2023年の初勝利と福永先輩のこと【藤田菜七子 2023年1月号 連載】

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少し遅くなりましたが――。

新年あけましておめでとうございます!

令和5年、2023年、卯年のスタートです。

馬とともに生きる競馬サークルは、ゴールデンウィークも、夏休みも、クリスマスも関係なし。大晦日、12月31日の午前中は、いつもと同じジョッキーとしての仕事に励み、午後から翌日1月1日いっぱいの1日半がお正月休みになります。

こう書くと、「マジで!?」という声が聞こえてきそうですが(苦笑)、デビューして今年8年目、競馬学校時代をあわせると2桁を超えたいまとなっては、これが当たり前で。帰省ラッシュや、海外で正月を過ごすために空港が混雑しているというニュースは自分とは縁遠く、ストレートに言うと、“なんのこっちゃ”という感じです(笑)。

大晦日は、大好きなDISH//を聴きながら部屋の大掃除に取り掛かり、夕方からはひとりのんびりと過ごし、翌元日の午前中に実家へ。久しぶりに家族とのんびりと過ごすことができました。

初詣は毎年、気分次第。元日に実家の近くにある神社に出かけることもありますが、今年は仕事始めとなった1月2日、朝の調教を終えてから美浦トレセン近くの神社に行ってきました。

ジョッキーになってからは、願うことは毎年一緒です。

まず1年間、大きな怪我もなく過ごせたことに感謝し、それから今年の無事を祈り、

「今年もよろしくお願いします!」

と手を合わせてきました。

勝利祈願は自分の手で掴み取るもので。馬と厩舎スタッフのみなさんと力を合わせ、ひとつでも多くの勝ち星を挙げることができるように、今年もコツコツとトレーニングに励み、戦略を練り、どうしたら馬の力を100%引き出すことができるのか、試行錯誤しながら毎日を送っていきたいと思っています。

 

2023年の初勝利は、1月15日、小倉競馬の2レース。自厩舎、根本先生が管理する3歳馬のユカリプレリュード。北島三郎さんに数多くのGⅠ勝利をプレゼントしたキタサンブラックの血を受け継いだ女の仔です。

能力は高いものの、運動機能と心のバランスがうまく調和せず、デビューはやや遅れましたが、昨年11月6日のデビュー戦で2着。2戦目、11月9日が4着。そして今回が3戦目……厩舎スタッフの努力が実り、本当にいい状態でレースに臨むことができました。

18頭立て、芝1200mのレースで、引き当てたのは4枠8番。スタートに集中し、ポンと出た後は状況次第。これはどのレースも同じですが、レース前はあらゆることを想定し、ゲートに入った段階で一度白紙に戻し、どの位置で競馬をするか!? ポジションを決めるのは、ゲートを出てからです。

ハナを切るのはどの馬なのか。ダッシュのつかなかった馬はいるのか。内枠の馬、外枠の馬はどう動こうとしているのか。内に潜り込むのが有利なのか。外に持ち出した方がいいのか……。五感を研ぎ澄ましながら、頭をフル回転。ありとあらゆることを考えます。考え抜いて、どの位置から競馬をするかを決めていきます。

乗っているときには、この時間が結構、長いような気がするのですが、実際は2.3秒くらいでしょうか。このときは、2番手で競馬を進められたら…と思っていましたが、誰もいかないので思い切って先頭を走ろうという決断をしました。

ハナを切ったユカリプレリュードも走る気満々で、ゴールする瞬間までレースに集中し、いい走りを見せてくれました。馬に感謝、スタッフに感謝です。

彼女の次走は、2月4日、同じ小倉を舞台に行われる3歳1勝クラスのかささぎ賞です。勝ち上がってきた馬たちが揃うレースなので、簡単には行かないと思いますが、レース後はますます元気で、やる気に満ちている今の彼女ならいい勝負ができそうです。期待してみていてください。

 

事務所の先輩で、尊敬する福永祐一騎手が、調教師試験に合格。2月いっぱいでジョッキーを卒業します。最初にそのニュースを聞いたときは、「ウソだ!?」と叫び、次に「もったいない」と思いました。調教師とジョッキーの二刀流があればいいのに…とも思いました。でも、すべて、福永先輩が自分で考え、自分で判断した結果です。

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