『エレ片のケツビ!』(TBSラジオ 毎週土曜深夜1・00~2・00)にリスナーから寄せられる恐怖体験、不思議体験の数々を、再取材と書き下ろし原稿でまとめた全45本の「真・実話奇譚集 私、一回、死んだのかもしれません」がこのたび上梓された。この本が世に出るまでには、番組の熱烈なリスナーの、ラジオへのアツい想いが根底にあった。
今回はこの本の著者・富岡蒼介氏が、出版までの道のり、その中にあったラジオへの想いをコラムとして寄稿。収録された奇談の一部を紹介する。
<プロフィール>
富岡蒼介(とみおか・そうすけ)●ラジオリスナー、奇談収集家。サイト「不思議ドットコム」編集長として同サイトを運営している。
<番組情報>
『エレ片のケツビ!』
東京・TBSラジオ 毎週土曜深夜1・00~2・00
出演 片桐仁 エレキコミック
●『エレ片のコント太郎』から続く、片桐仁とエレキコミックのラジオ番組。ちなみに「ケツビ!」とは、ケツに火がつく、という意味で、番組の存続をかけて出演者も制作陣もリスナーもそれぞれが全力を注ぐ内容となっている。
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エレ片ファンのエレ片ファンによる、エレ片のための一冊「私、一回、死んだのかもしれません」ができるまで
文/富岡蒼介
本書「真・実話奇譚集 私、一回、死んだのかもしれません」は、TBSラジオで土曜深夜1時から放送されている、『エレ片のケツビ!』内の同名コーナーを書籍化したものです。
同コーナーでは、幽霊との遭遇譚や臨死体験などの「心霊」から、事件性を帯びた「人怖」、どのジャンルの枠にも入らない「不思議な話」まで、多岐にわたる投稿が寄せられています。
ところでお前は誰なんだ、という話なのですが、僕はただのエレ片リスナーです。
忘れもしない2021年3月、15年続いた前番組『JUNKサタデー エレ片のコント太郎』が終わってしまいました。
終了報告をする放送内で片桐さんは言いました。「番組が終わるのはお前らのせいだからな!」。メールを送るわけでもなく、ただ聴いていただけの僕は思いました。「片桐さんの言うとおりだ」と。
いつでも聴ける、毎週必ず放送されると信じていたラジオ番組も簡単に終わってしまう。それがわかった僕は、番組のために自分にできることはやろう、いつ終わってもいいように悔いの残らないようにしようと考え、番組に「本を作って話題づくりをしましょう」と提案したのが本書誕生のきっかけです。
話は逸れますが、『エレ片のケツビ!』での片桐さん。一貫して「ナマの人間」を出し続けてくれるところが本当に魅力的なんですよね。普通言いませんよ、リスナーに向かって「お前らのせいで番組が終わる」なんて。
最近もありました。奥さんのおっぱいを触りたいがために「母乳を飲ませて欲しい」と頼み込むさまを、赤裸々に自分の口から話し出す片桐さんにドン引きするエレキコミックのお二人。この構図になったときの『エレ片のケツビ!』は本当に神がかっています。
話を書籍に戻しますね。本書はとことん「実話」にこだわりました。
体験した人でなければ語れない言葉があります。原稿を執筆する際には、体験者の皆さんが発した、ウソでは絶対に言えないセリフを、全話に入れ込むことを意識しました。
たとえばある臨死体験者のお話。「意識を取り戻したら倒れていたので、立ち上がろうと地面に手を付きました。普通、道路に手を付いたらザラザラしていますよね? でも、なんの感触もないのでおかしいなとは思ったんです」(第31話「清く正しく」)。
臨死体験は現実とまったく同じ意識を持っているとはよく言われます。ところが、触覚はどうやらないようだということがこの言葉からわかります。
心霊体験や超能力なんてすべてまがい物、体験者の勘違いという否定派の意見もよくわかります。ですが、こんなお話はどうですか?
霊感を持っているというAさんとカラオケボックスに行ったあるリスナーさん。部屋に案内されてリスナーさんは部屋に入れるのにAさんだけ入れない。
無理やり入れようとしても入れない。この部屋に一体何が、と辺りを見回したら、実は足元にあるものが…というお話。これ、Aさんもそこにそんなものがあるなんて、夢にも思っていないにもかかわらず、身体が反応してしまっているというエピソードです(第28話。タイトルは内緒)。葬式や儀礼なんて無駄なもの、意味のないものと僕は思っていました。取材を通して「なんらかの意味があるのかもしれない」と考えるようになりました。
今回、本書には特典も付けました。第3話「留守電」、このお話は「絶対に入るはずのない状況で入った留守電」にまつわる不思議な話なのですが、この留守電の音声を特典でお聞きいただけます。
20年以上前のエピソードなのでオリジナルの音源は失われているのですが、体験者がミュージシャンだったこともあり、この音声を使った曲を当時作ってCDにしていました。この楽曲の抜粋をダウンロードしていただけます。
第34話「神様の通り道」は、締切直前になって急遽新規に入れました。これは、もともと幽霊屋敷と呼ばれていた家に住んでいた体験者に伺ったお話です。彼女が他の家に引越した後、新たに入った住人が隣人に殺されてしまった、というお話です。
なぜこの建物が幽霊屋敷となったのか、なぜその家の住人は殺されてしまったのか。現地の写真を掲載していますので、そちらをご覧いただければ一目瞭然かと思います。
編集者仲間に「怖い話の本を書いている」と話したら、「お前の身にも変なことが起こるよ」とは言われていました。
オカルト好きでありながらその手の経験がほぼ皆無な自分としては「はいはい」と聞き流していたのですが、テキストファイルが突然文字化けする、保存したはずのファイルが無くなるという電子的なトラブルは当たり前。
デザイナーは頻繁に金縛りに遭うようになり「もうやめたい」と言い出すし、掲載しようとした心霊写真は見るたびに表情が変わっているし(どんなに明度を調整してもうまく印刷されないので、カラーの原本を特典でダウンロードできます)、本当にその手の出来事ってあるんだなと実感しました。
ただ、「あの原稿はひょっとしたら表に出したらマズイのでは」と勝手に思っているエピソードが1つあります。内容の改変は行っていませんが、最終的に一部の核心部分はカットして掲載しました。どのエピソードか、探してみてください。
今回、書籍になったコーナーのあるラジオ番組『エレ片のケツビ!』は、エレキコミックのお二人と片桐仁さんによるお笑い番組です。
最後に、収録したエレキコミックのやついいちろうさんのインタビューにもある、「面白いというのは『ゲラゲラ笑う』ことだけではない」「興味深いというのも『面白い』のひとつ」という言葉の通り、笑いから不思議な話まで振れ幅の大きな番組でもあります。
あくまでもプロの芸人として番組に臨むエレキコミックに対して、一貫して学生時代の友人であるエレキコミックのお二人とのガチ話のスタンスを崩さない片桐仁さんという構図。ここから生まれる破天荒なエネルギーを、本書とともにたくさんの方に楽しんでいただきたいなと、ひとりのリスナーとして思っています。
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