映画星取り:北欧が舞台のファンタジー巨編『ノースマン 導かれし復讐者』【2023年1月号映画コラム】

TV Bros.WEBで毎月恒例の映画の星取りコーナー。
今月は『ウィッチ』(2015年)、『ライトハウス』(2019年)が話題となった、個性派監督ロバート・エガース初のアクション大作『ノースマン 導かれし復讐者』を取り上げます。

『ブロス映画自論』では、賞レースにまつわるニュースなどなど、今月もバラエティ豊かにご紹介!

(星の数は0~5で、☆☆☆☆☆~★★★★★で表記、0.5は「半」で表記)

◆執念と狂気のストップモーションアニメ『マッドゴッド』【2022年12月号映画コラム】
◆そのほかの映画特集はこちら 

<今回の評者>
渡辺麻紀(映画ライター)
わたなべ・まき●大分県出身。映画ライター。雑誌やWEB、アプリ等でインタビューやレビューを掲載。ぴあでは海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔』ベストカーWebでは映画などに登場する印象的な車について解説するコラムを連載中。また、押井守監督による『誰も語らなかったジブリを語ろう』『シネマの神は細部に宿る』『人生のツボ』等のインタビュー&執筆を担当した。
近況:明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

折田千鶴子(映画ライター)
おりた・ちづこ●栃木県生まれ。映画ライター、映画評論家。「TV Bros.」のほか、雑誌、ウェブ、映画パンフレットなどで映画レビュー、インタビュー記事、コラムを執筆。TV Bros.とは全くテイストの違う女性誌LEEのWeb版で「折田千鶴子のカルチャーナビ・アネックス」を不定期連載中。
近況:日曜日が待ち遠しいくらいドラマ『ブラッシュアップライフ』にハマり中。『とべない風船』のパンフレットに寄稿。

森直人(映画ライター)
もり・なおと●和歌山県生まれ。映画ライター、映画評論家。各種雑誌などで映画コラム、インタビュー記事を執筆。YouTubeチャンネルで配信中の、映画ファンと映画製作者による、映画ファンと映画製作者のための映画トーク番組『活弁シネマ倶楽部』ではMCを担当。
近況:謹賀新年! 今年もどうぞよろしくお願いいたします。

『ノースマン 導かれし復讐者』

監督・共同脚本/ロバート・エガース 共同脚本/ショーン 出演/アレクサンダー・スカルスガルド ニコール・キッドマン クレス・バング アニャ・テイラー=ジョイ イーサン・ホーク ビョーク  ウィレム・デフォー ほか
(2021年/アメリカ/137分)

◆9世紀、スカンジナビア地域にある、とある島国。若き王子アムレートは、父オーヴァンディル王を叔父のフィヨルニルに殺害されたうえ、母を連れ去られてしまう。父の復讐と母の救出を誓ったアムレートは、数年後、東ヨーロッパ各地で略奪を繰り返すヴァイキング戦士の一員となっていた。スラブ族の預言者と出会い、己の運命と使命を思い出した彼は、奴隷に変装し、叔父が営むというアイスランドの農場へと向かう。

1月20日(金)全国公開

パルコ ユニバーサル映画
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渡辺麻紀
100分くらいだったらよかったのに。

ヴァイキングの伝説に、この監督が得意とする神話ネタをからめた作品。これまでの神話ネタは抽象的、比喩的に挿入されていたので世界観を邪魔することはなかったが、今回は直接的な描写が多く、そこだけ浮きまくっていた。リアルな世界観との折り合いが上手く行っていないのでは? この内容で2時間17分はツラい。

★★★☆☆

 

折田千鶴子
体力気力が余っている時に!

魅惑のキャストが大挙出演、復讐の思惑がひっくり返る展開等々は面白いが、それなりに観るのキツい……。批評家筋の高評価は分かるが、これが5週連続TOP10入りって全米の映画ファン、すげぇ。監督の意図どおり、血みどろと怒声にまみれた“バイオレンスを祝福する文化”が濃密・強烈に現出される。それにしても一台のカメラで撮ったとは!

★★★☆☆

 

森直人
荒くれバイキングのオペラ

さすが異才ロバート・エガース監督。『ハムレット』の原型になった伝説の人物アムレートを主人公に、『ゲーム・オブ・スローンズ』的な北欧神話系の暴力と殺戮の因縁話を狂熱のテンションで描く。『ウィッチ』や『ライトハウス』からすると、予算の急上昇と共に職人的な娯楽映画の世界になったが、やはりサイレントの古典を愛するシネフィル監督らしいハードコアな映画教養がよく活きている。優秀なムーヴィング・ピクチャー。

★★★★☆

 

気になる映画ニュースの、気になるその先を! ブロス映画自論

渡辺麻紀
賞レースの季節ですね!

