人間食べ食べカエルがドラマ『青野くんに触りたいから死にたい』が持つ恐怖の魅力に迫る

インパクトの強いタイトルと衝撃的なストーリーで多くの読者を引き込んだ純愛ホラー漫画『青野くんに触りたいから死にたい』が、WOWOWで全10話のドラマとなって放送される。今回運よく一足先に鑑賞させて頂いたのだが、これが思った以上に面白く、そして怖かった! 今回はその恐怖要素に焦点をあてて、本作の魅力を紹介していきたい。

     

【執筆者プロフィール】
人間食べ食べカエル(Twitter: @TABECHAUYO 
●あらゆるジャンルのホラー映画・ドラマを網羅する敏腕ライター。人が喰べられる作品に目がない。Twitteの的確なコメントと面白いつぶやきが人気の人喰いツイッタラー。

【番組情報】
WOWOWオリジナルドラマ
青野くんに触りたいから死にたい
WOWOWプライム 午後11:30〜深夜0:00
3月18日(金)より毎週金曜放送・配信中(全10話)
※WOWOWオンデマンドでは、
3/18(金) 第1話放送終了後から1~2話を配信
4/1(金) 第3話放送終了後から3~7話を配信
5/6(金) 第8話放送終了後から8~10話を配信
公式サイト 公式インスタグラム

 

これまでずっとぼんやりと生きてきた女子高生・刈谷優里(演:髙橋ひかる)は、些細な出来事をきっかけに一目ぼれした隣のクラスの男子高生・青野龍平(演:佐藤勝利)に告白。なんと無事OKをもらい、交際をスタートさせることに成功する。しかしそれから2週間後、青野は交通事故に遭い亡くなってしまう。絶望に打ちひしがれた優里は、彼の後を追うため自らの命を絶とうとする。その瞬間、彼女の前に幽霊となった青野が現れた! しかし優里は「青野くんは幽霊だから触れないんでしょう!?だったら私が死ぬしかないじゃない!!」と、とんでもないことを言い更に取り乱してしまう! そんな彼女に「ずっとそばにいる」と言いながらなだめる青野。こうして、生きている彼女と死んでしまった彼氏の不思議な共同生活が始まった。優里は最初こそ青野に触れないことに戸惑いつつも、次第にそれを受け入れる。再び幸せな日々を取り戻したかに思えたが、ある日突然、青野はまるで悪霊のように豹変する……。 

 

原作『青野くんに触りたいから死にたい』

筆者は原作漫画が好きで、1巻から全部読んでいる。面白いと感じる要素はいくつもあるが、中でも特に気に入っているのが独特な恐怖演出だ。ユニークな設定と絡めた恐ろしい怪異が、恐怖と生理的嫌悪感を刺激する。序盤こそラブコメ成分が目立つが、青野の豹変を境に、どんどん不穏さが増していく。彼が生きている人に憑依する際の気味の悪いビジュアルも素晴らしいし、何より花など一見綺麗なものを不気味で得体のしれないものとして描くのがゾクゾクしてたまらない。四ツ首様編あたりからはもう完全にホラーである(カーテン裏に現れる影の不気味さと言ったら!)。というわけで、今回のドラマ化にあたっても一番期待していたのはホラー要素だったが、これが大満足できるクオリティーであった。 

   

ストーリーは基本的に原作と同じように進む。序盤は優里と青野が送る日常に比重を置いて描き、その端々に不安要素をちりばめながら話が進んでいく。やがて青野が優里へ憑依したことをきっかけに一気にホラー度が上がる。特に実写版青野を演じる佐藤勝利は、本作の恐怖度引き上げに大きく貢献している。一見好青年ではあるが少し他人に対して壁があるような神経質な表情を作り、彼の秘めた複雑な人間性を表現するのも見事だが、もっとも評価したいのは豹変後の演技だ。いわゆる黒青野モードになった時の無表情はゾッとするほど冷たく恐ろしい。カッ開いている目もまた怖い。実際にあの目で睨まれたら全く動けなくなるだろう。原作とはまた違う豹変の描き方だが、これはこれでヤバイ。ドラマの空気を一気に変えるほどに強烈だ。彼が初めて変わるシーンは前半のハイライト。憑依する際のおぞましいビジュアルも見事に実写で表現されている。 

