猫のつまらない話 第18回【12月号 能町みね子 連載】

文&題字イラスト/能町みね子 写真/サムソン高橋

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『猫のつまらない話』

ウチの猫について書くことがもう何もない。

いろんなことが起こっているといえば起こっているし、起こっているほどでないといえば起こっているほどでない。そして、何があっても毎日本当にかわいい。何をしていてもかわいい。

「かわいい」くらいしか書くことないんだよね。

だからこうしてネタに困っているわけです。

猫を飼っていない人に教えておいたほうがいいかなと思うことを挙げるなら、猫は、しゃべりますね。

小町を飼って、どんどん猫のことが分かってきました。やっぱり経験がいちばんだね。私は猫を何も知らなかったね。
猫は言葉をしゃべっています。これはまちがいありません。単に私が猫語を理解できないだけだ、という結論です。異文化コミュニケーションは慣れの部分も大きいので、そのうちこちらが猫語を話せるようになるか、向こうが日本語を話せるようになって意思疎通ができるだろうと私は楽観視しています。たぶん世の猫飼いはみんなそう思っていますね。

私の猫は二語文を喋りますよ。乳児よりはしゃべれます。

ほかの家の子はあれでしょ、せいぜい「にゃ~」「あ~お」くらいのもんでしょ。

ウチの子はね、

「ニャ、ニョ。」

って言うんですよ。私のことをじーっと見つめてね、「ニャ」と言ったあとに半拍空けて「ニョ」って言うんですよ。「ニャ、ニョ。」なんですよ。「、」が絶対入っているんですよ、あの口調には。

ほらウチの子って育ちがいいでしょう、お宅んとこの娘さんとは全然、出来が違うでございますのよ、もう文章をしゃべるんざますのよ。

猫を飼うと猫博愛主義になる、と、猫飼いがよく言っている。つまり、自分トコの猫もかわいいのはもちろん、ほかのところの猫もますますかわいくなる……と聞いたんだけど、それは私の場合ちょっと当てはまらないかもしれない。

世間の人は、自分トコの猫を100とすると、猫一般のかわいさが50から95へUP! って感じなんでしょうか。

私はね、自分トコの猫を100とすると、猫一般のかわいさ、50→65くらいですね。いや、アップはした。一応ね。でもちょっと我が子のかわいさが図抜けていて、なあ。

あんまりしつこく言ってると笑いにもならないので最近少しこれでも遠慮してるんだけど、ネットとかで話題になるかわいい猫なんかを見ても、もちろん一定程度かわいいとは思うんだけど、内心「いやウチの子が完全にかわいいのでは?なぜこのくらいの子が話題に?」って本気で思ってしまう。そして「これがやっぱりお腹を痛めた子ってことなのか」とか「小町は私を選んで生まれてきたのだ」とか危なっかしいスピリチュアルモードに突入しそうになってしまう。完璧な毒親に、私はなる。

こんなようなことも、すでに一回書いた気がする。う〜ん。かわいいって罪。頭がすかすかになってしまう。困った。

じゃあ、ウチの子の脱走劇についてでも語ってみるか……。

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