第8回
殺伐とした時代を乗り切るために、
今年もめちゃくちゃなマンガを読もう
あけましておめでとうございます! 昨年春からWEBに移行して再開されたこのコラムですが、これまでの紹介作品を冷静に振り返った結果、「書いてる人が、暴力と死のマンガにしか興味がなさすぎるのではないか?」という根本的な問題が露呈しましたので、今年は暴力と死のあるマンガ以外もしっかりチェックし、ブロス読者の皆様に文化的なマンガ情報を発信していければと思っていますので何卒よろしくお願いします。
ということで暴力と死のマンガ情報です!
河部真道『鬼ゴロシ(1)』(日本文芸社)
※週刊漫画ゴラクで連載中
『鬼ゴロシ』が本当に面白い。仮面の集団に妻と子を殺され、さらにその時の負傷で15年間植物状態だったヤクザの復讐劇。絵柄もストーリーも、「とにかく読者をびっくりさせてやろう」という気合がとんでもない。主人公の行動原理が復讐というのは、本当に理解できない暴走を生んで最高。2021年、超期待の一作。
浄土るる『地獄色』(小学館)
※WEB公開作、連載、未発表作をまとめた短編集
19歳の新人作家・浄土るるの短編集『地獄色』も別の意味で圧倒的で、こういう無惨さをかわいい絵に乗せてぶん殴ってくる作家が、それぞれの時代の子たちに向けていつの時代も必要! というのを強く感じる。巻末書き下ろしの『こども』とか、めちゃくちゃシンプルに怖くて最高のハッピーエンドなのでぜひ読んでください。
うめざわしゅん『ダーウィン事変(1)』(講談社)
※月刊アフターヌーンで連載中
年末に紹介しきれなかった『ダーウィン事変』も、表紙を見て分かる通り「主人公が人間とチンパンジーのハーフ」という、設定だけで100点満点の設定で、理を持ち合わせつつ爆発的身体能力でテロ組織をボコボコにしたりするので本当に楽しい一作です。読みましょう。
高遠るい『はぐれアイドル地獄変(11)』
(日本文芸社)※漫画ゴラクスペシャルで連載中
その他、暴力と死のマンガライフをより充実したものにするために、「トーナメント予想」と「対戦組み合わせ予想」は必須なんですが、ここ数年完璧な展開を見せた『はぐれアイドル地獄変』の最強女子格闘トーナメントもいよいよ決勝だし、その代わりに一から予想を楽しめる殺傷力の高いトーナメントマンガが2作始まっていることをお伝えします。
ひとつはコミックゼノンで昨年末に始まった『魔女大戦』。
クレオパトラ、モナ・リザ、楊貴妃、ジャンヌ・ダルク、紫式部、アガサ・クリスティなどなど、歴史上の才女・妖女・女傑が一堂に会しての32名トーナメント。
今まだ一回戦第一試合の巴御前VSエリザベート・バートリが始まったばかりで、トーナメント組み合わせは全部発表されてるんだけど、一回戦でいきなり卑弥呼とクレオパトラが激突するし興奮しかない。読みましょう。
もう一つは、先週ヤングマガジンサードで始まった『テンカイチ』。
信長が天下を獲った架空の西暦1600年を舞台に、信長が「跡継ぎを決めるための最強トーナメント」を開催。明智光秀は佐々木小次郎を、徳川家康は本多忠勝を、長曾我部元親は宮本武蔵をそれぞれ雇って殺し合わせる16人トーナメント。「だれが勝つのか」だけじゃなく、雇い主同士の裏での繋がり/八百長も戦略に組み込まれること必至なので、初っ端から連載を追いかけること強く推奨!
ここに『ケンガンオメガ』と『終末のワルキューレ』の対戦予想を組み合わせて、あとは「動物の能力を使って戦う作品」を可能な限り捕捉すれば、目先2年の暴力と死は安定供給確定。
いやー、本当に殺伐とした世の中になってまいりましたが、めちゃくちゃなものを楽しく吸収して生きていきたいものですね。
劇画狼(げきが・うるふ)●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。とよ田みのる原画展、1/31(日)まで大阪でやってます。画廊モモモグラ 特設サイト
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