「このマンガがすごい!2017」オンナ編1位に輝いた漫画『金の国 水の国』がアニメ映画化。『時をかける少女』『サマーウォーズ』など数々の名作を世に送りだしたマッドハウスが手がけることもあり、映画化の発表時から大きな期待をかけられてきた今作が遂に今月1月27日より劇場公開を迎える。
TV Bros.WEBでは今作公開を記念して、3日連続で今作関係者へのインタビューを公開。2021年10月に実施した原作者・岩本ナオ先生へのインタビューでは本作が誕生した経緯を語ってもらったが、本企画では主演声優の浜辺美波、監督を務める渡邊こと乃、劇伴と主題歌を手がけたEvan Call&琴音の3組にそれぞれの立場から今作の制作裏話を語ってもらった。
1日目に登場するのは主人公・サーラを演じる浜辺美波。おっとりしながらも芯の強さを感じられるサーラの声を務める彼女が、収録の裏話とともに、声優業への想いを語った。(インタビューの最後には直筆サイン入りポラの抽選プレゼント企画も実施中。詳しくは【プレゼント情報】欄をご覧ください。)
取材・文/編集部
撮影/倉持アユミ
浜辺美波(はまべ・みなみ)
●2000年8月29日生まれ、石川県出身。2023年はNHK連続テレビ小説『らんまん』(2023年度前期放送予定)映画『シン•仮面ライダー』(2023年3月公開予定)などが控える。
【映画『金の国 水の国』3日連続インタビュー】
DAY1 浜辺美波
DAY2 渡邉こと乃監督
DAY3 Evan Call& 琴音
「強さの上に優しさがあることは忘れないでいようと思いました」
ワンピース HeRIN.CYE/バロックジャパンリミテッド(☎︎ 03-6730-9191) スタイリスト/瀬川結美子 ヘアメイク/進藤郁子 (資生堂)
──原作は1巻完結でありながら「このマンガがすごい!2017」オンナ編で1位に輝いた人気作。原作を読んでみて、どんな印象を受けましたか?
岩本ナオ先生の作品では『マロニエ王国の七人の騎士』は読んでいましたが、『金の国 水の国』は今作のオファーをいただいてから拝読しました。
私が演じさせていただいたサーラはよく描かれるような高飛車でツンツンしているお姫様ではなくて、どんな人でも少し話せば彼女の優しさがすぐに伝わるほど人柄が温かい女の子。1巻完結ながらサーラのキャラクター性が伝わるのは岩本ナオ先生の凄さだと思いました。
──その原作のイメージをもって、収録の際にはどんなことを意識されましたか。
サーラのおっとりとした雰囲気が声からも滲み出るようなイメージがあったので、その穏やかな印象を与えられたらと心掛けていました。
その穏やかさの一方で、サーラはおっとりしているけれど決してお馬鹿さんではない。自分が一国のお姫様であるというその立場を分かっていて、その役割を全うするためにどんなことがあってもニコニコしている。そんな強さの上に優しさがあることは忘れないでいようと思いました。
──収録はいかがでしたか?
原作を読んでいる時は世界観に入り込むことができて、自分の頭の中でサーラが喋っている感覚があったのですが、いざ収録現場に行って大きなスクリーンで奇麗なアニメーションの映像を見た時にもう分からなくてしまって。ナランバヤル役の賀来さんが来るまでに一人で収録していたのですが、序盤は凄く苦戦して、何度も録り直しました。
──もう一人の主人公であり、サーラと共に偽りの夫婦を演じることになる<水の国>の建築士・ナランバヤルの声を賀来賢人さんが担当します。賀来さんとの収録はいかがでしたか?
賀来さんは収録初日からあのナランバヤルのクセのある声が出来上がった状態でいらっしゃったので、とてもびっくりしました。賀来さんがお越しになるまで一人で収録していて分からなくなっていたのですが、賀来さんに「難しいよね〜」と寄り添うようにお話ししていただて。同じ俳優同士ということもあり、一人のシーンよりもナランバヤルとの掛け合いのシーンはやりやすさを感じました。逆にサラディーン役の神谷浩史さんがいらっしゃると、私も「あ、神谷さんだ…!」とガチガチに緊張してしまいました(笑)。
ナランバヤルが国の在り方を説くシーンは、普段のナランバヤルの様子とはまた雰囲気がガラッと変わって。あのシーンの賀来さんのお芝居には圧倒されました。長いセリフにもかかわらず最初のテイクから一切噛むことがなく抑揚もついていて完璧だったんです。それは完成した作品でも見どころの一つだと思いますし、私にとってもお気に入りのシーンです。
──サーラはナランバヤルに強く惹かれますが、浜辺さんはナランバヤルについてどんな印象を持ちましたか?
