注目のお笑いコンビを紹介する『OWARAI Bros.出張版これからの芸人百景』第16回は、注目のコント師・やさしいズ。11月25日(金)から27日(日)まで東京・赤坂RED/THEATERにて、単独ライブ『ネネネネリネネネネ』を開催する。コント自体の注目度が高まる中、コントについて、“売れる”ことについてなど語ってもらった。
構成/竹村真奈 村上由恵(タイムマシンラボ)
取材・文/高本亜紀 撮影/大槻志穂
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ふたりの関係は三谷幸喜と松たか子!?
──久しぶりの単独ライブですよね。
タイ 2020年の単独はコロナの影響で中止になったので、ちゃんとした単独をやるのは3年半ぶりくらいです。2020年は中止になった代わりに配信でライブをやって。周りの芸人も助けてくれましたし、劇場が再開してから単独でやる予定だったネタをYouTubeにあげたら多くの人に観てもらえて。新しく知ってくれる人もめっちゃいたんで、意外なラッキーもありました。で、コロナ禍で一生(単独を)やれないのかなと思ってたこともあったんですけど、ライブ制作の方に「ハコを抑えたのでやってくれませんか?」っていうありがたいオファーをもらったのでやろうと思いました。
──やるやらないの選択は、ふたりで話し合って決められてるんですか?
タイ いや、僕だけです。
佐伯元輝(以下、佐伯) 今も“ああ、そうなんだあ”って思いながら聞いてました。新しいことを知れるんでこういうインタビューって新鮮なんですよね。
タイ だから、佐伯はお客さん以上芸人以下ですね(笑)。
──となると、タイさんと佐伯さんと準備期間は随分と違うんですね。
タイ 稽古は早くて1カ月くらい前から始まるので、大体2カ月の差はあると思います。
佐伯 その間、僕にできることは日々しっかり食べて、よく寝て健康で元気よく過ごすことだけです!
タイ 三谷幸喜と松たか子、みたいな関係じゃん。
佐伯 よく言ってくれるじゃん! めっちゃ気分いいんだけど!……単独もがんばるわ!
タイ いやいや、褒めるつもりで言ってないんだよ(笑)。
佐伯の天才トガり期を経ての現在
──(笑)。ネタは全てタイさんが書かれていますが、上がってきたものに対して佐伯さんが口を出すことはあるんですか。
佐伯 マジでないですね。
タイ ……かっこつけんなって。昔、ネタを書いてないのに、僕が渡した台本に「ああ、面白くない」っていう天才トガり期がありましたよ。
佐伯 天才トガり期って言うな。名前つけんな!
タイ 今はだいぶ丸みを帯びましたけど、昔は僕も言われてブチ切れたりしてましたね(笑)。
──ちなみに、タイトルと単独のコンセプトは関係あるんですか?
タイ あります。言っちゃうとネタバレになるのかな……。観たら全部わかるようにするのか、ヒントを拾えばたどり着けるくらいにするのか。どれくらいのさじ加減にするのか、今迷ってます。
佐伯 へえ~~楽しみー! え、わかるかな? 俺。
タイ わかってほしいけどね。……明確に言わないほうが、最終公演までに佐伯がわかるかどうかも実験もできるか。で、アフタートークで検証するかもしれないです。
──10月28日にはタイさん作・演出のユニットコント『東京夜行花』も開催されたりと、劇場中心にいろんなライブを仕掛けていますが、コロナ禍の約2年半はどんな時間でしたか。
タイ ちょっと……よくなかったですね。2020年の緊急事態宣言中はずーっとお酒を飲んでて。『キングオブコント』(TBS系)もないと思ってたので、全然(コントを)やってなかったんですけど、久々に準々決勝くらいで落ちまして……本当によくなかった。先輩から「この緊急事態宣言はいいきっかけだから、もっと抜け」って言われて、抜きすぎちゃったんです。
結果は出なかったがいい年だった2018年
──抜けっていうのはネタに関して? 以前はかかってたってことですか?
