片桐仁と春太の おしえて 何故なら しりたがりだから「滝行」編

 

いろいろあった2021年の厄を落としたい!
元相方も連れて行きたいところだが、
そこはまぁ……

 

今回のテーマ

「滝行」

 

取材・文/片桐仁
絵/片桐春太
撮影/石垣星児
編集/おぐらりゅうじ

 

  どうも、2021年の厄を落としたい、片桐仁です。まぁ私事ですが、2021年の夏にいろいろありまして、そろそろ〜ほとぼりが冷めてほしい、今日この頃なのだす。

 とはいえ、17年間続いたこのブロスの連載も年2〜3回に減り、粘土の連載もネット媒体になり、ぴあの美術館連載も『ぴあアプリ』での連載。いつしか紙媒体での連載がなくなって久しい現在、状況は刻々と変わっていきます。風の時代ですから。って、なんだよ「風の時代」って! ここ100年間の「土の時代」が終わって、風の時代になったんですって! みなさん知ってました? ていうか、100年前に「今から土の時代です!」って言ってた人はいたのかしら!? 100年後は何の時代になるの? その辺は気になる……。で、何とか2021年末に、このブロスの連載『おしえて 何故なら しりたがりだから』略して「おしり」が帰ってきました!

 そして、帰ってきたといえば、2021年2月「一流雑誌の出版社に中途採用されたので就職します! つきましては、12年間続けてきた片桐さんの担当も外れますので、またどこかで!」と、鼻息荒くテレビブロス編集部を飛び出した担当編集おぐらが、まさかの一流雑誌の出版社を退職! 早い! 早いよ、おぐらー! 「そっちの一流誌でオラに仕事くれよ〜」という間もなく、1年ぶりにブロスの担当に復活。いや、お前の飛び抜けた“サブカルセンサー”は、一流カルチャー誌には収まらないって……。あっちは“雰囲気サブカルチャー”なんだから。お前じゃ口当たりが強すぎるよ……。

 よし! こうなったら心機一転! お前も俺と厄祓いだ! 本当は元相方も連れて行きたいところだが、そこはまぁ……片方が行けばいいだろう。「修行? 面白そう!」と、次男の春太も行きたがり、それならうちの事務所の社長も一緒にどうかな? え! 行かないの?

社長「俺67歳だぞ!」「ゴルフだったら行くけど」

 了解です。で、厄祓いの方法は、何にしましょう? 普通に神社でお祓いしてもらってもなー。厄年終わってるし。護摩焚き? いや、滝に打たれるやつ! 滝行やろう! あれは何のためにやるの? ウィキ情報によれば、もともとは修験道の修行だったみたい。春太、正解! しかも東京都内でやれるそう。担当おぐらのリサーチによると「自然のものなので、降雨量によって滝の水量が変わります」とのこと! 少なかったら写真映えしないぞ!! え? 春太が月曜日に風邪ひいた? 取材は土曜日。というか俺も風邪っぽい。でも、滝行は身体にいいみたいな記述もあるし……。

 というわけで、俺と担当おぐら、長男の太朗は期末試験直前なので行けず、次男の春太は体調次第。社長に変わってマネージャー白石、カメラマン石垣まで、5人で行って5人で滝行してきまーす! って、カメラマンまで滝行やっちゃったら、撮影どうすんだ!?

 

★ 今回お邪魔したのは、東京都西多摩郡檜原村にある「龍神の滝」です。経験豊富な指導者のもと、安全に「滝行」を行うことができます。料金は5,000円/1名分+行衣の洗濯代500円。平日は3名より、土日など申し込みの多い日は1人でも可能。滝行をご希望の方は、真言宗「観音寺」住職の千葉さんのケータイ(090-4597-0320)までご連絡ください。

 

滝の中は黄泉の国。
一度死んで、生まれ変わるのです。

 

 滝行をするために向かったのは、東京都西多摩郡檜原村。朝10時、僕とマネージャー白石、ブロス担当編集おぐら、カメラマン兼ドライバー石垣の車で集合し、無事に風邪から復活した次男の春太も乗せて出発。途中、石川SAに寄って、ゴムヘビのガチャガチャをやったりして、昼の12時30分頃、無事に檜原村へ到着。

