- ジャパンカップ初騎乗、そして2024年に向けて【藤田菜七子 2024年1月号 連載】
- 海外遠征、そして肌で感じた凱旋門賞【藤田菜七子 2023年11月号 連載】
- 最大の期待と最大の責任を背負って挑むラストチャンス【藤田菜七子 2023年9月号 連載】
私にはじめての重賞勝利をプレゼントしてくれたコパノキッキングが、現役を卒業。乗馬として、第2の馬生を歩むことになりました。
生涯成績は、25戦10勝。このうち、私がコンビを組ませていただいたのは9度で、2勝2着2回3着1回。2つの勝ち星は、どちらも重賞競走で、最初が大井競馬場を舞台に行われた交流重賞の東京盃で、2つ目はJRAの重賞GⅢカペラステークスです。
「ゲートを出たらハナを主張していこう!」と思っていた東京盃は、ゲートが開くと同時にスタートダッシュ。道中の走りもスムーズで、最後は4馬身差の圧勝でしたが、何度も経験しているはずの大井競馬場の直線が、ものすごく長く感じて…。
はやく。はやく。どの馬よりも、はやく…ゴールに届け!
必死で叫んでいたことを思い出します。
「できたら2番手あたりで」と、レース前に思い描いていたカペラステークスは、結果、4、5番手からの競馬になってしまいました。
不安も焦りも、全く感じていませんでした。「私の馬が一番強い!」「コパノキッキングは負けない!」。ずっとそう信じて乗り続けていましたから。
ゴールした瞬間、満員のスタンドから、「おめでとう!」の声が、まるでシャワーのように降り注いできて。見上げると、力一杯手を振り、コブシを振り上げているファンの方の顔も、笑顔でいっぱいで。目を瞑ると、今でも、あのシーンが蘇ってきます。
心の底から湧き上がってくるような嬉しさと、ギリギリと歯を食いしばった悔しさ。なぜ? という疑問符と、どうして!? というイライラ…。その全てを経験させてくれたコパノキッキングには、感謝しかありません。
コパノキッキングを管理する村山先生と、オーナーのコパさんにはじめて声をかけていただいたのは、2019年、最初のGⅠレース、フェブラリーステークスのときでした。
ウソ!? まさか私が? 何かの間違いとか、もしかして、ドッキリ?
信じられないような、でも、信じたいと願っている私がそこにはいました。
コパさんからお清めの塩をかけていただき、地下馬道を通って、いざ、レースが行われる本馬場へ。
そこで見た景色は、これまで見たどんな景色とも違っていて。GⅠファンファーレを自分の耳で聴いたときには、思わず泣きそうになってしまいました。馬以上に、私の気持ちが昂っていたような気がします(笑)。
結果は5着。でも、コパノキッキングはGOサインに応えるように、最後まで全力を振り絞ってくれました。
別れは、正直、寂しいです。
でも、別れの分だけ、競馬にはまた新しい出逢いがやってきます。
今週末、6月25日土曜、阪神5R、2歳新馬戦――。
栗東留学を機に、新しい縁を紡がせていただいた平田修厩舎の期待の星、ボーマルシェのデビュー戦が待っています。
この記事の続きは有料会員限定です。有料会員登録いただけますと続きをお読みいただけます。今なら、初回登録1ヶ月無料もしくは、初回登録30日間は無料キャンペーン実施中!会員登録はコチラ