注目バンド・オレンジスパイニクラブがアルバム『hodgepodge』をリリース。メジャーデビュー以前からファンの間で広く愛されている楽曲を中心に、新曲もプラスするという布陣で挑む今作にかける思いをメンバー全員に聞いた。
取材&文/小林千絵 撮影/池野詩織
──今作『hodgepodge』は、再録5曲と、新曲2曲の合計7トラックでの構成です。今回、再録+新曲という形で作品を生み出した理由から教えてもらえますか?
スズキナオト(Gt/ Cho) 今回入っている再録曲はどれも廃盤になってしまって、配信もされていないし、映像も公開されていない。どこでも聴くことができない状態なので、ぜひこのタイミングで聴いてほしいなという気持ちがあって。もともと再録曲だけのアルバムを作りたいと思っていたのですが、せっかくなので新曲も入れて、タイトル通り「hodgepodge」(ごちゃまぜ)なアルバムにしました。
──過去の曲を出そうと思ったのは、バンドの状況が変わったり、メジャーデビューしたりして、リスナーが増えていることを実感しているから?
ナオト いや、そうではないですね。本当に、もうどこでも聞けない曲たちなので、いずれどんな状況であれ、再録アルバムは出したいなと思っていて。それがこのタイミングだったというだけです。
──では、まずはそんな再録5曲について聞かせてください。改めて再録したことで見えてきた自分たちの変化、もしくは変わらないものは何でしたか?
ナオト 新曲の「7997」は僕が作詞をした曲で。その曲と、例えば「モザイク」を比べると、「モザイク」は絶対に今じゃ書けない歌詞だなと思いました。この曲は19歳、20歳頃に書いたんですけど、そのときならではの若さを感じるというか。まあ今も若いんですけど(笑)。10代のセンチメンタルな時期にしか書けない歌詞だなと、改めてこの曲と向かい合ってみて思いました。それと比べて、「7997」はすごく今のオレンジスパイニクラブっぽい曲。その対比が面白いです。
──「今じゃ書けない」と思ったのは、どうしてですか?
ナオト 今回、再録曲と新録曲を同時にレコーディングしていて気づいたんですが、言いたいことが変わってきたんだと思います。昔は多少なりとも怒りが大きかったんですけど、今は穏やかになったので(笑)。
──再録するにあたって、アレンジで意識したことはありますか?
ナオト それこそ「モザイク」は、元の音源からめちゃくちゃ変わってますね。
スズキユウスケ(Vo/ Gt) 完全にライブに寄せてるよね。
ナオト ほかの曲もテンポが速くなっていて。だから「再録」といっても、ライブの空気感をパッケージしたという感じですね。
ゆっきー(Ba/ Cho) 「今やったらこうだよ」みたいな。個人的には、録ったときの気持ちを思い出しながら録ったんですけど、みんな演奏もうまくなってるし、成長したなと思います。しかも、当時は新曲だったから「ちゃんと弾かなきゃ」っていう気持ちが強くて。今回は余裕があって、勢いが出せた気がする。
ゆりと(Dr) 僕は、当時と今で好きな音楽が変わってきていて。今の自分で解釈し直して、今の自分がやったらこうなったという感じです。昔はそれこそ銀杏BOYZとかを聴いていたんですが、最近は星野源さんとか。河村”カースケ”智康さんのドラムが好きでよく聴いています。
ユウスケ 僕はゆっきーとまったく同じで。今回は余裕があったので、歌も楽器も「怖いものはないな」という気持ちでレコーディングできたなと思います。
──ユウスケさんはご自身で作った曲を歌うわけですが、当時書いた歌詞を改めて歌い直すという点においてはいかがですか?
ユウスケ 「懐かしいな」と思いました。ライブ中はなぜか当時のことを全然思い出さないんですけど、レコーディングでは「こういうときあったな」といろいろなことを思い出して。
──ナオトさんは、歌いたいことが変わってきたとおっしゃっていましたが、ユウスケさんはそういうことを感じましたか?
ユウスケ あんまり感じないかな。本当にそのときどきで思ったことを歌詞にしてるだけという感じですね。
ナオト 今回、再録の5曲も古い順に並んでるんです。だから意識してなくても、言いたいことは変わっているんだろうなと思いますね。だって「7997」と「急ショック死寸前」なんて、この中で一番新しい曲と、一番古い曲ですからね。歌詞だけじゃなくて、曲調も全く違いますし。
ユウスケ 確かにね。だって10代のときに書いた歌詞だし。
──では、そんな新曲について聞かせてください。まずは1曲目「7997」。この曲はノスタルジックで、今のオレンジスパイニクラブらしい曲ですね。どのようにしてできた曲なのでしょうか?