タイ 2018年に決勝へ行って負けて、次こそ絶対に優勝するっていう気持ちがあったんだと思います。けど、準々決勝で負けたことで、“決勝に行って当たり前だと思われているだろう”っていう勝手に感じてたプレッシャーも抜け落ちました。
佐伯 僕もコロナ禍は……イヤですね。リモートがめちゃくちゃ苦手なんですよ。
タイ リモートの企画で彼女ができたのに、よく言うよ。おかげで童貞捨てられたのに。なんなら、神棚にパソコンとか飾って毎日拝まなきゃいけないよ? 人生変わったんだから。
佐伯 たしかにその感謝はあるけど、それを差し引いてもいいことは少なかったですね。
──2018年に『キングオブコント2018』決勝進出、『Laughter Night』(TBSラジオ)と『そろそろにちようチャップリン お笑い王決定戦2018』(テレビ東京)優勝と、結果を残しながらも思ったような効果が得られないもどかしさもあったのではと思うのですが。
タイ もどかしいっていうか……コントのヤンキーっぽいキャラクターをフィーチャーしてもらってたんですけど、このキャラは俺じゃないみたいな葛藤もあったので(求められ過ぎないことに)安心した部分もありました。第7世代ブームにも乗れなかったですけど、乗って今の何倍も跳ねてたら一生キャラクターに縛られてただろうし、コントもできなくなってたかもしれないので。
佐伯 たしかに。その時期は台本のセリフに、“タイ、ヤンキーみたいなセリフ”っていうのが多かったよね。
タイ 「だりいな」とかね。表面的なところだけが先走ってたんです。今年はまたいろんなキャラクターができましたし、コントでやりたいことはできてますし……。もちろん売れてたほうがいいんですけど。
佐伯 極論はそうだよね。
タイ やりたいことの延長線上で売れたいのかもしれない。求められるものだけやっていたら、人生が面白くなくなる気がするんです。だから今のままでもいいけど、毎日お酒が飲めるお金ももちろん欲しかったなっていう感じです。
佐伯 思うような結果が出なかったわりに、いい2018年だった気もしますしね。『キングオブコント』では松本(人志)さんが「やさしいズより面白かった」とか名前をすごく出してくれたおかげで、1回めちゃくちゃハードルが下がって何をやっても大爆笑が起きる確変みたいな時期もありましたから。単純にウケて優勝することもあれば、最下位になることもある。いろんなことがあるんだと思いましたし、記憶に残る道もあるんだと知りましたね。
タイ 裏でマヂラブさんが「そこの席、俺らなんだけど!」って嫉妬してくれたり、さらば(青春の光)の森田さんが「平場で最下位で……ってボケれば、半年はネタにできてしがめんで」って声をかけてくれたりして。俺ら、最下位はすげえショックなことだと思ってたけど、「お前らは芸人としておいしい」って思ってくれる先輩のおかげでめっちゃ救われたし、(そういう先輩たちと)芸人としての差も感じて。あぁ、もっとちゃんと芸人しなきゃなって思わされました。
佐伯 (賞レースに)グッと入り込み過ぎてたんだよね。
タイ そうだね。その決勝以降、ライブで出番を抽選で決めるとき、1を引いて「くそっ、またトップバッターかよ」って言ったらめっちゃウケるし、2以降だと「うわっ、トップバッターじゃない!」って言ったらめっちゃウケるし、いいことづくめだったんです。それまでは視野が狭かったですね。
やさしいズのこれからの野望
──そういう中で野望みたいなものってありますか? ミニマム思考の芸人さんも多い中で、やさしいズさんがめちゃくちゃ稼ぎたい! みたいな野望を持っていたら面白いなと思ったりしていたのですが。
タイ もちろん、もっと稼ぎたいです! 僕自身、芸人を始めたきっかけはルミネtheよしもとができてすぐの高校生だった頃、夕方2時間のライブのビラをもらってライブを観たことなんですよ。ロバートさんとかインパルスさんも出てたんですけど、佐久間一行さんがめっちゃ面白くて。あの人と一緒のライブに出たい、ルミネの舞台に立ちたいっていうところから、芸人になろうと決心したんです。だから、テレビに出ていろんな人に知ってもらって、僕らきっかけで劇場に来てもらえるようになりたいんですよね。かたまり(空気階段)とかもそういう思いを持ってて、オズワルドとかも同じ思いで今、∞ホールに残ってくれているんだと思いますけど。
佐伯 あと、劇場にお客さんがいっぱい来るようになって、芸人全員の単価が1000円ずつくらい上がったらいいですよね。
タイ オブラートに包んで言ってるけど、金欲しいだけじゃねえか(笑)
──売れるためには何が必要だと思いますか?
タイ なんだと思います?……正直になることなんですかね。さっき写真を撮ってもらってるとき、(カメラマンに)「目線を合わせてください」って言われたんですけど、そう言われたら合わせたくなくなって。だから売れないのかなって思いましたけど。
佐伯 え、それすら? あまのじゃく過ぎない?
タイ (笑)。ただ思うのはコントを続けたいということ。なんでもなんでもでお金を稼ぎたいんじゃなくて、コントをやってお金を稼ぎたいですね。
佐伯 僕はなんでもいいからお金を稼ぎたいです。
タイ じゃあ、SNSとかがんばってくれよ!……でもなあ、佐伯はがんばれないからな。マネージャー含めて3人で今後のこととかいろいろ話してたとき、泣きそうな顔で「俺……がんばれないんだあ」って言われちゃったから。
佐伯 マネージャーさんと3人で喋ったことを言わないで!
タイ 「絶対、俺、がんばる!」のテンションで、がんばれないって言われたから、これはもうダメだなって思ったわ(笑)。
佐伯 ああ、がんばらないでお金欲しい~~~(笑)!
やさしいズ
佐伯元耀(1986年3月20日生まれ、富山県出身)とタイ(1985年6月26日生まれ、東京都出身)が東京NSCで出会い、2011年結成。2018年『キングオブコント』(TBS系)決勝進出。同年『マイナビ Laughter Night』(TBSラジオ)第4回チャンピオン大会優勝。YouTube『やさしいズチャンネル』配信中。11月25日〜27日単独ライブを開催。詳細は下記の通り。
<ライブ情報>
やさしいズ単独ライブ『ネネネネリネネネネ』
日程:11/25(金)~11/27(日)
会場:赤坂RED/THEATER(東京)
11/25(金) 開演19:30
11/26(土) 開演14:30/開演18:00
11/27(日) 開演12:30/開演15:30
アフタートークライブ『ノノノノルノノノノ』
日程:11/27(日) 開演18:00/開演18:30
会場:赤坂RED/THEATER(東京)
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