TV Bros.のそれなりに長い足跡をたどる不定期企画「あの頃ブロス」。創刊時のメンバーにして、9代目編集長、現在無職の(袴)が、担当した特集や編集長時代の出来事を振り返ります。
今回は30年前の1991年12/7号「それぞれのクリスマス」特集。バブル景気の終焉となったその頃、誌面のテイストは、誌面を彩った方々は、そして誌面を作った人々は――。
<プロフィール>
書き手(袴)●TV Bros.9代目編集長。ブロス創刊当初から編集参加(下っ端で)。ナンシー関が編集部で汗をかきながらブロス探偵団を書いていたのを目撃している数少ない1人。入社後すぐにブロスに配属された「人生」元メンバーのK3が、読者ページ・ぴぴぴ倶楽部で(袴)を勝手に名乗り好き放題下品ネタを書き散らかしたおかげで、名刺交換した初対面の人に「あなたが(袴)さんですか! ぎゃはは!」と指差されて笑われるという悲しい過去あり。
TV Bros.が仕掛け人に大抜擢!?「全落」「水落」シリーズに参戦の巻【あの頃ブロス2014年12/6号】
30年前のクリスマス特集、人選に滲む30年前らしさ
今年もそろそろクリスマス商戦がスタートする時期。みんなでワイワイできないコロナ禍のご時勢、どんなクリスマスの過ごし方がスタンダードになるんでしょう?
ブロスも12月にはたびたびクリスマスをテーマに特集を組んできました。今回の「あの頃ブロス」は、30年前の1991年12/7号。当時32歳の私が担当した「それぞれのクリスマス」と題した特集を回顧してみます。
1991年はどんな年だったか、まずは調べてみました。この年の新語・流行語大賞は、チャーリー浜の「…じゃあ〜りませんか」。東京23区の電話番号が、03の後に3が付いて10桁になったのがこの年。ジュリアナ東京が芝浦にオープンしたのもこの年。今では、1991年はバブル景気の終焉の始まりの年と言われていますが、まだまだ世間は浮かれていました。F1ドライバー中嶋悟が今シーズン限りでの現役引退を表明したのもこの年。雨のオーストラリアGPでのファステストラップ、忘れません。一方、SMAPが「Can’t Stop!! -LOVING-」でCDデビューしたのがこの年の9月。ちなみに、当時のTV Bros.は定価160円でした。安い。
さて「それぞれのクリスマス」特集。サブタイトルがこっぱずかしい。「Differrent strokes for different folks」。「十人十色」とか「人にはそれぞれ違った趣味や好みがあり、人と異なることは必ずしも悪いことではない」ということわざだそうだが、当時の私がそんなこと知るわけもなく、単に小説「ダンス・ダンス・ダンス」で知ったこのフレーズを引用したのはバレバレで、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのファンだったわけでもない。
まあサブタイ問題は置いといて、中身を見てみましょう。職業や志向の異なる6人に「どんなクリスマスを過ごして来たか。今年はどう過ごすか」などをインタビューしています。この人選に30年という時の流れを感じます。
1人目は大井競馬の佐々木忠昭騎手。当時、大井競馬の騎手会長と全国騎手会の会長を務めていた佐々木さん、競馬好きな私が無理くり突っ込んだ案件ですね。取材直前に佐々木騎手が騎乗する馬を軸に馬券を買いましたが、大ハズレでした…。
2人目はルビー・モレノ。フジテレビの『全日本ガイジン選手権』にアシスタントとして出演し、「ルビです」のひと言で一躍人気者になった彼女。稲川素子事務所社長の家で取材したことが思い出されます。ルビちゃんを大事にしていて、とても可愛がっていました、稲川社長。このおふたりのその後のトラブルと和解は、皆さんご存じのとおり。
3人目は日出郎。オカマ代表としてインタビュー。彼が勤務する新宿2丁目のピンクソーダで、開店前に化粧をしながらの取材。聡明な人で、タモリや電気グルーヴに気に入られて電気のライブにも出演したのも納得。「連結」というワードはあの時初めて聞いたなぁ。
4人目は元レディス総長として直子ちゃん18歳が登場。思い出に残る彼氏へのクリスマスプレゼントを聞くと「特攻服を編んであげた。ウソ。セーターを編んであげました」とこちらのニーズをちゃんと理解している賢い子でした。
5人目は霊能者代表として池田貴族。ロックバンド・remoteのボーカリストとしてより、霊感タレントとしてマスコミ露出の多かった彼。この取材の5年後、肝細胞がんであることを告白、闘病ののち36歳で死去。亡くなったのは12月25日、クリスマスだった。撮影現場まで、彼の愛車(たしかトヨタ・ソアラ)にカメラマン、ライターと私の3人を乗せてくれた心優しい池田さん。ご冥福をお祈りします。
6人目はZOOのHIRO、当時22歳。今や泣く子も黙る、EXILEらの所属事務所LDHの代表取締役社長を務めるHIROこと五十嵐広行さん。妻は上戸彩だなんて羨まし過ぎる。この年のクリスマスは当時のZOOとしては大きな会場(浦安のNKホール)でのライブを控えていた時期で、今年のクリスマスプレゼントに欲しいものは? の質問に「大歓声と拍手の嵐!」と男気あふれる回答。モテるわけです。
特集の締めくくりは、当時10歳の内山信二くんが語るクリスマスを贅沢に2ページで掲載。大の内山ファンである放送作家でブロス連載陣でもあった町山広美さんとの対談は、代官山のおしゃれなカフェ店内に内山くんのハイテンション・トークが響きわたりました。「芸能生活何年ですか?」と町山さんに逆インタビューする10歳児。町山さんが芸人じゃないと知ってるくせに。あっぱれ内山大先生です。
そして忘れもしない、最後の最後で発覚した大チョンボ。当時は校了後も念のために印刷所に出掛けて最終チェックをする“出張校正”をしていたのですが、全部見終わり、さあ飲みに行こう、と席を立った瞬間目に入った特集タイトルは「それぞれのクリリマス」。大きな文字で「クリリマス」。危うくやらかすところでした。冷や汗の私を笑って見ていたのは、当時の編集長・西谷さん。いつもの甲高い声で「いやー、ハカちゃん、危なかったね!」。か、軽い…。この西谷編集長は、東京ニュース通信社に泉麻人と同期入社の慶応ボーイですが、私を競馬の道に引きずり込んだ人でもあります。その人が会社を早期退職し、今は教会の牧師さんになっています。歳月は人を変えるものですね。今年のクリリマス、じゃなくてクリスマスは西谷さんの教会で説教を聞いてみようかな。(袴)
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