ナオト この曲は『#居酒屋新幹線』のエンディングのお話をいただいてから作った曲で。電車というテーマなどでドラマにも絡めつつ、“一期一会”を歌っています。2番のAメロでは緊迫感を持たせたり、長い韻を踏んでみたりと、遊び心も入れています。
──タイトルの「7997」という数字は、切符に印字されている通し番号のイメージですか? 最初と最後の数字が同じだと“両想い切符”なんて呼ばれたりしましたけど。
ナオト そうです。1番のサビまでできたところで、このタイトルを思いついて。2番以降は、このタイトルを意識しながら書いていったので、<握り潰した切符の7が滲んだって>とか、伏線回収ができたような気がして、書いていて楽しかったですね。
──エリザベス宮地さんが監督を手掛けたミュージックビデオも素敵ですよね。
ゆっきー めちゃくちゃいいですよね。曲に合っていて。全編、16ミリのカメラで撮ってくれて最高でしたね。僕、ああいうの大好きなので気に入っています。
──舞台は皆さんの地元の電車だそうですね。
ユウスケ そうなんです!……乗ったことなかったですけど(笑)。でも雰囲気も曲と合っていて良いですよね。
──もう一つの新曲「リルメラン」は「Follow Your Heart & Music Presented by RECRUIT」の参加曲です。
ユウスケ 自分なりの応援歌を書こうと思ったのですが、僕にとって応援歌って初めてで。あまり寄せすぎるのもよくないなとも思ったので、自分や自分達に重ねながら書いていきました。
──それこそ過去に作った曲が5曲並んだあとに、この曲が出てくるので、オレンジスパイニクラブの未来への希望の歌のようにも感じられますよね。
ユウスケ そうですね。これは本当に“降りてきた”んですけど、1行目に「覚悟」という言葉が出てきて。それこそ昔の曲を改めて録って、新しい気持ちでやっていこうと決意したような気持ちになりました。
──バンドの新たな決意も込めた『hodgepodge』リースして、この先のオレンジスパイニクラブはどんな活動をしていく予定でしょうか?
ユウスケ 新たに曲作りをして、オール新曲でフルアルバムを出せるようにがんばろうと思います。
ナオト 「いつか出したい」と思っていた再録盤を出せたので、もう何の気負いもなく、どんどん新しいことをできるなという気持ちです。
ゆっきー 「リルメラン」で初めてアレンジャーさんに入ってもらったんです。そこで各々の手癖もわかったし、幅が広がった感じもするので、これからはその“広がった幅”を生かしてがんばっていきたいですね。
──それこそ応援歌が作れるようになったことも、幅のうちの1つですしね。
ユウスケ はい、自分的にはめちゃめちゃデカイです。
ゆりと でも今回再録した5曲だけじゃないんですよ、彼らが作ってきてくれたいい曲は。だから機会があったらまた再録もやってみたいなと、僕は思っています。
──今回のインタビューでは、音楽以外で夢中になっているカルチャーも教えてもらいたいと思います。
ユウスケ 俺ら兄弟(スズキユウスケ、スズキナオト)はサウナだよね。
ナオト そうだね。まだ白帯ですけど。
ユウスケ 僕の方が若干先輩です! ライブで遠征するたびに、二人でその土地にあるサウナに入っています。
ゆっきー 俺は映画とキャンプですね。映画は80年代、90年代の映画が好きで。最近見た中だと、『夏物語』というフランス映画がすごくよかったです。内容についてはノーコメントで(笑)。映像がすごくきれいです。
ゆりと 僕は……筋肉ですかね(笑)。
──それは筋トレということ?
ゆりと 筋トレというか、健康維持。筋トレしてビタミン剤を飲んで……うん、健康維持ですね。
ゆっきー でもずっとおなかぽよぽよなんですよ(笑)。
ユウスケ たぶん俺らの前でしか筋トレやってないんです(笑)。
ゆりと いやいや、家でもやってますよ! キッカケはなかやまきんに君のYouTube(「ザ・きんにくTV」)。ハマって調べていくうちに筋トレだけじゃなくて食事制限……はしないんですけど(笑)。
ナオト 昨日、パスタ4束食べてたもんね(笑)。
ゆりと 最近、パスタにもハマってるんです……(笑)。
オレンジスパイニクラブ『hodgepodge』
配信中/WARNER MUSIC JAPAN
オレンジスパイニクラブ 公式サイト
オレンジスパイニクラブ 公式Twitter
配信リンク:https://orangespinycrab.lnk.to/hodgepodge
Instagram:https://www.instagram.com/orangespinycrab.jp/
MUSIC記事一覧はこちら
投稿者プロフィール
- テレビ雑誌「TV Bros.」の豪華連載陣によるコラムや様々な特集、過去配信記事のアーカイブ(※一部記事はアーカイブされない可能性があります)などが月額800円でお楽しみいただけるデジタル定期購読サービスです。
最新の投稿
- テレビブロス10月号あいみょん特集号2024.09.13あいみょんインタビュー「ニャーアルバムって呼んでるけど意外と浸透してないかも(笑)」【TV Bros.10月号あいみょん特集】
- テレビブロス10月号あいみょん特集号2024.09.12表紙は猫のひげポーズ! 表紙&48ページで総力特集「TV Bros. 10月号 あいみょん特集」 9月12日発売!
- 『ありえ~る・ろどんのwebでも星に聞いてくれ!』2024.09.01【毎月1日は星占いの日!】2024年下半期の運勢 【ありえ~る・ろどんのWebでも星に聞いてくれ!】
- 感度ゼロからのスタート2024.09.03ミキ・亜生によるカメラ連載第11回「パソコンを買ってみた」後編