幕末期、江戸を騒がせていた勤皇浪士を自称する者や薩摩藩士による御用盗に対応するため、農民を集めて結成された特殊戦闘部隊「一撃必殺隊」の活躍を描いた小説『幕末一撃必殺隊』を原案にしたコミック『いちげき』が実写ドラマ化。SPドラマとしてNHK総合・BS4Kにて2023年1月3日午後9時から放送される。今作の脚本を手がけるのは宮藤官九郎。大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の脚本を手がけた宮藤だが、本格的な時代劇を手がけるのは今作が初となる。
あらすじ・・・舞台は大政奉還直後の江戸。徳川滅亡を図り江戸城下でろうぜきの限りを尽くす薩摩藩士に対し、大規模な戦争を避けたい勝海舟は会津藩の武士でも庄内藩の武士でもなく「村の力自慢」や「大男」、「村一番の速足」や「機転の利く小男」などバラエティーに富んだ百姓たちを寄せ集め、私設部隊を秘密裏に立ち上げる。多額の報奨金を目当てに集まった丑五郎(演:染谷将太)や市造(演:町田啓太)ら百姓たちは、初めて握る刀に動揺しながらも、元新選組隊士の島田幸之介(演:松田龍平)に特別な訓練をうけ、日に日に成長。そして初陣、雄たけびとともに威勢よく出陣した百姓軍団の彼らには「一撃必殺隊」という名が付けられた。
今作主演の染谷将太にインタビュー。2022年はギャラクシー賞受賞作『17才の帝国』(NHK総合)やオダギリジョーが脚本・演出・編集を手がけた『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』シーズン2(NHK総合)などで個性の強いキャラクターを演じた染谷。テレビドラマで個性のあるキャラクターを演じると、視聴者がその強烈な印象にとらわれ、イメージが根付いてしまうことも少なくない。近年ドラマ出演も増えてきた染谷は、自分が演じる役と俳優としてのキャリアについてどのように考えているのか。今作の裏話とともに語ってくれた。
取材・文/編集部
写真提供/NHK
【Profile】
染谷 将太(そめたに・しょうた)
●1992年、東京都出身。子役として活動し、2009年『パンドラの匣』で映画初主演を果たす。2011年に主演を務めた『ヒミズ』では第68回ヴェネチア国際映画祭で 日本人初となるマルチェロ・マストロヤンニ賞を、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、国内外から注目を集める。『ブラッシュアップライフ』が2023年1月8日より放送スタート。
宮藤官九郎 初の本格時代劇「おそらく当時は使っていなかったであろう言葉もたくさん出てきます(笑)」
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━━視聴者にとって染谷さんとNHK時代劇と言えば、やはり2021年放送の大河ドラマ『麒麟がくる』で演じられた織田信長の印象が強いかと思います。染谷さんが時代劇を再び演じるということで、視聴者の期待も大きいかと思いますが、その予想される反応について、オファーを受けた時や演じている時にどのように意識されましたか?
なるほど。…正直に言うと、全く意識していませんでしたね(笑)。むしろ、今そうやって言われると不安になってきました(笑)。
ただ比べるのであれば、二つは全く違う作品だと思います。『麒麟がくる』では身分がものすごく高い人間を演じていた一方で、今作は虐げられた身分の方々が描かれていて、二つの作品の間に描かれるテーマにギャップがあると思います。今作のオファーを受けるときに思ったことはこれは絶対に面白い作品になる、そして演じる上で自分自身も楽しく演じられるだろう、ということは考えていました。
━━時代劇ということで所作や言葉遣いなども現代劇とは異なりますが、演じる際にどんなことを意識されていましたか?
今作は普段の「時代劇」とはまた違っていて、言うなれば「いちげき」という世界観の時代劇と言えます。言葉遣いにおいても、宮藤さんのオリジナリティあふれる言葉…おそらく当時は使っていなかったであろう言葉もたくさん出てきます(笑)。物語の内容もバラエティ豊かな作品なので、今作で演じる際には「時代劇ということを気にしない」ということを気にしていました。
━━今作は神田伯山さんの講談によって語られる「一撃必殺隊」の物語です。物語の中で物語が語られるという構造は、役を演じる上で意識に変化を与えましたか?
