高野麻里佳インタビュー『ハケンアニメ!』でアイドル的人気の声優役を演じる「オーディション時には、気持ちがわかるからこそ涙が自然にあふれちゃいました」

直木賞作家・辻村深月の小説を、『君の名は。』のCGクリエイターであり、中村倫也が7役に扮した映画『水曜日が消えた』で長編監督デビューを飾った吉野耕平監督が実写映画化した『ハケンアニメ!』が、2022年5月20日より全国ロードショー。本作は、土曜の夕方枠で放送されるオリジナルアニメ作品2本の作り手たちを軸に、アニメ業界で働く人々の奮闘を描く“ものづくりエンターテインメント”だ。 

 

TV Bros.WEBでは、本作の公開を記念してキャスト陣&吉野監督に連続インタビューを実施。第一弾の中村倫也に続く第2弾は、主人公の新人監督・斎藤瞳(演:吉岡里帆)が手掛けるアニメ『サウンドバック〜奏の石〜』に参加する声優・群野葵を演じた高野麻里佳。本作で実写デビューを飾った高野に、現場での思い出や表現術を伺った。 (インタビューの最後には直筆サイン入りポラの抽選プレゼント企画も実施中。詳しくは【プレゼント情報】欄をご覧ください。)

取材・文/SYO
撮影/倉持アユミ

 

【Profile】
高野麻里佳(こうの・まりか)
●2月22日生まれ、東京都出身。 大ヒットアニメ『ウマ娘 プリティーダービー』でサイレンススズカ役を演じ知名度を高める。 Netflixオリジナルアニメ『エデン』の主人公・サラ役で、アニメ作品初主演を果たした。 

映画『ハケンアニメ!』公開記念 4日連続特集
DAY 1. 中村倫也 インタビュー
DAY 2. 高野麻里佳 インタビュー
DAY 3. 吉野耕平監督 インタビュー
DAY 4. 映画ライター・SYO コラム「中村倫也の沼落ちライターが2020年の『水曜日が消えた』から2022年の『ハケンアニメ!』までを語る」

                                  

避けられない演出サイドと演者サイドの表現の
ぶつかり合い中で大事にしていること


――劇中では、アフレコ時に葵がディレクションになかなか応えられないシーンが描かれます。高野さんご自身は、同様の経験をされたことはあるのでしょうか。 

高野麻里佳(以下、高野):そうですね。ディレクションに応えられるかどうかには経験や技術もあると思いますが、台本を読んだ瞬間のインスピレーションは人それぞれだと思いますし、それをどう表現するかには演じ手の遊び心も入ってくるもの。今回は遊び心がいるのか、いらないのか、もっとどうしてほしいのか、といった演出サイドと演者サイドの表現のぶつかり合いは、よくあることだと思います。さすがに、もっとマイルドな空気ですが(笑)。 

――本作のオーディションで演じたのも、吉岡里帆さん演じる斎藤瞳監督と衝突するシーンですよね。そこでの涙を流す演技が評価されたと伺いました。 

高野:オーディションのお話をいただいたときは、自分の顔や体がカメラに映ることに対する想像がつかなかったのですが、今回は「声優役」でしたし、台本を読んで葵ちゃんという声優はアイドル的な活躍をしているからこそキャスティングされた経緯があるキャラクターだとわかりました。やっぱりそういう経験だったりその気持ちが分かる人にぜひ表現してもらいたいと感じ、私もぜひ表現者として参加したいと思いました。 

オーディション時には、気持ちがわかるからこそ涙が自然にあふれちゃいましたね。「涙をぬぐう」と台本にも書いてあったので、そこまで感情を高めてリミッターを外していい状況だったのはやりやすかったです。その涙を通して葵ちゃんの悔しさを伝えられる、という意味では「もう思いっきり感情を爆発させよう!」と思って演じました。 

――高野さんご自身が、アフレコ等ですり合わせを行い、解決法を探っていくときに心掛けていることなどはありますか? 

高野:基本的に「自分が思ったことがすべてではない」というのを心掛けていないと、自分の考えを否定されたと感じてしまい、それこそ劇中のようにぶつかり合ってしまう。相手を否定するのではなく、お互いに「そういうこともあるかもしれない」くらいの気持ちで受け入れながら正解を探していく、というやり方をしています。 

やっぱりお互い人間なので、言い方ひとつで伝わることもあればそうじゃない場合もある。そのため、「それってつまりこういうことかな?」と一回自分で消化してから伝えてみることは意識しています。 

――コミュニケーションが、高野さんの表現の根幹にあるのですね。 

高野:そうですね。家で台本を読んで感じたものをまずアフレコ会場で提示して、そこからはコミュニケーションを取りながら探っていきます。そういった意味では、コミュニケーション自体がお仕事のひとつといえるかもしれません。 

ただ今回、実写映画に参加させていただいて驚いたのは、皆さんが一発撮りくらいの気持ちで臨んでいるところ。アニメのアフレコはテストがあって本番があるので、そういった意味では実写映画やドラマのほうがよりシビアにやっているようには感じました。 

――コミュニケーションを重ねて作っていくというよりは、一発本番の世界というか……。 

高野:はい。ちょっと戸惑ったのが、お子さんがいっぱいいる場所での上映会のシーン。あれだけ人数がいると、イレギュラーなことがちょっとずつ起こって、それに対してちょっとだけアドリブで返したりするんです。それが失敗だったんですが(笑)、一個アドリブを入れたら「あと10回カットを撮ります」となったときに、10回の本番ずっと同じアドリブを続けなきゃいけないんです。 

