「FEARLESS」になれるまでは「あいまいでいいよ」。自分に自信を持つのは難しい【女性アーティスト編】TV Bros.WEB初夏のMUSIC特集05

最近なぜか女性アーティストばかり聴いています。単純に良作が多いので自然と印象に残るのでしょうね。

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文/宮崎敬太

その筆頭が羊文学です。バンド自体は知っていたのですが、ちゃんと聴いたのは「光るとき」がアニメ『平家物語』のオープニングテーマに起用されたのがきっかけ。アニメ本編はもちろんオープニングも素晴らしかったので、羊文学のほかの作品も聴いてみたらどれも大好きでした。ありていに言うと塩塚モエカさんの声と作るメロディー、歌詞、歌い方、バンドのタイトなアンサンブルが好み。特に好きだったのはTHE FIRST TAKEでプレイした「あいまいでいいよ」。この曲を聴いてると10〜20代を思い出します。あらゆることに違和感を抱き、それを言語化もできずモヤモヤしていた頃。そんな時、僕はよくeastern youthの「角を曲がれば人々の」を聴いていました。表現は違うけど両者には同じ信念を感じます。それを端的に言えば「お前はお前であれ」。自分が理解できない気持ちを誰か他人の言葉で上書きしなくていい。羊文学はそれを恋愛で、eastern youthは夕暮れ時の街にそれぞれ例えて歌っていると僕は解釈しました。人の気持ちは流動的で、複雑で、多層的。だから明確な答えはない。どんなに言葉を尽くしても一側面しか描けない。誰にもわからないからこそ、自分だけは自分を信じる。羊文学を聴くと元気が出ます。「まだ負けねえぞ」って気持ちになるんです。

羊文学 – あいまいでいいよ / THE FIRST TAKE

僕は小袋成彬さんの大ファンなのですが、そういえば相棒のYaffleさんをほとんど知らないことに気づきました。とりあえずサブスクでプレイリストを探しぼんやり聴いているととある楽曲が耳に止まりました。それがadieuの「灯台より」です。知らないアーティストでした。なんだこの声は。とても透き通っているのに、歌には巨大な情念を感じる。調べるとすぐに女優・上白石萌歌さんのシンガー活動での名義であることを知りました。この曲の作詞作曲は柴田聡子さん。おそらく情念の正体は柴田さんだと思う。この曲は読書する恋人の膝の上でうたた寝する主人公の心情を歌っています。他愛のないワンシーン。なのに。「息をとめて/苦しくなって我慢できなくなるまで/生きるように仕向けて/なんの理由もないままに」など不穏なワードが並ぶ。柴田さんの言葉を萌歌さんが歌うと単語そのものがもつ言霊が引き出される。本来ほんわかとしたラブソングであるはずなのに、なぜか見てはいけないシーンを目撃してしまったかのような気まずさもある。Yaffleさんは編曲とピアノで関わっていて、2人が紡ぐ音楽の魔法を最大化させる演出をしています。adieuもライブで見たい。ちなみに僕は「灯台より」を見つけた時、衝撃的すぎて2〜3日くらいこの曲だけをリピートしていました。小袋さんもadieuをプロデュースしてくれないかな。

adieu [ 灯台より ]

IVEはデビュー曲「ELEVEN」が大好きだったんですが、本格的にハマったのは次の「LOVE DIVE」でした。曲はもちろんかっこいいんですが、それ以上にIVEに興味が出てきたのは公式がツイートしたショート動画でした。日本人メンバーのレイさんが「시작하겠습니다.(始めましょう)」と言って、他メンバーのティザー写真のポーズを真似する。ただそれだけ。でも面白くて何度も見てしまう。そこからYouTubeでMV以外の動画もディグり出します。メンバーのキャラがわかってきました。「リーダーのユジンとセンターのウォニョンはIZ*ONEだったんだ」「しかも2人はIZ*ONEではマンネズだったんだ……」。その頃からIZ*ONEの動画がやたらとオススメされるようになっていました。ある日、その中の一個を再生しました。すると気になる女性が……。ウンビ。IZ*ONEのリーダーです。歌もダンスもうまくて面白くて、姉御肌の性格も良い。でもなんか見たことあるなと思ったら、ちょうど「Glitch」というソロ曲でカムバしていて。IVEのウォニョンがSBS人気歌謡のMCをしてるので、絡んで楽しそうにしてた動画を見てたんです。で、聴いてみるとめちゃくちゃかっこいい。UKガラージっぽいビートにアレンジされたK-POPにあまりない気もしました。IVE、ウンビともに曲もキャラも良い。2人は元IZ*ONE。そう。僕の目の前には「Produce48」という底なし沼がグツグツと音を立てながら手ぐすね引いているのでした。

[단독샷캠4K] 아이브 ‘LOVE DIVE’ 단독샷 별도녹화│IVE ONE TAKE STAGE│@SBS Inkigayo_2022.04.10.

권은비(KWON EUN BI) ‘Glitch’ MV

僕はなんとか「Produce48」の動画を入手しました。周りにサバイバル番組好きチングはたくさんいますが、無意味にへそ曲がりな僕は「周りが好きなら俺はいい」と思ってたし、「音楽好きプライド」が崩壊するのが怖くてまったく見ませんでした。だけど乃木坂46でタガが外れた僕にもう怖いものはありません。同じアホなら踊らにゃ。で、見ましたよ。もうね。最高でした。誰が落ちるかわかって見てても面白い。曲も重要だけど、アイドルは「人」が同じくらい大事。「人」を好きになる。プデュ48を見てるうちに感情移入する練習生が出てきました。僕が応援してたのはITZYのチェリョンのお姉さん・チェヨンと、ホ・ユンジン。チェヨンはIZ*ONEになれたけどユンジンは脱落しました。わかってても残念でした。プデュ48を一休みして「そういやそろそろ宮脇咲良とウォニョンがいるLE SSERAFIMがそろそろデビューだなー」と思いインスタを見ると……。「あれ? ユンジンいるじゃん!」と気づき、その瞬間にルセラ(LE SSERAFIM)を推すことが確定しました。

LE SSERAFIM FEARLESS OFFICIAL M/V

僕は今IZ*ONEにハマりまくっています。改めて人は国なんかに縛られないと思ったし、政治でなく文化こそが人をつなげると強く感じました。さらにディグの中で本田仁美さんのインタビュー記事とも出会いました。彼女は「コツコツが勝つコツ」と話していました。ユンジンもプデュで脱落した時は絶望しただろうけど、目の前の小さな課題をコツコツと一つずつクリアしてLE SSERAFIMという大きな舞台にたどり着いてる。

「コツコツが勝つコツ」。「FEARLESS」になれるまでは「あいまいでいいよ」。自分に自信を持つのは難しい。だって誠実な人ほど自分の醜さをよく知ってる。確かに(あなただけが知る)醜さを一夜で変えることはできない。でもコツコツやれば「FEARLESS」になれる。才能よりも努力。だからMVでLE SSERAFIMの5人はトレーニングしてる。「FEARLESS」になるまで自分の醜さは曖昧でいい。フォーカスしないのも努力。目の前のことを実直にコツコツと。落ち込んだ気持ちなんてすぐに忘れちゃいます。「Produce48」、IZ*ONE、IVE、LE SSERAFIMを経て、そんなことを感じた2022年初夏です。

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