花粉症で大変なのはジョッキーだけじゃない!?【藤田菜七子 2023年3月号 連載】

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競馬場にも春がやって来ました。
三寒四温――陽がのぼりきらない早朝、寒さに手を擦り合わせる日もありますが、ゆったりとパドックを周回した春は、ダウンジャケットを脱ぎ、本馬場入場から返し馬。順調にゲート入りを終え、スターターの合図で、各馬一斉にスタート――という感じです。
夏は暑すぎて苦手だし、冬は寒さが厳しすぎて…。私は秋が大好きな季節です。
ただ…春は、別れの季節でもあるので……。
こう見えて(?)、哀しい映画やドラマを見ると泣いてしまうこともあって。卒業式を思い出しただけで、鼻の奥がツンとしてきちゃうくらい涙もろい私にとって、春はつらい季節でもあります(苦笑)。

でも、春は出会いの季節でもあります。
競馬学校では、赤白の染め分けヘルメットを被っていた学生が、黄色のヘルメットを被って、ジョッキーの仲間入り。去年まで、黄色を被って調教に乗っていた新人騎手は、晴れて先輩たちと同じ青のヘルメットへと変わりました。
私がデビューしたのもつい最近のことのような気もしますが、気がつくともう7年…。今年デビューした、初々しさの塊のような後輩から見ると、まだギリギリ、おねえさん? それとももう、おばさん? というビミョーなラインに立っている感じです(苦笑)。

勝つことが自分の存在証明になる厳しい世界ですから、3月にデビューした新人ジョッキーのみんなは、この先、思い悩むこと、凹むこと、悔し涙を流すこと…そういったことがたくさんあると思います。
今の私が、まさしくそうだし、そこから逃げる方法はありません。解決策はただひとつ…勝つことです。
挫けず、諦めず、粘り強く――。
共に、頑張りましょう。

そして、春といえば、もうひとつ。
この時期、ゴーグルをつけてレースに臨むジョッキーが増えることにお気づきですか。
ジョッキーがレースで着用するゴーグルは、飛んでくる砂や土から目を守るためのもので、中団や後方の位置から競馬を進めるときには必須アイテム。どろんこ馬場のレースでは、前を走る馬が蹴り上げる砂や土の塊で汚れる頻度が一気に高まりますから、何枚も重ねて装着し、汚れたらすぐに外して…というのを繰り返します。
ということは、逃げ馬に騎乗するときは必要ない……はずなのですが、逃げ馬や先行するのが得意な馬に騎乗するジョッキーも、ゴーグルを着用する人が目に見えて多くなります。
なぜか? 理由はひとつ。この季節、日本の人口の半分近くの人が悩まされている、花粉症です。
幸い、私はまだ発症していないので、それがどれほど大変なことか、いまひとつ理解できていませんが、みなさんすごく…いや、ものすごく大変そうです。
コロナ禍になる以前から、ジョッキーは1レース終えるたびに、うがいをして、顔を洗って…時には、鼻をかんで、というのがルーティンのようになっていますが、鼻をかむ回数が圧倒的に増え、顔を洗うというよりも、ムズムズする目をこすっているという感じで。
しかも、本当かどうかは分かりませんが、この季節、くしゃみをしたり、目から涙が出たりと、花粉症のような症状を見せる馬が増える…という話を聞いたことがあります。

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