第21回 いかに最序盤で人死にを出すか、それがマンガの魅力を決める!

何度も何度も言っておりますが!
第1話でさっそく人が死ぬマンガはそれだけで国民的推薦図書! そしてその第1話の中でも、なるべく早いページで人間が死ねば死ぬほど高評価!

という理屈から言って、『絶叫』は推薦図書決定!
第2話 開始3ページ目で白骨死体。開幕即しゃれこうべは、マンガにおけるロケットスタート。
細かいことは置いといて、初っ端のダッシュが効いていればだいたいOKなのだから………ベン・ジョンソンのように、一歩目から最速を目指せ! すべての漫画家たちよ!

作/葉真中顕 画/轟ツキコ『絶叫』(少年画報社)※ヤングキングで月1連載中

ということで今月も楽しくやらせてもらっていますが、『絶叫』に関しては見事なくらいに登場キャラ全員が最悪で、最高に負が負を呼ぶ展開を圧倒的な読みやすさで調理している作品なので必読です。限界判断力崩壊で、目先の損得で転落していく人間の架空、もっと私にください。


……ということは、そういうのが欲しい人にとってのオススメ新刊は『スティグマ』2巻なんじゃないの? という話なんですが、これはすごいですよ。

井浦秀夫『スティグマ(2)』(小学館)※ビッグコミックオリジナルで連載中

登場人物の大半の思考にキレがなさ過ぎて、心の底から「大丈夫かこの人たち!?」となるというか、それぞれの事情があるのは分かるけど、それでも「ウワー! 犬が自分の尻尾を追いかけてその場でグルグル回り続けている感じの会話!」というのが圧倒的に押し寄せるので是非読んでください。

元々のポテンシャルのレベルに加えて、半端に義理とか筋とか見栄とかが大投入されるので、今後誰にも逆転の目がなさそうなのが素晴らしすぎる。ここちよい! カバーアートの主人公のキレがなさすぎる顔つきも最高。
幸せになるためにマンガ読んでるわけじゃないですからね!


……じゃあ何のためか。
それは、もちろん“嫌な気持ちになるため”!
だけどここまでやれとは言ってない!
金風呂タロウ『SUBURBAN HELL 郊外地獄』が最悪すぎて、俺が死んだときには一緒に棺桶に入れてほしい以外の言葉が出ない!

金風呂タロウ『SUBURBAN HELL 郊外地獄』(リイド社)

全編通して、ページをめくるたびに口や目の中に砂が挟まってくるような圧倒的異物感。
「あー、なんかこの本触ってたくないなー」と思ったのは久々。
人間の、人間だけが持つであろう美しい感情が一コマもなくて最高。
嫌な気持ちになっている自分、何よりも本質!


最後に、この人の新刊が出るのが久々だからまたいつも言ってることを言いますね。
黄島点心の! ホラーが!  一番や!
『黄色い耳(((胎教)))』!!

黄島点心『黄色い耳(((胎教)))』(リイド社)

ということで圧倒的奇想のホラーシリーズが久々の単行本化!
アイプチで必死に作り込んだ二重まぶたのギャルを日本一可愛く描く漫画家、黄島点心!

一体脳のどの部分を使えば、これだけの要素をクライマックスに向かって一つに収束させていけるのか想像もつかないし、唐突に「あれ? この人、このダジャレが言いたかっただけなんじゃないの?」としか思えない展開が出てくるので褒めるところしかありません。

前作『黄色い円盤』でも「脳でNO!」が炸裂しておりましたが、今作でも「耳でイヤー!」があるので、何というかもう、「もしかして、このダジャレが言いたかったためだけに、めちゃくちゃ壮大なストーリーを後から思いついてみたんですか?」という感じでしょうか。

「脳でNO!」といえば、わたくし劇画狼が一番大好きな小説家である田中啓文『忘却の船に流れは光』にも出てきましたが、全国の黄島点心ファンはぜひ忘却の船に流れは光、『蠅の王』、『銀河を駆ける呪詛』(『銀河帝国の弘法も筆の誤り』収録)あたりを読んでみてください。読み味が全く同じ!

げきが・うるふ●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。春以降に山ほど告知事項があるので、色々準備中です。チェックよろしくお願いします。
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