第31回 劇画狼が選ぶ、2022年下半期に1巻か短編集が発売されたオススメマンガ10選

ということで! 今年も色々ありましたが、それはそれとして様々なマンガが始まっておりますので、年末のまとめとして「2022年下半期に1巻か短編集が出たばかりのマンガ」を10作ほど紹介します! いつも通り暴力と殺戮が多めですが、世の中には「それはそういうものだから」「ああ、あの人はしょうがない」と判断されてやんわり放置されている不可思議が多く存在し、これもそういうものの一つだと思ってください!

上半期まとめはコチラ↓↓


中村すすむ『私の胎の中の化け物(3)』(講談社)※最新3巻発売中。コミックDAYSほかで連載中

「わー! 人間の悪意がキラキラしてる!!」と、心の底から思える素晴らしいマンガ。2巻に載ってるピアノの先生みたいな話を死ぬまで摂取したくて生きているといっても過言ではなく、誇張抜きで全行動全発言に「いいぞもっとやれ」と声を掛けたくなる。

TETSUO『髑髏は闇夜に動き出す フォースシーズン』(少年画報社)※1巻完結

大好きな一巻完結の復讐シリーズの最新刊。「復讐は何も生まない」には絶対に着地させない気合いを感じる最高のラスト。何も生まないじゃないんだよ。復讐は、復讐心を満たすためにあるんだから。

原作/古町 作画/きむてみょん『ヒソカニアサレ(2)』(小学館)※最新2巻発売中。裏サンデーで連載中

漁師×ヤクザ×国家権力の密漁バトル! と単純にワクワクして読み進めていたら、「搾取の連鎖から(自分だけは)抜け出すために、他の誰を踏みつけるか」という、単純な正義と悪の話ではなくなってきているのでまだまだ先が読めない。「限界まで追い詰められた人間が、それでも捨てられない最後のプライドで事態を最悪化させる」という、個人的に好きすぎる話が無限接種できそうで大期待です。

𠮷沢潤一『アタックシンドローム類(1)』(小学館)※最新1巻発売中。ビッグコミックスペリオールで連載中

秘めた「破壊衝動」をいかに最高に描くかに特化した最高のマンガ。
VR拷問、音波兵器特盛り。「自分が人を殴っている音を拳に付けたレコーダーで録音」する見た目、子供の頃にずっと欲しかったファミコンのパワーグローブみたいな夢がある。間違っているかもしれないけど夢に間違いはない。

ピエール手塚 『ゴクシンカ(1)』(KADOKAWA)※最新1巻発売中。月刊コミックビームで連載中

自分とは全く違う「理」で生きている者が当たり前に繰り出してくる開き直り・自己正当化・よく考えたら間違っているんだけど声がデカいからその場では正しいことになる暴言。いつだって被害をもろ被りするのは「会話が成り立っていることにしないといけない」受け手側。そういう、皆が日々感じている「心臓の毛のポテンシャル」についての劣等感の解像度が異常。同作家の『ひとでなしのエチカ』も同じくヒリヒリした「異なる理の応酬」の密度がすごいのでオススメ。

堀北カモメ『ゲモノが通す(2)』(リイド社※最新2巻発売中。トーチwebで連載中

補修職人×鳶職人の異能バトル! という言葉では説明できない圧倒的な熱量。なりたいものを目指すのに年齢なんか関係ないこと、教えられたことを自分の言葉に変えて人に伝えること、「こんなもんでええか」で済ませた仕事は「こんなもんか」と思われること、過去に何があっても今目の前で苦しんでいたら助けること。大人が「今からでもこう生きよう」という真っ直ぐさの結晶体。すごい。

さいとう・たかを『ゴルゴ13スピンオフシリーズ 銃器職人デイブ(1)』(小学館)

仕事観の話だったらこれもオススメ。実力を発揮すべき人のために準備する裏方、そういう仕事人が無茶振りをされながらも完璧な仕事をする際に出る愚痴は最高。

岡田索雲『ようきなやつら』(双葉社)※1巻完結

妖怪の話として作られているけど、すべて人間の「何も違わないはずなのに」を描いた短編集。収録作の「忍耐サトリくん」は、何十回繰り返し読んでも「面白さが擦り減らない」奇跡の読み切り。序盤に笑える話を繋げて読み手がノってきた最後に「追燈」みたいな凍る話を載せてくるの、凄まじい。

酢豚ゆうき『月出づる街の人々(1)』(双葉社※最新1巻発売中。月刊アクションで連載中

妖怪の話だとこちらもよかった。メデューサの頭の蛇にも寿命があって、それを看取る気持ちとか、フランケンが縫い糸でお洒落感を出す概念とか、自分には関係ないと思っているところに他人の人生の「ちょっとしたこと」がたくさんあるというのが分かる。

漫画/山本おさむ 原作/宮部喜光『父を焼く』(小学館)※1巻完結

決して好きではなかった、いい人間とは思えなかった父が孤独死。そういうときに「死んだからといって、これまでの全てを許して感謝できるのか」という気持ちは多かれ少なかれ誰にでもある。許したことにしてしまった気持ちを引きずって苦しんでいる人もいるのだろうなと思う。そういう一冊。

川島のりかず『フランケンシュタインの男』(マガジンハウス)※86年にひばり書房から出版された同名のコミックスの復刻

伝説のホラーが奇跡の復刊。マンガファンなら皆タイトルは知ってるけど現実的な価格での入手が難しい、そういう作品は「一部の好事家だけを楽しませればいい」以外のところにもっと広くあるので、経緯や明確な意図が伝わる本作りは応援していきたいし、そもそも俺も久しぶりにやらなくてはいけない。やります。

モンキー・チョップ『ジャンゴ 麻雀をする者』(竹書房)※1巻完結

モンキー・チョップ最新作は、信頼と実績のしょうもなさなので、未読の方は大晦日に読んでこれで年越ししてください。

以上の12作品が「今年下半期に1巻か短編集が発売されたオススメマンガ10選」です。

その他、『令和のダラさん』(ともつか治臣)のブラをつけてグッグッとやっているところが可愛すぎるのと、『マンホール戦記アオイ』(原案/古賀葵 漫画/北嶋一喜)の「全国のご当地マンホールの図柄=メダルに封印された守護獣」という設定はシンプルに楽しかった。『巨匠』(漫画/ 高橋一仁 原案協力/Gたかし)も今後の展開が闇深そうで期待。ヘルハウンド』(皆川亮二)もかっこよかった。

この記事を書いている時点ではまだ単行本が発売されていませんが、『ミチオ』(大山満千)『平和の国の島崎へ』(原作/濱田轟天 漫画/瀬下猛)も間違いがないのでオススメします。

興味があるものを手に取ってもらい、年末年始に楽しんでください。
暴力マンガをたくさん読んで、よいお年を!

げきが・うるふ●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。宝島社の『このマンガがすごい!2023』にもランキング載せています。

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