第37回 世界で最も美しい音色を奏でる物質、それは……

みなさん、世界で最も美しい音といわれているものが何かご存じですか?
熱帯の島の砂浜に寄せる波の音、小鳥のさえずり、ハープやバイオリンの音色。そのどれもが美しいですが「世界で最も」と言われると答えは一つ。

そう、人間の骨が折れる音
ということで我々が大好きなマンガには、「人間の骨をへし折る音を聞くのが大好きな拷問官」がたくさん出てきます! 『終戦後のスカーレット』読みましたか!? 出ますよ、人体破壊音大好きおじさんが!

太平洋戦争終戦後の日本で、生き残りの特攻兵・門出が「東京に落とされるはずだった第三の原子爆弾・スカーレット」を探し出し、武器商人の辰見と共に大金を狙う物語。
この作中に登場する、進駐軍の病院で発見! 変態筋肉拷問官、ウッズ中尉です。ウッズ中尉は、骨が折れる音が大好き拷問官の中でも「細身で糸目で敬語のドS軍服タイプ」じゃなく、俺が最も好きな「圧倒的父性と腕力で骨の音を響かせる」タイプ! 健康的な笑顔での人体破壊は紙面が華やいで最高! 骨が折れる音を娯楽化できる生物は今のところ人間だけ! 万物の霊長の誇りを持って、フィクションの暴力を楽しみましょう。

八田羊『終戦後のスカーレット(1)』(講談社)※ヤンマガWebで連載中

フィクションの暴力が良かった新作といえば『OHMYGOD』。とにかく圧倒的勢いで「真実が思っていたものと違ったからといって、今さらこの気持ちを止めることなんてできねえよ」という復讐VS復讐。
「読みやすさ(注:読みにくいというわけではない)」よりも「限界まで感情を圧縮して紙に封じ込めました」というバイオレンス度が気持ちよすぎるので大推薦です。正しい場所で爆発させることができなくなった巨大感情で狂う人間の行動、この世で最も面白いものの一つですよね。

反田背骨『OHMYGOD(1)』(集英社)※となりのヤングジャンプで連載中

ということで皆さん『運命の巻戻士』4巻が最高に面白いことになっています。読みましたか?
「何度繰り返しても大切な人が死んでしまう!」を、何度でも繰り返して救う時空警察アクションというという本作、4巻では主人公の時間巻き戻し能力に対して、敵幹部がその都度記憶を削除する攻撃を仕掛け、我々が大好きな「ループ1周前の自分が書き残したメモをヒントにしながら1ミリずつ前に進んでいく」展開が楽しめます。
どのミッションも必ず予想外の落とし穴が含めてあるので、最新話を読むたびに「これコロコロコミックでやってるのか、すげえな!」となる超オススメ作品。

木村風太『運命の巻戻士(4)』(小学館)※月刊コロコロコミックで連載中

ちなみにこれは何度も言っている話ですが、私が人体破壊を最大のエンターテイメントと感じるようになった最初の作品は『魔界ゾンべえ』(著/玉井たけし)です。コロコロコミックの名前を出したので思い出しました。
皆さんにはありますか? 「これさえあれば他には何も要らん」というマンガの要素が。

げきが・うるふ●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。6/29(木)発売のTVBros.(紙の方)で、先日お亡くなりになった崇山祟先生の追悼コラムを書いています。フォーエバーな気持ちでしたためましたので読んでね。

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