発売中のTV Bros.10月号。『Living With…』をテーマに、同居、ルームシェア、寮など、いろいろな形の”同居”について特集! 今回は表紙巻頭特集を務めてくれた西島秀俊・内野聖陽のおふたりに、現在オンエア中のドラマ『きのう何食べた? season2』についてインタビュー。一緒に暮らすことで、絆を深めていくシロさんとケンジ。そんなふたりと共に、役として歳を重ねていくことの喜び、演じる上での工夫などを語っていただきました。
【商品情報】
「TV Bros. 2023年10月号同居生活特集号」
●定価:1,200円
●発行:東京ニュース通信社
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多くの人に癒しを届けた『きのう何食べた?』がseason2としてカムバック! 月日は流れ、シロさんもケンジもちょっと年をとりましたが、お互いへの愛は変わらないまま。2人の紡ぐ優しい時間に、誰かと暮らす尊さを学べそうです。
取材&文/横川良明 撮影/杉江拓哉(TRON)
目次
シーズン2をやりたいとずっと言ってました(西島)
――待望のシーズン2がスタートしました。
内野聖陽 やるんだろうなっていう予感は、僕らの中でもありました。西島さんもすごくやりたがっていましたもんね。
西島秀俊 シーズン2をやりたいとずっと言ってました。ただ、現実問題、なかなか難しいんじゃないかという気もしていたんです。これだけのキャストがみんな集まるというのはスケジュール的にも大変だろうし。でもそこをプロデューサーの方々が頑張ってくださって、できる限り前回と同じチームでできるように力を尽くしてくださった。こうしてシーズン2をみなさんにお届けできるのは、そうした方たちの尽力のおかげだと思っています。
内野 シーズン2が決まったと聞いたときは、ついに来たかという感じでした。若干のブランクはあったんですけどね、西島さんと目と合わせた途端、ケンジになれました(笑)。
西島 部屋のセットがいつ来ても全然変わっていないんですよね。何なら、つい昨日まで撮影してたんじゃないかと思うくらい(笑)。
内野 本当に(笑)。2人の部屋はいつ来てもまるっきり同じ。だから、セットに入ると自然と『何食べ』の空気になるというか。
西島 一瞬で戻れますね。
内野 また『何食べ』の現場の空気感がすごくいいんですよ。和やかな雰囲気の中にも、テキパキとしたいい緊張感もあって。何よりみんながこの作品の世界観を愛しているのが伝わってくる。スタッフもほとんど同じメンバーなので、気負わず入っていける環境ではあるかな。
シワもシミも取り込んでいけばいいと思うとちょっとホッとします(内野)
――物語が進み、シロさんとケンジが一緒に年齢を重ねていく姿に愛おしさを感じます。
西島 日常を描いた物語で、こんなふうに登場人物が年齢を重ねていく作品ってあまりないと思うんですね。
内野 なかなかないですよね。
西島 史朗とケンジは僕らの実年齢よりちょっと年下。僕が少し前に経験したことや、今まさに実感しているようなことを2人も直面しはじめていて。そういうところは胸に迫るものがありますね。
内野 演じる側としては、キャラクターが年をとってくれることでありがたい面もあります。僕たちも人間ですから年をとればシワもシミも増える。シロさんとケンジが年をとってくれることで、僕たちも背伸びをせず、シワもシミも全部取り込んでいけばいいんだと、ちょっとホッとするというか。
西島 わかります。『何食べ』は人が生きていく上でぶつかる壁を、日常の中で感じるささやかな幸せで乗り越えていくお話。ドラマの中でも、「あ〜、これ本当にわかるわ」と頷いてしまうような他人事とは思えない出来事が描かれていて。それを戸惑いながら乗り越えていく姿を繊細に表現できることは、役者としてやりがいを感じます。
この作品は内野さんなしには考えられない(西島)
――そんな作品を一緒に演じる相手がこの人で良かったなと思う瞬間はありますか。
