第26回 劇画狼が選ぶ、2022年上半期に1巻か短編集が発売されたオススメマンガ10選

上半期も色々なマンガが始まったり終わったりしましたので! 今回は「2022年上半期に1巻か短編集が出たばかりのオススメマンガ」を10作ほど紹介します。ランキングではありません。マンガは全て同率一位です。
気になったものを手に取ってもらい、好きなマンガの最新話と同時に一喜一憂する生活にお役立てください。


佐藤啓『悪党収集員 -西園寺の流儀-』(日本文芸社)

温厚なゴミ収集員が急に怒って悪人を生ゴミにする! 罪なき者をゴミ扱いする奴らの因果! 我々暴力ファンの脳には、そういったものを読むことでしか活性化しない脳の部位がある! カバーアートが最高で、「半透明ゴミ袋は中身が分かりやすいので導入成功!」ということも分かる。


成瀬乙彦 『桃太郎殺し太郎(1)』(KADOKAWA)※COMIC Huで連載中

「そうそう、ここにこういうの出てほしかったんだよね」なキャラデザイン。最終的に死ぬことが分かってるキャラ・死ぬためだけに出てきたキャラが超絶自分好みだった時ってなんでこんなに興奮するんでしょうね!


画/羽生生純 作/本兌有+杉ライカ『アラタの獣(2)』(KADOKAWA)※月刊コミックビームで連載中

羽生生純×ダイハードテイルズという無茶苦茶トガったコラボで描かれる異能ヤクザバトル! 登場キャラ全員どこでスイッチが入ってどこで暴れだすのか予測不可能なマンガは最高!  異形化ヤクザ・荼毘泥(ダビデ)の戦闘哲学が特に良くて、全セリフ名言レベルなので必読。


服部未定 『スマイリー(1)』(日本文芸社)※週刊漫画ゴラクで連載中

カルト宗教問題を扱った作品を「今どう面白がるか?」は読んだ人間が決めればいいと思うけど、このマンガは「仲間と笑っていれば幸せは後からついてくる」みたいな、そういう価値観に不快感を覚える人全員に向けて描かれている。人間の悪意はいつも笑いながらやってくる的なやつで、簡単に言う暴力と殺戮がすごい。


小骨トモ『神様お願い』(双葉社)

同じく、笑顔が完全にアカン奴こと「スモウちゃんにさようなら」登場の小林先生が最高の一冊。収録作のどれを読んでも「イマイチよく分からなかった」人がいたとしたら、それは本当にうらやましい人生だし、「そういうとこやぞ」とも思う。


たかたけし『住みにごり(1)』(小学館)※ビッグコミックスペリオールで連載中

読んでいていい気持ちになることがほとんどないし、あった場合は次に最悪展開があることが分かりきっているため、物質として「澱」すぎる逸品。キャラの外見を「ギャグともとれる」バランスで偽装して1巻ではどんどん風船が膨らんでいってるので、2巻以降で誰がどう破裂するのか、今後の「住みにごり最悪あるある」が早く言いたくなってくる。


もぐこん 『推しの肌が荒れた 〜もぐこん作品集〜』(新潮社)

悲劇として消費できるほどでもない、ギリギリの貧困やうしろめたさのバランスがすごい短編集。「あつい皮膚」のオチ、急にどうした。最高やないか!!


黄島点心『黄色い耳(((胎教)))』(リイド社)

異常発想を全繋ぎで、本当に脳のどの部分を使ってこれを思い付いているのかが一切不明。作中のセリフを引用すると、<君たちが現実と思っているこの世界そのものが……『胎教』であると同時に……我々耳キノコの『胎児の見る夢』であるとしたら……どうする!?>って言われても、本当にどうすればいいのか。改めて、現在進行形で読める奇想ホラーの最高傑作。黄島点心の描くギャルとその絆は世界一かわいい!


モクモクれん 『光が死んだ夏(1)』(KADOKAWA)※ヤングエースUPで連載中

ホラーだったらこれもよかった。みんな大好きな「中身だけ変わるやつ」。
ゼロからじゃないけど実質ゼロからの「だったもの」との会話。今度の不安のばら撒き方もすごく上手くて最高。


中村朝『星をつくる兵器と満天の星 ~中村朝 連作集~』(マッグガーデン)

絶望を与えるためにちょっと希望を与えるタイプの悪意大好き! 一方的な都合で生み出された偽の生命大好き! いつも言ってる「悪いものを悪いと分かって楽しめる」という豊かさという意味で、「ハラを決めて出した」がしっかり分かるSF連作集。序盤にいいジャブ打っといて最後に表題作でバチーンとハマる構成、大好きなやつです。


木村風太『運命の巻戻士(1)』(小学館)※月刊コロコロコミックで連載中

SFといえば、これがすごくよかった。「何度人生を繰り返しても大切な人が死んでしまう!」というあの設定を、何度でも繰り返して救う時空警察の物語。 小学生でもわかるように描かれているものを、大人が読んでも面白い。こういうのがコロコロコミックで読める、いい時代です。


作/都伊カオル 画/富田童子『戸村助教授のアソビ(1)』(日本文芸社)※週刊漫画ゴラクで連載中

遊戯史学の専門家が警察と協力して「遊び/ゲームの歴史」という観点から事件を暴くという設定がもう「好き」だし、主人公がスーパーエキセントリックな性格でプライドも激高い「絶対に身の周りにいてほしくない」キャラだけど、見た目が麗しすぎて「それもカワイイ」で脳が処理してくれるの最高。

その他、とよ田みのる『これ描いて死ね』山口貴由『劇光仮面』については、先月のコラムで書いているのでご一読ください。

『これ描いて死ね』は、一刻も早くNHKでアニメ化するべきだし、『劇光仮面』はまだまだ分からなすぎるが、覚悟のススメから続く「人の思いを纏うこと」に対しての、山口先生の最新の答えが知れるのではないかと思っている。

以上の14作が、劇画狼が選ぶ、2022年上半期に1巻か短編集が発売されたオススメマンガ10選となります。
今年下半期、これらの作品がもっと盛り上がると嬉しいですね。
フィクションにおける暴力と殺戮を手放しでゲラゲラ笑うことができる現実を臨んでいます。

げきが・うるふ●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。買ったマンガは、おおかみ書房インスタグラムをご確認ください。

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