年明けのハリウッドでの大イベントといえば賞レース。その集大成たるアカデミー賞が決まるまで、さまざまな映画賞のノミネートや受賞作が次々と発表されている。
数多くノミネートされているのは『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』や、スピルバーグの『フェイブルマンズ』、今月27日に公開される『イニシェリン島の精霊』等々。好き嫌いはさておき、みんなそれぞれ、ノミネートされる理由は判るのだが、どうしても判らない作品が1本ある。
ライアン・ジョンソン監督の『ナイブス・アウト』シリーズ2作目にして最新作『ナイブス・アウト:グラス・オニオン』(Netflixで配信中)だ。1作目『ナイブス・アウト/名探偵と刃の館の秘密』がスマッシュヒット&高評価で続編を製作したことになるのだが、筆者はこのシリーズの面白さがまるで判らない。若かりし頃にアガサ・クリスティの『アクロイド殺害事件』を読んで、この手のミステリがすっかりイヤになったという性格が災いしているのか、高評価な理由がまるで判らないのだ。1作目、意味ありげにナイフの玉座が登場するも何の意味もなく、殺される人間が世界的な推理作家であるということにすら意味がなかったような気が……。
その「判らない」は2作目も同じ。とりわけ今回は、名探偵を演じているジェームズ・ボンド役者のダニエル・クレイグの演技がポアロのなりそこないみたいで「判らない」度が加速。しかも、あまり活躍しないし。さらに、この監督らしい破壊シーンに「何の意味が?」という残念な気持ちにもなる。ちなみにジョンソンの映画、筆者的にはどれも「よく判らない」んですけどね!

 

折田千鶴子30年逃亡の末、遂にお縄!“何、これ映画!?”と二度見するニュースが、年初から世界をザワつかせている。年明け早々にはメキシコの「麻薬王」の息子を拘束しようとしてカルテルと銃撃戦になり、29人が死亡。『母の聖戦』(1月20日公開)『ボーダーライン』(2015年)あたりが思い浮かぶが、そんな中、今度は「シチリアのマフィアのボスが30年の逃亡の末に逮捕」というニュースが。コーザ・ノストラのマッテオ・メッシーナ・デナーロが、30年間も逃亡し続けられたのは、組織の堅い「血の掟」に拠るものという。ところが当のコーザ・ノストラの内情をガッツリ捉えた実録映画『シチリアーノ 裏切りの美学』(2019年)は、何とその掟を破った男が主人公だ。果たして彼はなぜ、掟に背くに至ったのか。舞台は、マフィアの抗争が激化する80年代初頭。コーザ・ノストラの三大派閥のひとつ、パレルモ派に属する大物トンマーゾ・ブシェッタは、抗争の仲裁に失敗しブラジルに逃れる。しかし残された家族や仲間を、コルレオーネ派が次々と殺害。ブラジルで逮捕され送還されたトンマーゾは、マフィア撲滅に執念を燃やす判事と面会させられる。当然ながら、最初は「血の掟」を理由に協力を拒むが――。様々な映画の影響か、我々はどこか“マフィアもの”にロマンチシズムを感じてしまう。だが現実のそれは、冷酷非道で残虐な犯罪集団だ。巨匠マルコ・ベロッキオがそれをリアルに活写する。マフィアが市民の生活に溶け込み、いかに一般人を容赦なく巻き込むかにも震撼させられる。だからこそ先日の逮捕劇では、周囲から大拍手が起きたという。きっと映画化されるだろうこの逮捕劇が、いかに描かれるのか今からとっても気になる。

 

森直人
自伝映画と、映画ネタ映画が一気に!

つい先日、1月11日(水)に発表された第80回ゴールデングローブ賞。作品賞(ドラマ部門)に輝いたのは、今期賞レースの大本命と目されているスティーヴン・スピルバーグ監督の『フェイブルマンズ』(3月3日公開)だった。
実はこの作品と、来たるべき第95回アカデミー賞に向けた国際長編映画賞部門のショートリスト(予選通過くらいの意味)の15本の中に選出された、パン・ナリン監督のインド映画『エンドロールのつづき』(1月20日公開)の内容の類似が話題になっている。共に『ニュー・シネマ・パラダイス』系というか、映画の魅力に取り憑かれた監督自身の少年期を描く作品なのだ。
このように現在、映画監督のオートフィクション系(自伝的要素をベースにしたフィクション)がものすごく流行っている。一世一代の大ネタである「自分の話」を、著名監督たちがやたら続けて放っているのだ。
例えばNetflixで配信中のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『バルド、偽りの記録と一握りの真実』や、リチャード・リンクレイター監督のアニメーション『アポロ10号 1/2:宇宙時代のアドベンチャー』もそうだし、昨年度枠ならケナス・ブラナー監督の『ベルファスト』。ポール・トーマス・アンダーソン監督の『リコリス・ピザ』もそのカテゴリーに準ずる。
「自伝」以外の自己言及系では「映画ネタ映画」もラッシュ中である。デイミアン・チャゼル監督の『バビロン』(2月10日公開)や、サム・メンデス監督の『エンパイア・オブ・ライト』(2月23日公開)。映画館オマージュなら、日本でも城定秀夫監督・いまおかしんじ脚本の『銀平町シネマブルース』(2月10日公開)がある。
なんだかコロナ禍を受けた後のタイミングで、みんな「総まとめ」に入っているのか? 配信がスタンダードとなり、大半の映画は劇場興行の苦戦を強いられている今日この頃。映画というジャンルのエンドロールが迫っているサインではないことを願うばかり。

 

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TV Bros.編集部
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