第15回 みんな大好き、マンガに出てくる「不幸になるべくしてなる奴の不幸」!

不幸になるべくしてなる奴の不幸大好き!
何の計算もしてない奴が楽観的にものごとを進めた結果の「こんなはずじゃなかったのに!」っていう顔大好き! 無計画ゆえの末路大好き!
場当たり的な対応しかできないことを脳内で自己正当化するメカニズム大好き!
経験則以外の分析ができない奴大好き!
人事を尽くしてないのに天命を待つ奴のキラキラした祈り大好き!
良いことを何もしてない奴がひどい目にあったときに「私何も悪いことしてないのに!」って言う瞬間大好き!
「息を止めて全力疾走する」しか頑張り方を知らない奴が、大きく息を吐き出して、また吸おうとした瞬間に見えていないもの大好き!
起こるべくして起こる断末魔、最高の音色!!!!

原作/でむにゃん 作画/炭酸だいすき 『FX戦士くるみちゃん(1)』(KADOKAWA)※月刊コミックフラッパーで連載中

ということで皆さん読みましたか?『FX戦士くるみちゃん』1巻!
FXを取り扱うマンガで面白く盛り上げようとする時点で、もうどう考えても登場キャラが悲惨な目にあうしかないというのは分かって読み始めたんですが、最初っから全部悪いなコレ。
普通あるじゃないですか、1巻のラストあたりで不穏な空気が流れ始めて2巻へ続く! みたいな引き。なかったですね。主人公のくるみちゃんが最初っから全部悪い。今後よくなることがあるとして、でもそれはその次の回でどん底に突き落とされるために一時的によくなってるだけだから、最終的に全部悪いなこのマンガは。
序盤からナレーションの人に見放されてるの大好き!

大橋裕之『太郎は水になりたかった(3)』(リイド社)※3巻完結

『太郎は水になりたかった』も大団円。男子中学生の「ある一定の低さの部分」への解像度の高さが異常だし、幕間に挟まれる大橋裕之先生のコラムが全世代で共有できる思い出亜空間として異常な効果を発揮していて、読み終わった時には全員「俺の同級生が描いたマンガは面白いなー」と思わされること必至。
「昔の自分はクソみたいだった」、と堂々と言える生き方をしていきたいものですね。

作/山田参助 原案/牛次郎 監修/横山プロダクション、日刊ゲンダイ『新やる気まんまん オット!どっこい』(リイド社)※日刊ゲンダイで連載中

さて、全世代で共有できる思い出といえば「古き良きあの頃は、男は全員自分の男性器と会話しながらセックスできていた」というのがありますが、やりましたね大将!
『新やる気まんまん オット!どっこい』の1巻が、こんな時代の飛び越え方をしてくると思わなかった。
描いてあることは昭和・平成のあの『やる気まんまん』そのままなのに、令和の今の基準で見ても一切「危ない」ところがない絶妙なバランス感覚のセックスバトル。やはり「早く突撃したいと意気込むオットセイを制止する主人公」というのは最高の相棒描写ですね。
第一話の導入部が藤子プロ作品かってくらいフレンドリーなのも最高。
オットセイは国民的キャラクターとして、また東京でオリンピックが開催される際には、ぜひ正式マスコットとして活躍してほしいものですね。

げきが・うるふ●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。モモモグラにて9/12(日)まで『セット・アップ!プラレス3四郎展』開催中です(https://www.momomogura.com/)。

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