伊藤万理華

伊藤万理華 書き下ろしコラム「ただいま」【『WOWOWオリジナルドラマ 青野くんに触りたいから死にたい』特集】

大人気漫画『青野くんに触りたいから死にたい』がWOWOWにて連続ドラマ化。本日3月18日の第一話放送を記念して、原作のファンであり原作者・椎名うみ先生と交流も深い女優・伊藤万理華が原作の想いを綴った書き下ろしコラムを寄稿。

本コラムの全文掲載&ドラマ版の魅力を紹介するTV Bros.2022年5月号(3月30日発売)の発売に先駆けて、TV Bros.WEBではコラムを先行公開。

 

 

@乃木坂46LLC

【Profile】 
伊藤万理華(いとう・まりか)
●1996年2月20日生まれ、大阪府出身。2011年に乃木坂46に1期生メンバーとして加入。2017年12月にグループ卒業後、同年に初の個展「伊藤万理華の脳内博覧会」を開催。2020年に開催したPARCO展「伊藤万理EXHIBITION“HOMESICK”」のために『青野くんに触りたいから死にたい』の原作者である椎名うみが短編『おかえり』を描き下ろし、コラボレーションした。ドラマ『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系)で地上波連続ドラマ初主演。第13回TAMA映画賞では、主演映画『サマーフィルムにのって』『息をするように』で最優秀新進女優賞を受賞した。映画『もっと超越した所へ。』が2022年秋に公開予定。 

【番組情報】
WOWOWオリジナルドラマ
青野くんに触りたいから死にたい
WOWOWプライム 午後11:30〜深夜0:00
3月18日(金)初回放送スタート(第1話無料放送)
※WOWOWオンデマンドでは、
3/18(金) 第1話放送終了後から1~2話を配信
4/1(金) 第3話放送終了後から3~7話を配信
5/6(金) 第8話放送終了後から8~10話を配信
公式サイト 公式インスタグラム

                                                    


「ただいま」

文/伊藤万理華

 

 

 

時折、会いたくなる人がいる。 
それが椎名うみさんである。 

 

私がこの作品に出会ったのは、2018年。 
漫画を読むことは昔から好きだ。 
好きな作品は言葉を音読して読むこともある。 
作品の住人になりきって読むことは、
10代の頃から内緒の趣味だった。 

 

漫画アプリに無料で公開されていたこの作品。 
何気なく読んだ時、見つけてしまったと思った。 
コミック化した時、すぐ本屋で手に取った。 
合わせて短編集「崖際のワルツ」も購入して読んだ。 

 

椎名うみさんの作品は、淡々と進む。 
生活音のない間が、奇妙な空気をつくる。 
その真ん中に女の子が立っている。 
彼女たちにとっては普段の、普通の景色なのに、
読んでいると違和感を感じてしまう。 

 

この違和感はなんなんだろうか? 
なのに、私はこの世界の住人なんだと思ってしまった。 
優里ちゃんのこのことばに共感するとか、
そんな大それたことは言えないけど、
私はこの子の近くにいて、つながってるように思える。 

 

初めての恋人、青野くんが死んじゃって
幽霊になって共に過ごしていくことで、
優里ちゃんは初めて、
家族のトラウマと向き合うことになる。 
その、身内の中で起きている独特の空気が
こちらまで伝染してくる。 
自分にとって当たり前だった環境は、
当たり前ではないことに気づくのだ。 

 

幽霊の青野くんに捧げることが優里ちゃんの生き甲斐で、それはどうしようもなく滑稽で救いようがない。 
それでも家族と対峙し、出会った友達と向き合うことで
彼女は強く生きている。 
誰とも関わらなかった彼女は、
自分の意志を言葉にするようになる。 
その言葉は、とても恥ずかしい。 
恥ずかしげもなく真っ直ぐ言うから恥ずかしい。 
私はそんな優里ちゃんを同じ世界線で遠くから
眺めながら羨ましく思うのだ。 

 

青野くんに触りたいから死にたいの世界に
どっぷり浸かってから1年。 
自分は今、なにと向き合えているのかわからず
未来を漠然と妄想している時。 
なにがなんだかわからないけど衝動的に、
救いの手を求めるように私はうみさんに会いにいった。 

                             

どう思われても良いから、この作品に救われていること、
あなたのことが知りたくなったこと、
私のこのぐちゃぐちゃになったなにかについてを話した。 
今考えると当時の行動力に驚くのだが、
うみさんは受け入れてくれた。 

                    

うみさんは優里ちゃんで、
優里ちゃんはうみさんなんだ、
と思った。 

 

曖昧で、ぐちゃぐちゃに丸まっていた糸を
ひとつひとつ解くように、回収していくように、丁寧に、
心を素っ裸に向き合った。 

 

言えなかった気持ちは、
うみさんと出会ったことで浄化された。 
内緒にしたくなるこの恥ずかしくて醜い気持ちを、
ひとつの物語にしてくれた。

 

 

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