そうですね。あの神田伯山さんの力強い講談によって、この物語が語られるわけですから「俺らがメチャクチャに演じても成立するんじゃない?」と思って、甘えさせてもらった部分もあります(笑)。神田さんの講談で語られるということで、作品がより締まるだろうなと思って演じていました。
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━━染谷さんが今作で演じる役はどんなキャラクターですか?
自分が演じたウシは、動物的な勘を持っていて、冷静だけど天然なところもあって。今作の登場人物全員において言えますが、ウシは恩着せがましくないヒーローで「素直な正義感」を持っています。本当に不器用なんですけど、「かっこいいな、正義だな」と思いながら演じていました。
「一つのイメージに縛られることほど窮屈なものはない」
━━染谷さんは作品のイメージや役柄が固定したところにとどまらない、むしろ真逆のところに行こうとする印象があります。2022年に放送されたドラマでいえば『17歳の帝国』で演じた鷲田は保守的な役柄でしたが、『オリバーな犬』ではその対極にいるようなぶっ飛んだ殺し屋、「特集ドラマ ももさんと7人のパパゲーノ」(NHK総合)では死にたい気持ちを抱えた青年を演じていました。俳優をやる以上、作品と役から生まれる世間的なイメージがキャリアに影響することについて考えざるを得ないと思うのですが、ご自身ではその作品と役のイメージとキャリアについて、どのように考えていますか?
そうですね…。「一つのイメージに縛られることほど窮屈なものはない」とは思っています。とはいえ、どのタイミングでどんなお話をいただけるかは分かりませんし、役と作品の巡り合わせは、ほとんど「運」だと思います。だから自分はこれまで運良く、色んな世界観・キャラクターを演じる仕事をいただけているんだなと思います。
それに、言ってしまえば役者は「雇われ仕事」なので、そうやって雇ってもらえるならやる、ということはあると思います。例えば「次はこの役で。このタイミングでこういう役をやろう」という風にできる訳ではない。そんな中でも「一つの世界観に縛られない」ということを自分は意識しています。
━━なるほど。作品や役を選ぶ際には「一つの世界観に縛られない」という指針がある中で、そこからまたオファーを受けるか否か、判断する基準のようなものはあるのでしょうか?
「自分がその仕事に責任を負えるかどうか」ということは凄く大切にしています。引き受けて演じた後に「あんまり上手くできませんでした」と言えば済む話ではないので。全ての作品で「ちゃんとやりきった」と毎回言えないとダメだと思っているので、それは自分の中で凄く大切にしています。
━━ありがとうございます。話題は大きく変わりますが、今作は1月3日に放送されるSPドラマです。お正月にお家でご覧になる方は多いと思われますが、染谷さんは「正月の良さ」をどんな部分で感じますか?
全ての思考を止めることができる、ということが年末年始の醍醐味だと思っています(笑)。やらなきゃいけないことや考えなきゃいけないこともあるけど「一旦止めても許されるんじゃないの?」と、勝手に自分の中で思える時期なので。でも今年は『いちげき』のオンエアがあるので、ドキドキしながら過ごすことになるかもしれませんが(笑)。そのドキドキも含めてこの年末年始を楽しみたいです。
━━年末年始に必ず食べるものや習慣などはありますか?
僕は毎年、験担ぎで蕎麦を打つんです。
━━「打つ」んですね。
はい。自分で打つので見た目は汚いんですけど、良い蕎麦粉をいただいて、それから蕎麦を作るので、香りは凄く良いんです(笑)。それを年越し蕎麦として毎年食べていますね。
【番組情報】
NHK正月時代劇『いちげき』
【放送予定】2023年1月3日(火)
【放送局】NHK総合/BS4K 午後9時~10時29分
【原作】『いちげき』松本次郎・『幕末一撃必殺隊』永井義男
【脚本】宮藤官九郎
【語り】六代目神田伯山
【音楽】遠藤浩二
【出演】染谷将太 町田啓太 伊藤沙莉 塚地武雅 岡山天音 高岸宏行 細田善彦 上川周作/西野七瀬 工藤阿須加 じろう 奥野瑛太/尾美としのり 杉本哲太 松田龍平
【演出】松田礼人(TBSスパークル)
【制作統括】樋口俊一(NHK)加藤章一(TBSスパークル)
【プロデューサー】塩村香里(TBSスパークル)
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