第12回 もっと知りたい!漫画界の「弱り目に祟り目」!!

この連載を読んでくれている方は当然ご存じと思いますが、とにかく「さんざんな目にあっているキャラにさらに追い打ちをかけたり、一切の気遣いを見せない非情な言葉を浴びせる描写」というのがマンガの中でも一番好きなわけですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。今日はそういう話ばっかりしますね。

幼少期にコロコロコミックの『魔界ゾンべえ』(作:玉井たけし)で「度を越した人体破壊描写は最高に面白い」という刷り込みがなされた状態で、『魁!!男塾』(作:宮下あきら)の天挑五輪大武會予選2回戦で狼髏館館主の宗嶺厳が、秘技・翔穹操弾で独眼鉄の右目をつぶした挙句に「これで独眼鉄が無眼鉄になっちまったな」と、一つしか残っていない目が無くなってしまった独眼鉄を笑い者にしたシーンを読んだときに完全に自覚し、今でも「弱り目に祟り目をもっと知りたい!」というのをマンガに求めながら数年が経った後に、『四丁目の夕日』(作:山野一)で主人公の別所たけしくんのお父さんが残業続きで疲労が限界に達し、体勢を崩して輪転機に挟まってぐっちゃんぐっちゃんになって死亡した後に、実家の印刷所も廃業して転職したたけしくんに対して元同級生のヒロシが「なあ…ぐっちゃんぐっちゃんだったんだろ?」「なあ…」「ぐっちゃんぐっちゃんだったんだろ?」と迫ったシーンに大感動して「考えられる限りで最高の悪人!」と、劇画狼少年の魂が救われ今に至るわけですが、
まあそれはそれとして『ああ播磨灘』は最高でしたね。

さだやす 圭『ああ播磨灘』(講談社)※全28巻完結

『ああ播磨灘』は最初っから最後まで全部最高のマンガで、「主人公が最初から最後まで最強」「主人公が考えていることが最後まで分からない」「すべてを懸けて挑んできた相手をボコボコにした後に、最悪な言葉をかける」「すべての土俵入りシーンが30年間ずっと経年劣化せずに日本一面白い」などの要素が全28巻で一切中だるみすることなく繰り広げられるので、とにかく大関・不動王を破った播磨灘が「お不動と改名せい!」と叫んだり、同期入幕の関脇・凄ノ尾を破った後に「犬ノ尾と改名せい!」と迫るシーンだけでも読んでいただきたいと思います。
ということで「暴言を吐く力士が、相撲界の封建的な世界を実力でまかりとおっていく」話は最高ということが証明されたので、皆さん『すまひとらしむ』を読みましょう。

いおり 真 『すまひとらしむ』(白泉社)

※ヤングアニマルで連載中

こちらも新入りのクソ生意気な力士が「大相撲をぶっ壊す!」と無茶を言いながらも実力ですべてをねじ伏せたり、枯れたベテランの心に火をつけたりする物語なので、最高の匂いがします。

そして、ここまでの流れは完全に無視して、『インスタントライフ』はすごくいいですよ。

江戸川治 『インスタントライフ』(新潮社)

※くらげバンチで連載中

お湯をかければ3分間だけ死者を蘇らせる物語なんですが、とにかく主人公の助手をやっている女子高生くん(石橋乙女)の表情が無限でいい顔してますね。感動話と胸糞話が絶妙なバランスで混ぜ込まれているので作者の人は本当に性格が悪いなと思いますね。
2巻から「3分間だけ死者を蘇らせることができるゾンビ能力バトル!」みたいな展開になってくれても最高!(『ゾンビ屋れい子』の読み過ぎ)
いやー、タイトルと紹介してる新刊マンガに全く関係がなかったですね。今気付きました。といやー、播磨灘のラインスタンプ出てほしいですね!

劇画狼(げきが・うるふ)●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。画廊モモモグラにて5/19(土)から、漫画家描き下ろしイラストTシャツ展やります。

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『劇画狼の獣次元新刊漫画ガイド』

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TV Bros.編集部
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