最大の期待と最大の責任を背負って挑むラストチャンス【藤田菜七子 2023年9月号 連載】

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日本全国で記録的な暑さが続いていますが、私が7月29日から参戦している新潟も、連日ものすごい暑さです。

35度を超える猛暑日はもはや普通となりつつあり、ときには人間の体温を超え、40度に迫る日もあって……。人間はもちろんですが、馬にとっても、命の危険に関わるような厳しい日々が続いています。

JRAでは、10年前から馬の熱中症対策に取り組み、装鞍所の屋根にスプリンクラー、パドックに向かう屋根に噴霧ミストを導入。その後も、検量室にシャワーを設置したり、パドックの周回時間を短縮したり、装鞍所への集合時間を遅らせたり、馬房にクーラーを設置したり……と、さまざまな工夫を積み重ねてきていますが、今年の暑さは、その努力を超えるほどの危険な暑さです。

いつだって一生懸命に走ってくれる馬のために、なんとかしてほしいし、なんとかならないかな!? と思うのですが、こればかりはもうどうしようもなくて。「暑いけど、頑張ろうね」と、話しかけるのが精一杯という感じです。

こんな暑い新潟で、8月9日、私は26回目の誕生を迎えました。

「うわーっ、誕生日だぁ! 嬉しいな!!」

という気持ちは、年々薄れてきていますが(笑)、たくさんの方から「おめでとう!」と声をかけていただいたり、プレゼントをいただいたりというのは、やっぱり嬉しいものです。

20歳の誕生日に中学の剣道部の仲間からもらったお手製のアルバムは、いまも大事に部屋に飾っていますが、今年は仲のいい女性の厩務員さんからプレゼントと一緒に、『あなたのここが好き』というメールをいただきました。

メールに書いてあった言葉を紹介するのは恥ずかしいのですが(苦笑)、『私のここが好きだよ』というのを、いっぱい書いてくださっていて。それがものすごく嬉しくて、何度も読み返してしまいました(笑)。

言葉をかけてくださったみなさんに、応援してくださるみなさんに、勝利で恩返しを――。

強い気持ちで臨んだ26歳になって初めての競馬、8月12日、13日の競馬は、手応えを感じることのできた2日間になりました。

中でも、5歳の女の仔、ディアナグランと共に挑んだ12日のメインレース、千直(芝の直線1000m)稲妻ステークスは、メンバー構成を考え、いつもより一列後ろで競馬をしたことがよかったのだと思います。

最後は、私とディアナグランが抜け出した道を、すぐ後ろからそのままなぞるように通って来た津村明秀騎手とマイヨアポアのコンビに出し抜かれ、レース後に津村騎手から、「ありがとう!」と言われてしまいましたが(苦笑)、このクラスでも十分にやっていけるという手応えを感じることのできるレースでした。

もうひとつ。自厩舎、根本厩舎のアイファーバトルをバディに挑んだ翌13日、芝1400mの2歳未勝利戦も、反省点はあるものの、今後に期待が持てる内容でした。

スタートの出遅れ癖は、ずっとゲート練習を繰り返したことでわずかに解消。もう少しだけでいいので、器用さを身に付けてくれれば、未勝利クラスは確実に卒業できそうです。

暑さに苦しめられた新潟開催も、9月3日で終了。翌週の9日からは、中山、10月7日からは東京開催と、本格的な秋競馬が始まります。

でもその前に、3歳未勝利馬にとっては、9月3日がラストチャンスとなる生き残りを賭けたレースが待ち受けています。

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