第24回 ケンカが強い奴の条件は、ケンカが強い事。これが一番大事。

いやー、忍者と極道9巻のガムテ絡みのエピソードも最高だったし、タコピーの原罪も完結したし、最近本当に「そう生きるしかない中で、子供たちは何を思うのか!?」に異常解像度を見せる作品が多くて楽しいですが、みなさん『クロウマン』読みましたか!?

夜光虫『クロウマン(1)』(講談社)※ヤンマガWebで連載中

決して恵まれているとは言えない環境の中で、それでも強く生きる少女・いちごが、ハードな紆余曲折の末に改造人間化し、相棒のヤスと共にカニを食べに行く物語……そう。最高のバトルマンガが始まると思わせておいて、目的がカニ。公式のストーリー紹介に「すべてを失った少女がカニを食べるまでを描く、衝撃の伝奇バトルアクション開幕」と書いてあるから間違いない。
『クロウマン』は本当に良い。本気で口ゲンカが強い関西人だけが持つ、超常的言い返しのセンス、小細工抜きの「ケンカが強い奴の条件は、ケンカが強い事」の説得力、感情がぐちゃぐちゃになったときに本当にぐちゃぐちゃになる表情、『カイジ』(著/福本伸行)とドラゴンボール(著/鳥山明)が好きなことを伝えたそう過ぎること、全て素晴らしい上にカニの夢も叶うので是非ご一読を。

さて、家庭環境に問題がある人々の物語といえば『住みにごり』

たかたけし『住みにごり(1)』(小学館)※ビッグコミックスペリオールで連載中

少々コミカルな兄の行動にビビりつつ笑いつつ、深いところに切り込んでいく話かと思っていたら、家族の問題が予想をはるかに超えて真っ黒で、このタイトルは最早「人が腐る環境そのものを表す妖怪の名前」レベルの大正解。女性キャラが全部可愛くて感情移入してしまいそうになるのも問題で、ここから気持ちがいい話が紡がれていく予感が全くしないのに、重苦しくなりすぎないバランスがしっかり取れてて読み味そのものは「面白い」のが素晴らしい。
全然関係ないけど、小学生の頃、友達のお父さんが近所の団地に空き巣に入ってるところを目撃してしまい、目が合った瞬間に「見るな」と言われたのメチャクチャ怖かったな。本当に全然関係ない話なんですがたまに思い出します。

あと、注目の新刊といえば、『戸村助教授のアソビ』

作/都伊カオル 画/富田童子『戸村助教授のアソビ(1)』(日本文芸社)※週刊漫画ゴラクで連載中

「遊戯史学」という、子供の遊びやゲーム、ギャンブルの歴史の専門家である戸村助教授が、その知識を警察に買われ、現場にある「遊戯的ヒント」から真実に迫るというミステリーなんですが、主人公が異常なプライドと短気さとクソガキ加減を高レベルで併せ持ち、外見も呪みちる作品に出てくるような「いい線」の超エキセントリック美麗男子なので、好きになる悪さです。

『ゴリラーマン40』に関してはもう褒めるところしかなくて、辛い境遇で生き抜いている子供でもないし、家庭環境に問題もないし、美麗男子でもないんだけど、もう問答無用で「ケンカが強い奴の条件は、ゴリラーマンであること」ということが貫かれていて、マンガとして欠点がない。読みたいゴリラーマンの続編が期待通りに描かれているので、必ず気持ちいい話が紡がれていくだろう。
単行本の表紙にゴリラーマンの顔がでっかく描かれていて面白いです!

ハロルド作石『ゴリラーマン40(1)』(講談社)※週刊ヤングマガジンで連載中

げきが・うるふ●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。6/18(土)~画廊モモモグラで榎本俊二『斬り介とジョニー四百九十九人斬り』展やります。
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