内野 それはもうたくさんありますよ。年をとっていく話と言いましたが、そうは言っても西島さんなんて美しいかただから。そこにジェラシーを感じる瞬間もありますけど(笑)。連ドラというのはどうしても撮影スケジュールがハードになりがち。これはさすがに厳しすぎるだろうと思ったときに、ふと横を見ると西島さんも同じようにキツそうな顔をしていると、時の流れを共有している安心感が湧くというか。経年というものを一緒にゆったりと受け入れているような気持ちになります。
西島 僕から言えるのは、この作品は内野さんなしには考えられないってことですね。
内野 うれしいことを言うね。ずるいなあ(笑)。
西島 いや、本当ですよ。内野さんは全身全霊で役に向き合う方。劇中で史朗やケンジが話すことって、お金のこととか健康のこととか、何気ない日常の会話なんだけど、それをどれだけ役に入ってのめり込んでやれるかで芝居の空気感も変わってくる。僕はいつも内野さんに引っ張ってもらっている気持ちですし、そうした内野さんの役との向き合い方に現場の俳優もいい影響をもらっています。
内野 そう言ってもらえるとありがたいですね。
西島 やっぱり内野さんがいらっしゃると現場が熱くなりますもんね。「おはようございます」と入ってきた瞬間、温度が2度くらい上がるような。
内野 昔から暑苦しい人間だと言われております(笑)。
西島 なんだろう。内野さんがいると、想像もしていなかった何かが起きるような高揚感があるんですよね。
内野 いやいや。普段がしょぼくれているものですから、せめて現場くらいは元気でいようと気合いを入れているだけなんです。それで言ったら、西島さんは理知的で物事の処理能力が僕と段違いだなと思っていますよ。
西島 どういうことですか。
内野 僕は激情型というか感情型というか。ちょっと気になることがあると、決して口に出しては言いませんが、心の中で「なんだよそれ〜」と悪態をついちゃうタイプなんですけど。
西島 それ、時々隠しきれず表面に出てますよ(笑)。
内野 出てますか、まずいですねそれは(笑)。西島さんはそういうところが一切ない。もし現場で何かトラブルが起きても、西島さんはとても理知的。冷静に事態をまとめて物事を進めてくださるんです。その冷静沈着なところは僕には絶対ないものなので、いつも頼もしいなと思っております。
ケンジを演じたことで男らしさの鎧を脱げた(内野)
――お2人がこの作品をまたやりたいと思ったいちばんの理由は何でしょうか。
西島 僕は観てくださったみなさんの反響ですね。街を歩いていても、「『何食べ』好きです。また続編はあるんですか?」と声をかけていただけることがとても多くて。何年経っても続きを楽しみに待っていますと応援してくださる方々の熱意に背中を押されたのは大きいです。
内野 映画もすごくヒットしてね。あれだけのお客さんが映画館まで来てくださったというのは、僕としてもびっくりでした。
西島 あとはシンプルに演じていて楽しいし、やりがいがある。スタッフ含め、つくっている僕たちにとっても大切な作品。だからこそ、できる限り続けていきたいという思いは強いですね。
内野 僕はこの作品を通して今の時代の趨勢を学習させてもらっているようなところがあって。誤解を恐れずに言うと、どうしてこんなにもこの作品が愛されているのか、僕自身はよくわかっていないんです。それは決してこの作品自体の話ではなくて。みなさんが『何食べ』のどういうところに癒されたり、好きだと言ってくれるんだろうって、すごく興味がある。きっとそこには今の時代ならではの理由があって。それを知りたくて、この先も続けたいというのはありますね。
西島 本当に反響の大きい作品ですよね。よく同業者からも「『何食べ』、いつも楽しみにしています」と言われました。
内野 僕もです。あともう一つ理由があって。僕はこれまでTHE・雄みたいな役を演じさせていただくことが多かったんですね。だから、ケンジみたいな役をやるのはほぼ初めて。でも、ケンジを演じたことで僕は表現者として自由になれた気がしているんです。それまでずっと時代がつくり出した男らしさとか、男子たるものこうあるべきという鎧をまとっていた気がして、それをケンジが脱がしてくれた。僕にとってはそれがとても面白い経験で、こういう役で求められているのであれば、とことんやってみようかと思っている次第です。
