【2020年5月号 大根仁 連載】一読者から見たテレビブロス「中春スケッチブック」

一読者から見たテレビブロス

デジタル版に移行してから初めての回ということで、雑誌版から引き続きの方は今後もご贔屓のほどに。一方「へえ、テレビブロスっていう雑誌の名前は聞いたことあったけど、こんなカンジなんだ…っていうか、テレビそのもののニュースやトピックがほとんど無いんだけど、テレビと何の関係があるの?」という初めましての皆さま、そうなんですよ。かつてテレビが娯楽の王様と言われた時代、それはまた雑誌にとっても幸福な時代でもあったのです。

 

ネット以前、テレビ好きの人たちの主たる情報源は新聞のテレビ欄、そしてテレビ情報誌でした。隆盛を極めた1980〜1990年代には、週刊・月刊含めて20誌を越えるテレビ情報誌が巷に溢れかえっていました。そんな中、娯楽王テレビに対して、真正面から下手に出て「へへぇ〜テレビ様、どうか私どもにもその人気の分け前をくださいまし」と、テレビ様の情報をいただくほとんどのテレビ情報誌と違い、真後ろとまでは言わないまでも斜め後方から「テレビ様よ、アンタは確かに娯楽キングかもしれねえけど、よく見りゃ隙だらけなところもあるぜ」というナイフ片手のツッコミスタンスで登場したのがテレビブロスだったのです。

 

表紙で有名タレントがレモンを片手に作り笑顔をすることもなく、人気番組の特集ページが紙幅を割くこともなく、深夜番組やマニアックな番組を取り上げ、サブカル界・音楽界のクセ者たちが連載コラムを書き、テレビだっつってんのに音楽や映画の情報の方が充実、そして何よりも人気テレビ番組および人気タレントに対する“遠慮のない毒性の強い批評”(wikipediaより)などなどが、他のテレビ情報誌との大きな違いであり、特色であり、またカッコ良さでした。【サブカル情報&コラム雑誌にテレビ番組表がおまけで付いているだけ】といえば伝わるでしょうか? 僕自身、斜に構えたテレビ好きだったので創刊時から欠かさず読んでいましたが、テレビブロスの番組表ページから情報を得たことは記憶にありません。

 

さて、前置きが長くなりましたが、世紀が変わり、インターネットという若武者が娯楽王テレビ様の威光を脅かし始めると同時に、あれほどに群がっていたテレビ情報誌のほとんどが消えてなくなりました。テレビブロスもまた“遠慮のない毒性の強い批評”は、筋肉隆々の裸の王様に向かっていたからこそ、そのスタンスが一部反抗分子に支持されていたということを自覚したのか、次第に編集方針を変えていきました。

 

ブロス名物の連載コラムや音楽・映画などのカルチャー情報は“雑誌の内臓”として機能させ続けましたが、外見である表紙や特集ページをアイドルやアニメや人気ミュージシャンが飾ることが多くなり、2018年の月刊化の際には番組表を廃止し、「それってもうテレビ雑誌じゃないんじゃ…」という、もうブロスなんだかクイックジャパンなんだかよく分からない状態に。

 

以降は、長年のブロス読者として、連載コラム執筆者として、贔屓目に見ても迷走状態であり、ブロス自体が延命措置に苦しんでいることは明らかでした。ブロスが紙媒体をやめてネットに移行するという話を聞いたのは、今年の2月くらいだっただろうか? 担当編集者からは「このタイミングでやめても構いませんし、続けていただいても構いません」というファジーな勧告?通達?オファー?なんだかよくわからないメールをもらって、ちょっと悩んだんだけど、これまで本業そっちのけで数多くの連載コラムをやってきたけど、ウェブでの執筆は初めてだし、ブロスの行く末も気になるので、毒を食らわば皿まで?死に水を取る? まあ、そんな気持ちで続けてみることにしました。

 

というわけで、初めましての皆さま、よろしくお願いしますね。あ、このコラムはかつて、ブロス創刊メンバー&名物編集者&ポップカルチャーレコメンドの大家だった故・川勝正幸さんの遺志を勝手に引き継いで、テレビ・映画・音楽・ライブ・漫画・本・ラジオ・人物などなど個人的に「POP!!」と感じた案件をレコメンドすることを趣旨としております。自粛軟禁生活でネタはたっぷり溜まってますので、次回からキッチリやらせていただきます!!

 

おおね・ひとし●映像ディレクター。演出をつとめた宮本浩次「ハレルヤ」MVが公開中です。

第二回以降はこちら

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