リクオ PART2「このアルバムには自分にとってタイムリーな歌を収録しています」       【不定期連載「旅と酒とブルーズと」第1回】

自ら築いた草の根のネットワークを頼りに全国のライヴハウスやカフェ、飲み屋などをツアーして回り、人によっては年間100本を超えるライヴを行なう“ツアー・ミュージシャン”たち。笑いと涙、心の痛み、そしてささやかな希望が息づく彼らの歌には、たまらなく人懐っこい魅力がある。ライヴと酒を通じて音楽の歓びを伝える、愛すべきツアー・ミュージシャンたちを紹介する不定期連載、第1回は6日連続でお届け。2日目はリクオ編PART2。

取材・文/染野芳輝

リクオ編PART1はこちら

#1 リクオ(PART2)

ニュー・アルバム『リクオ&ピアノ 2』が生まれた背景や長く続けてきたツアー暮らしのありようを語ってもらった1日目に続く2日目は、コロナ禍という厳しい状況の中で制作した新作についてじっくりお聞きしたいと思う。筆者が今、最も信頼しているミュージシャンのひとりであるリクオの音楽を理解する一助になれば幸いだ。

ニュー・アルバムには、手紙的な要素や旅の空気感、そして酒場の空気感みたいなものも入れたいな、と

ーーニュー・アルバム『リクオ&ピアノ 2』についてお聞きします。まず1曲目「イマジン」。ジョン・レノンの名曲に忌野清志郎が日本語の歌詞を付けたRCサクセションのヴァージョンを、さらにリクオさんなりにアレンジ。ライヴでよく歌っていて、とても印象的でした。清志郎さんのツアーに参加したこともあるわけですけど、やはり清志郎さんからの影響は大きい?

それはもう。リスナーだった頃から大好きだったし、憧れもありました。で、RC解散後、ソロになった清志郎さんのツアーに2年弱、参加させてもらったんですけど、思った通りの素敵な方でしたね。ユーモアがあって優しいし、音楽に対して貪欲で、音楽にときめき続けた人。何よりも歌チカラの凄さに圧倒されましたね。

ーー「イマジン」をこういう形でカヴァーしようと思ったのは?

このアルバムには自分にとってタイムリーな歌を収録していて、その象徴的な曲として「イマジン」を選びました。ここ10年ぐらいかな、世の中の想像力が欠如してるなぁって思うことが多くて。なんでも白か黒かに決めつけて、ギスギスしてる。ちょっと想像力を働かせてみれば、対立や分断ではなく、相互理解へとつながるんじゃないか。想像する心のスペースを持とうよ。そんな思いから「イマジン」を。ただ、そのままのアレンジじゃなくて、今の状況を反映した歌にしたいと思ったので……。

ーーそれでマイナー・キーにアレンジしたわけですか。

実はキーはマイナーじゃなくて、マイナーに響くようなコード使いにしてるんですよ。結果、今の緊張感とか不穏な空気を曲に反映させられたんじゃないかと思ってます。

ーー確かに。このちょっとダークな響きが曲の意味を良く伝えていると思う。

だったらいいんですけど。やっぱり、自分がやりたいことを思い通りにやる部分と、コミュニケーションの一環としての表現。両方を大事にしたいと思ってますから。それとね、状況を反映させるという意味では、このアルバムは手紙の要素が強いなと思うんですね。

ーーそうですね。会えなくなってしまった人に宛てた私信のような。

そうそう。それも現在の状況を反映している。そうした手紙的な要素や旅の空気感、そして酒場の空気感みたいなものも入れたいな、と。

ーーおお! 「旅と酒とブルーズと」というテーマにぴったりだ。

でしょ(笑)?

『リクオ & ピアノ 2』
HeLLo RECORDS HR-009
3,080円(税込)

1 イマジン(ジョン・レノン&オノ・ヨーコ 日本語詞:忌野清志郎)
2 友達でなくても
3 新しい町(下田卓)
4 短編映画
5 実験4号(大木温之)
6 バータイム・ブルース
7 ランブリンマン
8 また会えてよかった
9 かけ替えのない日々
10 満月の夕(詞:中川敬 曲:中川敬/山口洋)
11 君を想うとき

 

ーー唯一「ランブリンマン」をセルフ・カヴァーしたのは、旅の空気感を入れたかったからなんですね?

そうです。コロナ禍で思うようにツアーに出られなくなって、とっても物足りない。またツアーに出たいという思いをライヴの定番曲である「ランブリンマン」に託したという。

ーーこの曲や「新しい町」はめちゃ前向きというか、明るく弾けてますよね。とくにピアノが。

ニューオーリンズ・スタイルのピアノを思いっきり弾いてます。

ーー一方、「バータイム・ブルース」などはまさに酒場の空気感。

4曲目の「短編映画」からピーズのカヴァー「実験4号」、「バータイム・ブルース」の流れがそうですね。酒場で酔っ払って歌ってるイメージ。実際、ちょっと飲んでレコーディングしました(笑)。「実験4号」はニューヨークの場末のピアノマン、要は大ブレイクする前のビリー・ジョエルのイメージですね。「ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド」とかのね。それとトム・ウェイツのイメージも入ってるかも。

ーー「バータイム・ブルース」はランディ・ニューマン。

元ネタはランディ・ニューマンの「ローリン」という曲で、あれも酔っ払ってる男の歌だし。揺れながら演奏してる感じが出てるんじゃないかな。

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