインのようなところで足止めを食らう。みんないろんな話をし始め、「宇宙人を信じるか?」「そんなのいるはずないだろう」とか言い合っているうちに天気が回復して、ひとりを残してみんな出発する。ところが、出発した連中はがけ崩れに遭って死んでしまう。残った客が店のカウンターでコーヒーを飲みながら煙草に火をつけると、腕が3本ある。それを見た店のおじさんが、「オレも」といって額を見せると、もうひとつ目があったというオチ。

――それはですね……ないですよ、押井さん。とても『ミステリー・ゾーン』っぽい話ですけど、そういうエピソードはないようです。

ホント? 何見て調べてるの?

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