初めてのサウジアラビア競馬【藤田菜七子 2021年2月号 連載】

藤田菜七子、サウジアラビアから無事に帰ってきました。
「えっ!? サウジ?」
 そう声を挙げた方に、簡単にご説明しますと――。
 サウジアラビアのアブドゥルアジアース競馬場(声を出して読むときに、舌を噛まないように気を付けてください)で行われた国際騎手招待競走「インターナショナルジョッキーズチャレンジ」に招待していただいたのです。海外競馬は、一昨年9月にイギリスで行われた「シャーガーカップ」以来、実に1年5カ月ぶりのことでした。
 最初に連絡をいただいたときは……どうしようか、ちょっと迷いました。悩みました。
 世界中がコロナ禍で苦しんでいるときに、サウジに行っていいのか。無事に帰国できたとしても、2週間は自主隔離です。その間、日本の競馬に乗ることはできません。藤田菜七子に乗ってほしい、乗せてあげたいと思ってくださる調教師さんや馬主さん、応援してくれるファンのみなさんをガッカリさせることにもなります。
 どうしよう?
 悩んだ末に、行くことに決めたのは、騎手を目指した頃からの夢……海外の競馬場で乗りたいという想いが強かったからです。この気持ちが揺らぐことはありませんでした。
 2月14日に競馬を終えたその足で、「サウジカップデー」に参戦する、先輩の戸崎圭太さん、同期の坂井瑠星くんと一緒に成田空港に直行。バッグの中には、鞭やブーツ、着替えのほかに、予想された斤量に合わせた重めの鞍をいくつかと、レッグウォーマーを改良した特製の黒いマスクも入れ、準備は万端です。
 ヨーロッパでは、レース中もマスク着用が義務付けられていたので、万が一のときに備えて用意していたのですが、サウジでは、ゲートに入る前まではマスク着用ということで。今回は、これが役に立ちました。備えあれば憂いなしです。
 12時間のフライトでまずは、カタールへ。そこから8時間のトランジットを経て、サウジに到着したのは、現地時間の夕方(日本との時差は6時間くらいです)で、ほぼ丸1日が経過していました。
 以前は、外国人女性もアバヤという黒いマントのようなものを着なければいけなかったそうですが、今は普段着でOK。とはいえ、肩やお腹、膝が露出した服装はNGなので、お腹が見えるような丈の短いトップスや、膝が見えるダメージジーンズはノーです。
 空港でPCR検査を受けてからホテルへ。普段なら使えるジム、スパ、プールはすべて閉鎖。食事もルームサービスのみです。でも、退屈している暇なんてありません。専用のバスで通っていた競馬場にも、ジムやプールがあります。私は筋力を落とさないように、毎日ジムに通っていました。初めて見る競馬場、初めて体験するサウジの馬場……調教に参加しながら、自分の足で馬場を踏みしめながら、胸を躍らせていました。
 さぁ、そして、4レースの合計ポイントで争われる肝心のレース結果ですが――。

 

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