     

 檜原村には「九頭龍の滝」と「龍神の滝」という2カ所、滝行のできる滝があり(冬季は「龍神の滝」のみ)、滝行の前には「九頭龍神社」への参拝が慣例になっています。

  

 九頭龍神社では、宮司の中村さんが掃除をしながら待っていてくれました。九頭龍大神(くずりゅうのおおかみ)と天手力男命(あめのたぢからおのみこと)が祀られているという九頭龍神社は、現存する資料によると1545年には創建されていたそう。神社って古い!

 現在24代目という宮司さんによると、檜原村には滝がたくさんあり、神社の近くにある滝に「九頭龍の滝」という名前がついたのは近年(昭和)になってから。お祭りの時などは、身を清めるために神主も滝行をしていた。なるほど〜。では、滝行のお話を教えていただけますか? え? 滝行を案内してくれるのは、九頭龍神社の宮司さんではなく、また別の人? そなの? 

 とりあえず、神社のすぐ近くにある「九頭龍の滝」を見学。たしかに滝行するには高低差が低くて、水量も少ないんだけど、上流の川に行くと冬でもウキウキするのね。マイナスイオン?

 さっそく春太は流れてきた2メートルはある竹の棒をゲット。

春太「これ持って滝行く」

 いやいや、そんな長いの車に乗せられないよ。「いや、ギリ乗っかりますよ」と、余計なこと言う石垣。いやいやいや、こんな棒、家持って帰ったらジャマなだけだって〜! 怒られるって〜。

 結局、助手席の間から後部座席の間をトランクまで通して竹の棒を乗せて(ジャマすぎる!)、滝行を指南してくれる僧侶の千葉さんと合流するため、近くにある温泉施設「数馬の湯」へ。

 

 本来は、九頭龍神社で合流し、千葉さんと一緒に参拝するんだけど、この日は法事があったため、滝行のみ指南してもらうことに。普段、千葉さんは木更津市のアウトレットの近くにあるお寺「観音寺」のお坊さんをやっているそう。

 どういう経緯で滝行の案内を? 

千葉「もともとは客として、檜原村に滝行をするために来てたんです。その時に指南してくれた師匠から『ゆくゆくは後を継いでほしい』と言われていまして。2年前から後を継ぐことになりました」

 え? 滝行の? 後を継ぐ? そもそも千葉さんは、埼玉の狭山出身で、実家はお寺ではなく工務店。公務員系の専門学校卒業後、警察官、消防士、家業の工務店を経て、お坊さんに。30歳の時に、お坊さんになるために奈良県の「長谷寺」へ修行に行ったという経歴の持ち主。その後、跡継ぎがいなかった「観音寺」の住職として赴任したのが10年前。“千葉県のお坊さん、千葉さん”の誕生である! 毎年1月にはアウトレットのすぐ裏にある「牛込ふれあい公園」で『火渡りの行』もやっているとのこと……。スゴい経歴だな! 映画になるよ! コロナ禍でしばらく滝行は休業していたのだが、緊急事態宣言が明けたのを機に再開したそうです。

 あのー、そもそも滝行って何ですか? 何のために?

千葉「かつて薬などがない時代は、神社の神主さんもお寺の住職も、病気や災害を鎮めるために、ご祈祷をするしかなかったんです。その時に、法力や験(げん)を必要としていて、そのために滝行をしていました」

 『験』っていうのは? 

千葉「超能力みたいなものです。山というのは異世界で、山の中に入って修行をすると、超能力的なものが身につくと、昔の人は本当に信じていました。その修行の1つが滝行です。ほかにも、川の中に入る『水行』などがあります」

 そういう様々な行を、奈良で修行していた時からやっていた千葉さんが、今は檜原村で滝行指南をしてくれているのだすな〜。

 でも、すみません、そこまで本気じゃないんです僕たち。2021年にいろいろあったので、2022年はいい年にしたいくらいの気持ちと、あとは正直、罰ゲーム感覚です。こんな動機で滝行をやっても大丈夫ですか? 