――そのときにパッと言った内容も覚えておかないといけないから、大変ですよね。 

高野:そうなんです! 「なんて言ったっけ……」ってなりますよね。アドリブってその時にたまたま生まれた表現なので、あと10回続けたらそれはもはやアドリブじゃない。安易にアドリブしちゃいけないんだ……というのはそこで気づかされました(笑)。 

実写では1回1回がもう本番だと思って臨まなくてはいけないし、だからこそすごい緊張感があるなと感じましたね。たまにテレビなどで出演者の方が「ここは自分のアドリブなんですよ」とおっしゃっているじゃないですか。そのすごさが改めて分かるようになりました。カメラが回っている状態で演技をする難しさも含めて、現場に行って初めて経験できたことがたくさんありました。 

――カメラが回っている状態で演じる難しさを、どういった部分に感じたのでしょう。 

高野:やっぱり、身体を動かさなきゃいけないのがすごく難しかったです。声優って台本をもってマイク前に立つのですが、ノイズが入ってしまうので音を立ててはいけないんです。ですが、実写は動いてなんぼというか表現方法の一つ。動かないことを刷り込まれている自分が「やっていいよ」と言われたときにまず「何をしたらいいんだろう?」という戸惑いはありましたね。 

あとは台本です。声優であればアフレコに持ち込めますが、今回はそうはいかない。まずは何とかしてセリフを覚えなきゃ!というのが前提にありました。吉岡里帆さんに「セリフをどうやって覚えたらいいですか?」とお聞きしたら、ずっと反復を繰り返すと教えていただいて。会話する相手のセリフを自分で収録して練習もするよ、ともおっしゃっていて、セリフもただ覚えるだけじゃなくてどういうやり取りをしているのか流れを組み込むことが大事なんだなと感じました。 

                          

声優の活動の幅が広がる中で感じる
先駆者と後進への想い


――吉野耕平監督とは、どのようなお話をされましたか? 

高野:現場でというよりも、オーディションや顔合わせのときに「声優さんってどんな服を着てるんですか?」など、すごく興味を示してくださって、私が提示できる声優の知識をお伝えするやり取りがたくさんありました。リアルな部分を見て下さって、実際の現場を再現しようという気持ちがすごく伝わってきて嬉しかったです。 

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――本作で共演された梶裕貴さんは、実写作品の経験も豊富かと思います。何かアドバイスを受けたりはしましたか? 

高野:「実写作品はのびのびやったらいいよ」と言ってくださいました。今回は潘めぐみさんとも共演させていただき「高野ちゃん次第で作っていいシーンだから、私たちに出来ることがあったら言ってね」と背中を押してくれるような言葉をかけて下さり、すごく心強かったですね。 

――声優さんが実写作品に出演される機会も増えてきましたね。 

高野:声優のフィールドが広がっているのは、新たな経験を新人たちが得やすい場所を先輩方が作ってくださってきたからこそ。様々な先輩が表に出てくれているおかげで、私も色々な経験ができていると感じます。 

――高野さんからまた、次の世代につながっていきますね。 

高野:そうですね。先日、漫画雑誌の表紙を飾らせていただいたのですが、所属事務所の偉い方から「漫画雑誌の表紙を飾ったのは初めてじゃないかな?」と言われて「じゃあもっと頑張ろう!」と思いました。自分が頑張ることによって、後輩たちの次の仕事につながったり、動きやすい環境が広がっていくかもしれませんし、自分でもその先陣を切っていけるんだな、と感じました。 

――ちなみに、高野さんがお好きな実写作品にはどんなものがあるのでしょう。 

高野:ちょうど『ハケンアニメ!』のお話をいただいた時期に、吉岡里帆さんのドラマ『レンアイ漫画家』にハマっていたんです。私自身、ドラマが好きで吉岡さんの出演作をよく拝見していたので、ファンに近い目線で吉岡さんを見ていました。共演できた機会は、ものすごく貴重でしたね。 

――『ハケンアニメ!』は実写映画であり、劇場上映作品でもあります。映画館ならではの良さはどういったところにあると思いますか? 

高野:やっぱり臨場感が違いますよね。いまはサブスクが普及しているのでお家で観ちゃうことも多いのですが、映画館で観たときの立体音響は特別。アフレコシーンの音響設計もすごくリアルですし、ピリッとした繊細な緊張感をより体感できると思うので、ぜひ注目してみてください! 


【作品情報】

ハケンアニメ!
2022年5月20日(金)全国ロードショー
■出演:吉岡里帆 中村倫也 工藤阿須加 小野花梨 高野麻里佳 六角精児 柄本 佑 尾野真千子
■原作:辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス刊)
■監督:吉野耕平
■脚本:政池洋佑
■音楽:池頼広
■主題歌:ジェニーハイ 「エクレール」(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN)
■制作プロダクション:東映東京撮影所
■配給:東映
■公式サイト:haken-anime.jp
■公式SNS:@hakenanime2022


【プレゼント情報】

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抽選で1名様にプレゼント!

高野麻里佳さんの直筆サイン入りフォトを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は pipipi@tokyonews.co.jp 宛に、件名に「ハケンアニメ!高野麻里佳プレゼント」、本文に「①郵便番号・住所 ②氏名 ③年齢 ④TV Bros.WEB 有料会員登録時のメールアドレス」を書いてご応募ください。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。 ご応募締め切りは2022年6月20日17時まで。

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