悩みを抱え込まず、一緒に話せるそこに人と暮らす喜びを感じます(西島)
――シロさんとケンジを見ていると、人と暮らすのっていいなと思います。お2人は、シロさんとケンジの生活のどんなところに人と暮らす喜びを感じますか。
内野 それはもう一緒に食事をすることですね。誰かと食べるってシンプルだけど、とても大事なこと。ひとりで食べるご飯よりも、誰かのために愛情込めてつくった料理を、「これ、おいしいねぇ~」と感想を言い合いながら食べるご飯の方がおいしいし、豊かさを感じます。
西島 生きていると悩みは尽きないですが、シロさんとケンジはそれを1人で抱え込まず、一緒に話すことで気持ちを軽くしていきますよね。特にケンジって意外と大人だから、シロさんの形にならない悩みに対し、別の視点から解決の糸口を与えてくれる。そこがいいなと思います。
――一方、価値観の異なる他人同士が一緒に暮らせば衝突は避けられません。でも、シロさんとケンジはお互いを大切にしながら生活を営んでいる感じがします。2人から学ぶことはありますか。
西島 2人は、お互いに相手のことを思いやってることまでわかっている。こいつはこんな言い方しているけど、俺のことを思ってわざと言ってくれているんだなということまでちゃんと理解している。あれはもう理想の形ですね。
内野 ケンジを見ていると、時に嫉妬したり、シロさんに対して怒ったり泣いたりするけど、どこか演じているというか、あえてそうしているなと感じることがあるんですよね。そこがケンジの大人なところで。普通なら喧嘩したら3〜4日ぐらいしゃべらないとかあるじゃないですか。でも、この2人はそういうところがあんまりない。それは、嫉妬やすれ違いもケンジはどこか一種のプレイとしてやっているようで。ケンジは人間関係の浄化システムみたいなものをわかっている。そこがすごいし、学びたいところですね。
西島 たぶん史朗って本人は自分のことを冷静でいろんなことをわかっている人間だと思っているけど、周りは実はそう思ってなくて。史朗が繊細で傷つきやすいことを、ケンジも職場のみんなもわかった上で、さりげなくフォローしたり導いたりしてくれている。史朗を演じていると、本人には伝わらなくても別にいいという周りの優しさをすごく感じるし、そういうさりげない優しさが他人と暮らす上で必要なんだと思います。
西島秀俊(にしじまひでとし)●1971年生まれ、東京都出身。主な出演作にドラマ『MOZU』シリーズ、『きのう何食べた?』シリーズ、映画『シン・ウルトラマン』『グッバイ・クルエル・ワールド』など。主演した「ドライブ・マイ・カー」は第94回米国アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞した。公開待機作に『首』(11月23日公開)がある。
内野聖陽(うちのせいよう)●1968年生まれ、神奈川県出身。1993年に俳優デビュー。森田芳光監督作「(ハル)」で第20回日本アカデミー賞新人賞を受賞した。2007年にNHK大河ドラマ「風林火山」で主演を務め、ドラマ、映画、舞台など多くの作品に出演。2019年放送のドラマ「きのう何食べた?」での演技も話題となった。2020年2月公開「初恋」にも出演。公開待機作に『春画先生』(10月13日公開)がある。
Ⓒ「きのう何食べた? season2」製作委員会 Ⓒよしながふみ/講談社
『きのう何食べた? season2』毎週金曜深24時12分〜放送中
【原作】よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社「モーニング」連載中)
【出演】西島秀俊 内野聖陽
山本耕史 磯村勇斗 マキタスポーツ 田中美佐子 田山涼成 梶芽衣子
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