第四回 完成された架空の殺人競技で、オリンピックロスを乗り切ろう!

本当だったら東京オリンピックで世界中が沸いていたはずだった8月でしたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか!
ということで我々「失ったものを何でもかんでもマンガの要素で埋めようとする勢」としては、やはりオリンピックを題材にしたマンガを読むことで心に朝顔を咲かせて己を奮い立たせていくべきなんですが、皆さん『ニューオリンピック』読みましたか!?

大橋裕之『ニューオリンピック』(カンゼン)

グラウンドに城を建ててからボールに手裏剣を一斉に投げつける新競技・忍者サッカーを東京オリンピックの新競技に採用させようと奮闘する男の物語……と思わせといて、最強の肉体を持っているので物理的なケンカを買う藤井聡太風の人、那須川天心風の人のお父さんをハイキック秒殺するキング・カズ風の人、そして動画撮影中の朝倉未来風の人をストリートで強襲する谷亮子風の人! その他諸々どこかで見たサッカー関係者とサッカー全然関係ない有名人風の人たちの謎のテンション高い戦いが繰り広げられるので必読です。 古来より、マンガの作中に出てくる「完成された架空の殺人競技」は最高にアツいというのが常識ですが、その中でも『COBRA』のラグボール、『銃夢』のモーターボール、あと『おやつ』のパワーホライズンなどは完成度が高すぎるので、どこかの編集部さん、この競技だけに焦点を当てたスピンオフ作品を開始してくれませんか?

あと殺人競技といえば半月くらい前の『忍者と極道』で、バッター同士がぶん殴って殺しあうのを堂々と「野球回!」って言ってましたけど、これはもう「ピッチャー同士がお互いに球を投げあって爆殺したほうが勝ち」というラストバトルを展開した『愛星団徒』の正統後継作品ということでいいと思います。

さて、話は一転して人間が爆死しないスポーツマンガの新刊についてですが、『三日月のドラゴン』も素晴らしかったですね。

長尾謙一郎『三日月のドラゴン』(小学館)

令和の時代に、こんなに真っ直ぐで正直で愚直な成長物語が描かれているのは本当に奇跡で、最新刊である3巻では主人公が無限の素直さで得た実力で完全に覚醒して大活躍しているので、未読の方は是非。

悪人が出る枠については『満州アヘンスクワッド』1巻も必読。

鹿子/門馬司『満州アヘンスクワッド(1)』(講談社)

命が一番軽いことを嬉々として言ってる時点で完全大信頼スタートをしたこの作品、タイトル通りにアヘンをバカスカ吸って全力のハッピー顔芸をこれでもかと見せつけてくれるし、なによりも拷問大好きな変態敬語メガネが出るのでこちらも必読です。タイトルで「暴力が含まれています!」ってのが分かるマンガは本当にいい。

同じく悪人が出つつタイトルで暴力が分かる『ヘルドッグス~地獄の犬たち~』のコミカライズもすごくよくて、

イイヅカケイタ/深町秋生『ヘルドッグス~地獄の犬たち~』(KADOKAWA)

登場する人間全員ロクな死に方しないのが分かっている潜入捜査官モノなので期待しかないし、高級料理を丼にぶちまけて食べる考え方には意外と共感します。マンガ作中の殺人新競技については、「この作品の作中新競技がヤバいから読んでくれ!」というものをお知りでしたら、どこかでこっそり教えてください。

劇画狼(げきが・うるふ)●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。9/12(土)から大阪の画廊モモモグラで田亀源五郎先生の『僕らの色彩』完結記念原画展やります。

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『劇画狼の獣次元新刊漫画ガイド』

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TV Bros.編集部
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