押井守のサブぃカルチャー70年「YouTubeの巻 その23」 【2023年1月号 押井守 連載第58回】

今回押井さんが紹介してくださるYouTubeチャンネルは、『ゲームさんぽ/ライブドアニュース』。さまざまな専門家と一緒にゲームをプレイし、ゲームの魅力を再発見していく“教養系”番組です。これまでは個人でがんばっているチャンネルを紹介してくださっていた押井さんですので、今回はちょっと異色と言えるかもしれません。さっそく、その魅力をお話いただきましょう。

取材・構成/渡辺麻紀
撮影/ツダヒロキ

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<新刊情報>
加筆&楽しい挿絵をプラスして待望の書籍化!
『押井守のサブぃカルチャー70年』が発売中!

当連載がついに書籍化しました。昭和の白黒テレビから令和のYouTubeまで、押井守がエンタメ人生70年を語りつくす1冊。カバーイラスト・挿絵は『A KITE』(1998年)などを手掛けた梅津泰臣さんが担当し、巻末では押井×梅津対談も収録。ぜひお手に取ってみてください。

詳しい書籍の内容はこちら!

押井守/著
『押井守のサブぃカルチャー70年』
発売中
発行:東京ニュース通信社
発売:講談社
カバーイラスト・挿絵:梅津泰臣
文・構成:渡辺麻紀

『ゲームさんぽ』はテレビでも、配信でも無理。出演者のリラックス感も含めて、YouTubeならではのプログラムだと思うよ。

――前回はYouTubeにおけるテロップやナレーションの効果について語っていただきました。

今回は「ゲームさんぽ」というチャンネルを紹介しようかな。これはライブドアニュースがやっているチャンネルで、ゲームを観ながら専門家に蘊蓄を語ってもらうという趣向。

――ゲームの蘊蓄? どうやってこのゲームが生まれたかとか?

いやいや、そんなんじゃ面白くもなんともない。たとえば、そのゲームが犯罪も何でもアリのような内容だったら弁護士を呼んで「あ、今のは業務上過失致死ですね。おそらく執行猶予が付くとは思いますが」みたいな感じで解説する。確か『GTA(グランド・セフト・オート)』でも弁護士を呼んでいたと思うよ。これは何をやってもOKのゲームで、通行人を殴り倒したり、警官を撃ち殺すこともできる。だから弁護士も「いや、この行為はないでしょう」とか「これは完全に恐喝です」とか言っていた。

――何と! それは面白そうですね。

大人気の『龍が如く』になると、ゲームの舞台になっている歌舞伎町を模した街を元警察官と一緒にパトロールするという趣向。「大体、カジノはビルの三階にあるんですよ。このビルはかなり怪しい」みたいな感じで。この元警察官は現役時代、実際に歌舞伎町を取り締まっていたという人だから。

――人選がいいですね。

日本の城が登場するゲームだと城郭の専門家を呼んだりして、石垣の詳しい説明をしてもらったりする。めちゃくちゃニッチなんだけど、呼ばれた人たちはその道の権威ばかり。ゲームも人気のゲームが多いし、もちろん、その辺の使用許可もOKもらってやっている。到底、個人じゃ出来ないことをやっているんです。

――「さんぽ」とついているのはゲーム内をぶらついて解説するからなんですね。

そうです。どれも大体、面白いんだけど、最近のお気に入りは俳人を呼んで、ゲーム内の世界を散策しながら「ここで一句お願いします」と言われて詠んでもらったりする回。『RDR2(レッド・デッド・リデンプションII)』でやっていた。その道の権威の人が呼ばれているわけだから「この辺で一句お願いします」と言われても、すらすらと詠んじゃう。凄いな俳人、と改めて思ったよ。こんなことが出来るのも、最近のゲームの映像のクオリティが映画並みに高いからなんだけどさ。

精神科医を呼んでアドベンチャーゲームの解説をしてもらうというのもあった。「この人はちょっとヤバいキャラクターですね」みたいな感じで。そして、精神科医的に登場人物の心理を分析したりする。野球ゲームのときは、プロ野球選手として活躍していた、本当のピッチャーを呼んで解説していた。「いや、いまの球はありえないから」とか。

――その野球ゲームも人気の高いゲームなんですね。

タイトルは覚えてないけど、おそらく人気は高いと思うよ。みんなが知っているところでは『ウマ娘』かな。

――それは私だって知ってます。TVのCMでもやってましたから。馬の代わりに美少女が走るんですよね?

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