さて、いつも人間の首が吹っ飛ぶマンガや「不穏であれば良し!」みたいなことばかりをしているコラムではありますが、本日は心を改めて「良いマンガ」をしっかり伝えていきたいと思います。
① 『僕らの色彩』が見事完結! 前作『弟の夫』で、「今まで別世界のものだと思っていたことが突然隣に現れた」者が他者との交流によって変化していく物語を描き切った上で、LGBT当事者である少年のカミングアウトの物語に至る流れが美しい&「田亀源五郎という作家が一般誌で作品を発表するときの土台固めが完璧!」という感じで本当に最高。天才軍師!(褒め方が下手)
でも本当に、スケールの大小はあれど「人に言うべきか否か」自分の持っている秘密とどう向き合って生きるのかについては全ての人間が抱えることであって、そういう意味で秘密と内面と自己肯定にベストな形でポジティブな締め方をしたこの作品は、すべての人に読んでほしいマンガだと思います。
ということで、
引き続き良いマンガの紹介文を読みたい方は②へ
不穏なマンガの紹介文を読みたい方は③と④へ
人間の首が吹っ飛ぶマンガの紹介文を読みたい方は⑤へ進んでください。
② 『とよ田みのる短編集2 イマジン』出ました!
とよ田先生が『金剛寺さんは面倒臭い』連載前にゲッサン誌に掲載した読み切り4作がようやく紙で読める! この読み切りを未読だった方ほぼ全員が「お、急にどうしたお前!」みたいな登場をした天道修羅についても完全補完されるので必読。ちなみに連載のきっかけとなった読み切り版『金剛寺さん』については、現在もリイドカフェ内の劇画狼コンテンツ・エクストリームマンガ学園で読めますので是非。
【エクストリームマンガ学園】
読み切り版『金剛寺さん』天の巻
読み切り版『金剛寺さん』地の巻
読み切り版『金剛寺さん』人の巻
小学館作品の試し読みがリイド社コンテンツで読める、マンガ業界で起きる怪奇現象はだいたい劇画狼の仕業!(かっとばせキヨハラくん内で起きる怪奇現象はだいたいクワタの仕業的な意味で)
誰でもない『リリースレッド 怪異の起こる街』(KADOKAWA)
③ 今年はちょっとホラー短編の発売少なめだなーと思っていましたが、この作品が一冊にまとまってくれたので本当によかった!
ツイッターで発表された「意味が分かって読んだら最悪(最高)」なホラー作品群が、話の間に挿入された狂言回しによって、すべての話が同じ町で同じ時期に、それでもバラバラに起こっている怪異としてうまく機能しているから、バラバラに読んだ時との印象も全く違う。線自体はとても柔らかくて女子が可愛い(ホラー最重要要素)ので、これはホラー初心者にもオススメしやすい一冊だし、「実力!」がオチの回が何回読んでも最高。
④ 不穏と言えば意志強ナツ子! 『アマゾネス・キス』の2巻が出てしまいました! 相変わらず「幸せへの道筋が全く見えていない者たち(自覚無し)」というのを圧倒的な密度で突きつけられる怪作。『仮面ライダー龍騎』の登場ライダーが全員インペラーみたいな話だと思ってもらえれば概ね間違いないと思います(例えが悪いし間違ってる)
来月、完結巻である3巻が出るので、発売を楽しく待ちすぎてください。全然褒めてるように見えないけど、この本は誰かの一生の支えになる作品だと思う。来月最終巻が出るのが分かってるんなら、このコラムで取り上げるの来月の方がよかったな。迂闊!
⑤ お待たせしました! 今月発売された「人間の首が吹っ飛ぶマンガ」枠、『抜刀』が最高なので必読! 厳密に言うと首は飛ばない(顔の上半分がよく飛ぶ)んですが、やっぱり「何を仕込み杖っぽくするのか」というのは全てのマンガ読みにとって最も興味の対象となるものであり、そのあたりきっちりおさえてある『抜刀』は、今後も新鮮な血をたらふく吸わせてくれることでしょう! 巻末の読み切りの「生原稿見てみたい! 絶対血で描いてる!」という感じが最高です! ウーラ!(小学生の時に買った妖怪図鑑に載っていた、ドラキュラが血のワインで祝杯を上げるときの独特な乾杯の音頭)
劇画狼(げきが・うるふ)●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。おとな向け児童漫画『トンデロリカ』担当してます。(https://note.com/avu_shiki)
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