 

青野に恋する女子高校生・刈谷優里(演:髙橋ひかる)

また、優里を演じる髙橋ひかるも迫真の演技で魅せる。青野の事になると余裕で自らの命を差し出す献身を超えた痛々しい破滅的な姿と、普段おっとりしているときのギャップが良い。それぞれの表情の違いは、正しく漫画の優里そのままのイメージで、これは本当にナイスキャスティングだったと思う。彼女以上にピッタリな人はいない。逸材ですよ。 

  

そんな青野と優里の関係性は、一見幸せそうに見えてその実非常に危険で恐怖に満ちている。普通の人間なら「じゃあ危険だから憑依はやめようね」となって終わりだろうが、本作の場合、優里は「青野くんは自分以外としゃべれないから可哀そう、私の体を使っていいよ」と考えてしまい、かなり簡単に身体を明け渡してしまう。その結果、怪異が増長し、より恐ろしい事態を招いてしまう。彼女の、気持ちは分かるがどこに突き進むか分からない行動が、視聴者に先を読ませずスリルと恐怖を煽る。「恋は盲目」をホラーに直結させた展開が本作のキモである。

   

引きこもりでホラー好きの堀江美桜(演:里々佳)

やがてストーリーは、生前の青野の友達である藤本雅芳(演:神尾楓珠)と、引きこもりでホラー好きの堀江美桜(演:里々佳)が加わり、青野の謎を調査するという流れになっていくのだが、ちょっとここで堀江美桜の魅力について触れておきたい。彼女は無類のホラー好きで、家では一日中ホラーを見続けている。部屋には髑髏などの置物があるし、壁という壁には心霊ビデオシリーズのマスターピース『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズや短編ホラードラマ『怪談新耳袋』のポスターが貼ってある(あれどこで手に入れられるの!?)。なんて素敵な子なんだろうか!!最初から好感度マックスである。部屋に心霊ビデオのポスターを貼っている子に悪い奴なんていないですからね。間違いないですよ、これは。普段は対人恐怖症で周りに心が開けないが、唯一友達になることができた優里とやり取りするときはウッキウキになって、彼女が家に来るときはめちゃくちゃオシャレして出迎えるところも愛おしい。作中屈指のハートフルキャラである。不穏な登場人物が大半を占める中、唯一と言って良い癒し枠だ。 

        

 

しかし、そんな美桜の家で、本作屈指の恐怖現象が襲い掛かる。彼女が家で優里を待っていると、玄関のチャイムが鳴り、インターホンの画面に優里の姿が映る。「中に入れて」と言ってくるが何かおかしい。やがて……。というところから始まる一連の流れはホラー作品をある程度見慣れていてもゾクッとすること請け合いだ。『怪談新耳袋』の中でも特に恐ろしいエピソード「訪問者」や、『本当にあった怖い話』で多くの人にトラウマを植え付けた「黒髪の女」などに代表される、昼間に一人で留守番していたタイミングで怪現象が発生するシチュエーションの系譜に、本作が名を刻んだ。これを見たらもうインターホンの電源を切らざるを得ない……。このように、本作の恐ろしいところは、青野の豹変だけでなく、そこから派生する様々な怪異が出てくるところにもある。画面奥に暗闇を映して何かが覗いているように見せるなど、幽霊がいなくても不安にさせる画作りも良い。常にゾワゾワするような不穏さを堪能することができる。 

 

『青野くんに触りたいから死にたい』は、儚い純愛の物語と鳥肌が立つ恐怖のギャップが魅力だが、それは実写化しても健在なので、原作ファンも安心してほしい。とにかくこのドラマは、怖いシーンをちゃんと怖く見せることに成功していたのが嬉しい。唯一心残りがあるとすれば、やはり時間が足りないことだろうか。1話30分弱×全10話ではまだまだ描き切れなかったことがある。ここは何とかシーズン2を作ってもらって、今回描けなかったところも実写で見せてほしい。四つ首様編以降も実写で観たい!! 今回のドラマが多くの人の目に触れて、話題になってくれることを望んでいる。このコラムが少しでもその力になれば幸いだ。 

<了>

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