ナランバヤルは自分の賢さを決して周りにひけらかさず、その使いどころを見誤らない。そのこと自体が賢いなと思いました。おそらく水の国>の人々はナランバヤルが本質的に賢い人間であることに気づいていなくて、口達者なお調子者の青年とだけ思っている。だけどナランバヤルは大切なものを守ろうとする時に、まるでスイッチが入るかのように、その賢さを使うところがかっこいいなと思いました。
また、その知性が正しい方向のために使われているのは、ナランバヤルが家族想いであり、森に住む動物や敵国のサーラにも優しさを向ける心があるからこそ。それが何よりも素敵だなと思いました。
──そんなナランバヤルもサーラの「家族(猫)の名前にオドンチメグ(星の輝き)と名付ける人に、悪い人はいません」という言葉に心を動かされる。二人がお互いのルックスや地位ではなく、それぞれの人間性に惹かれあっているのは素敵な関係性ですよね。
考え方や心根に惹かれあっている二人だから、たくさんの読者の方々から支持されているんだと思います。物語が終わった後も、その関係性がずっと続いていく様子を想像することができるんです。
実写作品の映画やドラマでも台本では描かれていないその後について考えることがあるのですが「この物語では彼らの行く末は描かれていないけど、二人の関係性はこれから変わっていくのかもしれないな」と感じる作品も中にはあるんです。それはその作品の一つの良さだと思うのですが、ナランバヤルとサーラはこの瞬間だけではなくてこれから時間を重ねても揺らぎない関係性を築けていると感じられる。それは、この作品だからこそ、この二人だからこそだと思います。
「声優は“表現者”でありながら“技術者”でもある」
──過去には『HELLO WORLD』『名探偵コナン 緋色の弾丸』等でも声優としての経験がありますが、今作で初めて主人公の声を務められます。登場シーンも当然多くなるわけですが、手応えはいかがですか?
私は声優のお仕事をコンスタントにしているわけではなく、毎回が何年ぶりというペースでアニメーション作品に参加させていただいているので、過去の経験が活かされるというよりも毎回イチから取り組んでいるという気持ちに近いです。そして毎回アニメーション作品に参加する度に「声優と俳優は全く違う職業だな」と感じます。今作でも神谷さんなどプロの方々のお仕事を目の前にしていて、声優さんは“表現者”でありながら“技術者”でもあることを感じました。
俳優として物語のあらすじを紹介するためにモノローグを録ることや、ナレーションのお仕事をいただくことがありますが、アニメーションは絵の動きにあわせて感情をセリフにのせないといけない。その技術に圧倒的な差を感じます。それに追いつくには場数も必要だと思うのですが、その場数もなかなか踏める機会が少ないので、技術を鍛錬できない。そこにもどかしさも感じます。
特に今作は登場シーンが多いということもあり、泣きながらやっていました(笑)。実は、私は無音の環境が苦手で、一人の収録の時は、アフレコスタジオでブースにいる時、心細くて「わからないよ〜、暗いよ〜」みたいな(笑)。台本も上下巻あったので「終わるのかな、これ?」と思いながら落ち込んだこともあったのですが、スタッフの皆さんがとても優しくて。私が分からなくなってしまった時には、音響監督の方がすぐに入ってきてくださって、寄り添ってお話ししていただきました。そういった優しさに触れたことで、収録が進むにつれて徐々に声が柔らかくなっていると思います。
──今後も声優としてのお仕事を続けていきたい気持ちはありますか?
私自身、アニメーションが好きだからこそ「またすぐにやりたいです!」とは、なかなか言えないかもしれません(笑)。何回やっても慣れないですし、私のせいで作品が台無しになるんじゃないかなと考えてしまって、不安で収録の前日はいつも眠れないんです。
──しかし予告編のコメント欄を見ても浜辺さんの声のお芝居への評価が非常に高い。そういった反響はどのように捉えられていますか?
自分では作品を見すぎていて客観的には分からなくなっているのですが、監督から「声がすごくいいから」とおっしゃっていただくことがあって、それはとてもありがたいです。
このような声に特化したお仕事をすることで自分の声についての課題点が見つかるんです。例えば「私の声って大きい声が出づらいな」とか「届きにくい声だな」と感じられるのもありがたいことだなと思います。特にナレーションの時に、ゆっくり話すことや声の出し方に意識できるようになったのは、こういったお仕事の経験させていただけるおかげだと思います。
【作品情報】
映画『金の国 水の国』
公開日:2023年1月27日(金)
原作:岩本ナオ「金の国 水の国」(小学館フラワーコミックスαスペシャル刊)
声の出演:賀来賢人、浜辺美波、戸田恵子、神谷浩史、茶風林、てらそままさき、銀河万丈、木村昴、丸山壮史、沢城みゆき
監督:渡邉こと乃
脚本:坪田文
音楽:Evan Call
テーマ曲(劇中歌):「優しい予感」「Brand New World」「Love Birds」
Vocal:琴音(ビクターエンタテインメント)
アニメーションプロデューサー:服部優太
キャラクターデザイン:高橋瑞香
美術設定:矢内京子
美術監督:清水友幸
色彩設計:田中花奈実
撮影監督:尾形拓哉
3DCG監督:田中康隆、板井義隆
特殊効果ディレクター:谷口久美子
編集:木村佳史子
音楽プロデューサー:千陽崇之、鈴木優花
音響監督:清水洋史
アニメーションスーパーバイザー:増原光幸
プロデューサー:谷生俊美
アソシエイトプロデューサー:小布施顕介
アニメーション制作:マッドハウス
配給:ワーナー・ブラザース映画©岩本ナオ/小学館
©2023「金の国 水の国」製作委員会
<ストーリー>
敵国同士の2人が偽りの夫婦に!?2人だけの“小さな嘘”は、国の未来を変えるのか――。
100年断絶している2つの国。“金の国”の誰からも相手にされないおっとり王女サーラと“水の国”の家族思いの貧しい建築士ナランバヤル。 敵国同士の身でありながら、 国の思惑に巻き込まれ“偽りの夫婦”を演じることに。深刻な水不足によるサーラの未来を案じたナランバヤルは、戦争寸前の2つの国に国交を開かせようと決意する。お互いの想いを胸に秘めながら、真実を言い出せない不器用な2人の<やさしい嘘>は、国の未来を変えるのか――。
【予告動画】
【プレゼント情報】
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