映画ライター・SYOが出会った映画部屋を演出するアイテムとは?【映画好きによる映画のための「ベストバイ」】

映画好き3名による「映画のためのお買い物」で一番よかったものを振り返る企画「映画好きによる映画のためのベストバイ」。1人目は、多くの媒体で引っ張りだこの映画ライター・SYO。彼が買ってよかったものは?

SYO

【執筆者プロフィール】
SYO(Twitter: @SyoCinema )
●映画を主戦場とする物書き。1987年生まれ。東京学芸大学を卒業後、映画雑誌編集プロダクションや映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー、レビュー、コラム、イベント出演、推薦コメント寄稿など映画にまつわる執筆を幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「BRUTUS」「シネマカフェ」「装苑」「CREA」等に寄稿。

■映画好きによる映画のためのベストバイ特集
第一弾 ▷映画ライター・SYO
第二弾 ▷人間食べ食べカエル
第三弾 ▷大島依提亜×SYO


 

 日本の映画好きは、総じて紙が好きだ。我々が愛してやまない劇場パンフレットは日本独自の文化だし、チラシ集めは映画ファンのたしなみといっていい。ブルーレイやDVDといったソフト、あるいはムビチケなどの前売りにも、ポストカードやポスターなどが封入・付属されるパターンはなかなかに多い。

 
かつてTOHOシネマズ日比谷がオープンした際、チラシラックを置かない、という判断にザワつき、近年の洋画でポツポツ出始めているパンフレットを作らない流れに対する阿鼻叫喚ぶりを見ていても、コレクター気質がある映画好きにとって、“紙もの”への信奉は非常に強い。ペーパレス化が加速しようとも、この感覚──つまり“紙愛”は、次世代の映画ファンにも受け継がれていくのではないか。

 

もちろんそれは映画に限ったことではなく、「紙の本が好き」「雑誌が好き」「レコードのジャケットが好き」等々、カルチャーを愛する人々にとっての通念として、“紙愛”があることだろう。僕自身も、パンフレットにチラシにポストカードにフリーペーパーに……映画関連の“紙もの”はついつい集めてしまう。ライター仕事においても、パンフレットは特別な存在。寄稿させていただいた折には小躍りし、公開日に「本当に並んでいるかな」と劇場に確認しに行ってしまうほどだ。

  

                   

インターネットがいまほど普及していない90~00年代に福井県の端っこで育った自分にとって、上に挙げたような映画×紙ものは情報ツールとしても思い出としても貴重なものだった……という背景もあるのだろうが、そこから時代を経てSNS全盛期になった今も、“紙愛”はなんら揺らぐことはない。

しかし、だ。紙ものには色々とハードルもあり、まずなんといってもかさばる。ただでさえ日本の住居は狭く、スペースが潤沢にないなかでこの道を究めるのはなかなかに困難だ。しかも、ここ最近の僕自身の空間における美意識として、壁いっぱいにベタベタとチラシを貼りまくっていたデコラティブ時代ではなく、余白を楽しむようなミニマリズムの方向にシフトしてきたから始末が悪い。つまり、紙ものを集めるのは変わらず好きなのだが、飾り方においては少数精鋭にしたいという気持ちが働いているのだ。我ながら面倒くさい!

 

そしてさらに厄介なのは、飾りたい欲は変わらずあるということ。スクラップブックやクリアファイルに保存して、時々引っ張り出して眺める……という楽しみ方よりも、自分の居住空間に常にインテリアとして飾っておきたい。家での仕事中などに、ちょっと視界に入ってほしい。いい感じのカフェみたいに、壁にさりげなく、お洒落な感じで飾れたらいいだろうなぁ……。そういった身勝手な欲求が脳内をぐるぐると駆け巡りながらも、火急で解決すべき事案でもないため、放っておいたまま時間が過ぎていった。

 

そんなある日のことである。「ポストカードラック」の存在を知った。

                                  

この記事の続きは有料会員限定です。有料会員登録いただけますと続きをお読みいただけます。今なら、初回登録1ヶ月無料もしくは、初回登録30日間は無料キャンペーン実施中!会員登録はコチラ