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TV Bros.WEBの人気連載『押井守のサブぃカルチャー70年 YouTubeの巻』が12月28日(木)発売決定!
“わたしはYouTubeという窓を通して、現代社会の在り方がわかるようになった――。”
1951年生まれの監督・押井守がハマったというのがYouTube。
“いま”が凝縮した動画を視聴しながら気づいたその面白さ、そこから垣間見えた現代社会の状況、今を生きる人にとっての「幸福論」、そしてYouTubeというメディアとは一体何なのか?
TV Bros.WEBで好評を博した連載に加筆して待望の書籍化です!
◆カバーイラストは、人気アニメーター&監督の梅津泰臣描きおろし
◆聞き手・構成・文/渡辺麻紀
タイトル:『押井守のサブぃカルチャー70年 YouTubeの巻』
著者:押井守
発行:東京ニュース通信社 発売:講談社
全国の書店、ネット書店にてご予約いただけます。
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『オンリー・ゴッド』:映画における「説得」とは――?
――今回は『オンリー・ゴッド』(13)です。ニコラス・ウィンディング・レフンによる異色のクライムサスペンス……と言っていいんでしょうか。
間違いなく異色だよね。でも、その前に彼の前作『ドライヴ』(11)について話しておかなきゃいけない。
――『ドライヴ』は、車の整備工&映画のスタントマン&逃がし屋をする青年が、同じアパートに住む母子を好きになり……というお話は普通なんですが、変わったムードがある映画でした。
変わったムードというのは、ロサンゼルスを舞台にしていながらヨーロッパの香りがしたからだよ。なのでハードボイルドではなくノワールだし、漂うのはフランス映画の香り。舞台や出演者、メインの要素はアメリカ映画にもかかわらず、アメリカ映画にはなっていない。格調高く、ノワールが文芸に近づいたような映画になっている。
――ハードボイルドとノワールの違いってどこにあるんですか? 前者はアメリカ生まれで、後者はフランス生まれという認識くらいしかなくて。
ノワールにはモラルがあるんです。主人公が自分のモラルを守って闘う。だから自己献身や自己犠牲、自己奉仕等のニュアンスが強くなる。ちょっとマゾヒスティックなんだよね。一方、ハードボイルドは、もっとポジティブでタフ。主人公も自己肯定的でアクティブなんですよ。
――そう言われると、『ドライヴ』はノワールですね。いや押井さん、『オンリー・ゴッド』ですよ。
いやいや、そんな匂い立つ情緒的な『ドライヴ』の監督が、どんな作品を撮ったんだと思ったら、ヘンタイ丸出しの娼婦殺しから始まる映画だった。これはまさに「裏切られた!」じゃないの!
――そこなんですか!
もうひとつ、私が勝手に思い込んでいて「裏切られた」というのもある。実は『ドライヴ』の監督と『メッセージ』(16)の監督を同一人物だと思い込んでいたんです。名前を覚えられない……。
――ドゥニ・ヴィルヌーヴですね。『DUNE /デューン 砂の惑星』(21)の監督。
そうそう。二人の作品は雰囲気や世界観の持ち方も似ているし、暴力になるとどちらも結構、エグいでしょ。だから勘違いしちゃったんだよね。
――ということは、押井さんのなかにはニコラス・ウィンディング・レフンという監督の名前は存在してなかったわけですね。
『DUNE』のときにやっと、『ドライヴ』と『オンリー・ゴッド』は違う監督の作品だと認識した(笑)。
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