“チンピラ”だった当時の自分に刺さった『グッドフェローズ』平尾隆之 第3回【連載 アニメ人、オレの映画3本】

『映画大好きポンポさん』の監督・平尾隆之さんの「オレの映画3本」の最終回。1本目は、小学校時代の自分を救ってくれた『ヤングガン』。2本目は、ホラー映画の可能性を拡げてくれた『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』。そして3本目は、あのマーティン・スコセッシのマフィア映画『グッドフェローズ』! キーワードは“チンピラ”にあるらしい……。平尾さんの“師匠”今敏さんとの思い出も交えながら、語っていただきました。

取材・文/渡辺麻紀

『ヤングガン』平尾隆之第1回
前回『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』平尾隆之第2回

『パルプ・フィクション』足立慎吾 第3回
『ジョジョ・ラビット』梅津泰臣 第3回

<プロフィール>
平尾隆之(ひらお・たかゆき)●1979年香川県生まれ。アニメーション演出・監督・小説家。アニメーション制作会社を経て、『劇場版 空の境界 第五章 矛盾螺旋』(2008年)で監督デビュー。また、最新監督作『映画大好きポンポさん』(2021年)が公開中。手掛けた主な作品にテレビアニメ『GOD EATER』(2015~2016年)、映画『桜の温度』(2011年)、映画『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』(2013年)などがある。

「お前がやろうとしているのはチンピラだ」

――平尾さんが3本目に選ばれたのはスコセッシの『グッドフェローズ』(1990年)です。彼が得意とするマフィアものですね。

マフィアものは結構好きで観ているんですが、そのなかのベストが『グッドフェローズ』です。マフィアものは、中間あたりまでがのし上がっていく話で、そのあとから転落していく話になる。これがマフィアものの構造なんだけど、『グッドフェローズ』はちょっと違う。のし上がっていって、最後は仲間をFBIに売って、自分と家族だけは第二の人生を歩む。普通の暮らしを手に入れるんですよ。この選択が悲しいんですが、これこそが人生の縮図なのではないかと、僕は思ったんです。

――実話の映画化なので、そういうリアリティがあったのかもしれませんね。

そのリアルを体現するレイ・リオッタがよかった。子供の頃からマフィアに憧れ、十代で組織に入って、金と権力を手に入れる。彼の人生にも、僕のテーマであるマイノリティに対するひとつの考察がある。つまり、マイノリティは、普通に生きていたら何者にもなれない。リオッタのお父さんがそういう人生を歩んでいるから、おそらく彼は、それがいやでマフィアに憧れたんだと思います。

一度は、その夢が実現し、もっと高みを望めたかもしれないけど、結局は落ちて行く。『ヤングガン』(1988年)はマイノリティのビリー・ザ・キッドが、最後の瞬間で一矢報いるところが好きだったんですが、このリオッタはそれが出来なかったことで、僕には意味があった。こういうかっこ悪さが人生の縮図なんだと思うんですよ。

――同じマフィアものでも、(フランシス・フォード・)コッポラの場合は『ゴッドファーザー』シリーズ(1972~1990年)のような壮大なサーガになるけれど、スコセッシは対照的にチンピラが好きですよね。

あ、きっとソコです。「チンピラ」ですよ、僕がコッポラよりスコセッシのほうを好きな理由は。

僕、若い頃、「チンピラ」と呼ばれていたんです。駆け出しのころ、マッドハウスに籍を置いていて、今敏さんの下についていたんですが、その今さんにいつも「チンピラ」と呼ばれていた。「お前はチンピラだ。ホンモノじゃない」とか「才能がない」とか、ホント、いろいろ言われてた(笑)。

――どういう意味で「チンピラ」だったんですか?

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