千葉「はい。今の時代はもう、特別な力を得るために滝行をするのではなく、人生経験として、という人が多いですね」

 や、優しい人でよかった……。滝行に来る方も様々で、精神統一をしたい観光客、企業の研修、結婚式のビデオ撮影で愛を誓う新郎新婦など。バラエティー番組の撮影もあったとか。じゃあ「こんな人はお断りします!」とかないんですか? 

千葉「この村に滝行をしに来たいと思った時点で導かれているので、私のほうからその理由や目的によって選別することはありません」

 なんてウェルカムなお坊さん! やる気が出てきた〜。では行きましょう!

 温泉から歩いて行ける距離にある、道路を渡った駐車場に車で移動。

千葉「じゃあ、この下がすぐ滝なので、これに着替えてください」

 

 と、ふんどしを渡されます。え? ここで? 横を車がビュンビュン通ってるけど……。あの〜、滝行と言えば、白い着物みたいなのは? 

千葉「あ、行衣着ます?」

 着ます着ます!

千葉「濡れると、より寒くなりますけど……」

 うーん……そうか、いや、でも着ます! 何故なら今寒いから! ちなみに、これ女性の方は着替えどうするんですか? あ、女性は温泉施設の脱衣所で水着を着て、その上に行衣着用なんですね。そりゃそうか。男ばっかりでよかった。と、速攻で車の中に入って着替えるプチ思春期の春太。大人は外でフルチン着替え……。も、もう寒い……。

 行衣の上から上着を羽織って、各々タオルやバスローブを手に、坂を下ります。

 時間は15時前。なのに、滝には太陽が届かない! 完全なる日陰! でも、そんなに大きくない滝だ。水量も少なめだし。これならいけるな。春太もウキウキ。

千葉「まずは準備運動をしましょう」

 と、片足を前に出して、「えいほ」の掛け声で、腕を曲げ伸ばし、舟を漕ぐ動きを10回。次に、反対の足を前に出して、同じように舟を漕ぐ動きを10回。

千葉「滝に打たれるというのは、一度死んで生まれ変わる、という意味があります。滝の中は黄泉の国なので、この世からあの世に舟を漕いで行くのです」

 なるほど〜。そういうストーリーが出来てるのね。え? 準備運動これだけ?

 

千葉「滝には3回入ります」

 

 マジで!?

千葉「一度目は水に慣れるため。二度目は罪、汚れ、重いものを洗い流して清め。三度目は清められた体にお恵みを頂けるようお願いする意味があります」

 な、なるほど。じゃあ、誰から入る? あ、春太入りたい? それでは片桐父子からお願いします。

千葉「あれ? 皆さん、サンダルは持ってきてません?」

 聞いてないです……。

千葉「素足だと痛いと思うので、僕のサンダル使ってください」

 と、サンダルから雪駄に履き替える千葉さん。申し訳ないです……。「ありがとう」と、速攻で履く春太。ブカブカだろう、お前! まぁ、父さんは裸足で行くよ……。

 入る前に、滝に向かって一礼。人差し指と中指で手刀を作り、「えい」と声を出して、斜めに空を切る。

 滝の中に入ったら、正面を向いて「祓いたまえ、清めたまえ」の掛け声を3回言って、出る。

 いざ、一度目。春太と並んで「えい!」と、水に足を入れた瞬間! え? これ水? 硫酸じゃない? という“冷たい”を通り越した、信じられない“痺れ”を感じつつ、息子の手前、ずんずん進みます。滝壺に差し掛かると、深さが倍増。

千葉「では、岩に背中をつけて、ヘソの下の丹田に力を入れて『祓いたまえ、清めたまえ』を3回唱えてください」

 背中をつけると、滝の水が頭から……「はぶぶぶぶぶきぶぶぶぶぶ」震えて上手く言えない。春太、大丈夫か?

「はどぅたもうむでぃ(春太もう無理)」

 

千葉「出る時は逆向きに手刀を切ってください」

 えい! 

 いやいやいやいやいやいや無理無理無理無理無理無理無理!!! 

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